大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座
学費が不安でも奨学金制度充実
大学に合格したら、当然納めなければいけないのが学費です。入学金や授業料の額も大きく様変わりしています。
表5の学費の表を見てください。私立大の社会科学系(法学や経済学などを学ぶ系統)の初年度納入金の平均額は約127万円で、理工系は約166万円。両系統ともに30年前との比較では3倍以上値上がりしています。国立大の学費の上昇幅は、私立大以上です。この30年で5.6倍(14万6000円→81万7800円)に跳ね上がっているのです。そうした中、初年度納付金が平均で約744万円かかる私立大医学部は、一般家庭には負担が大きい学費の値下げをする大学が相次いでいます。
表5 2021年春の学部系統別学費の平均
学費が値上がる一方で、大学の奨学金制度が充実してきています。卒業後に返還義務がある貸与型はもちろん、親の所得とは無関係に入試の成績上位者や在学生の成績上位者に給付(返還義務がない)する奨学金制度が数多く設けられています。
給付奨学金のさきがけは神奈川大。例年12月に行われる給費生試験に合格すれば、入学金に相当する20万円に加え、文系学部は年額100万〜110万円、理工系学部は年額135万〜145万円が給付されます。さらに自宅外通学者は年額70万円の生活援助金が給付されます。
最近では奨学金の予約制度もあります。合格しないことには、奨学金制度が利用できるかどうか分からないケースがあります。入試連動型だと、かなりの好成績をとって上位に入らないと奨学金をもらえません。その点で、合格すれば利用できる予約型はハードルが低い制度です。早稲田大の「めざせ!都の西北奨学金」は、首都圏以外の受験生約1200人を対象に、学部により45万〜70万円を4年間支給するもので、入試前にこの制度で奨学金を予約し合格すると支給されるというものです。このような予約型奨学金制度は、首都圏では慶應義塾大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大などでも実施されています。西日本でも愛知大、立命館大、関西大、関西学院大など多くの大学で行われています。国立大でも東京大やお茶の水女子大で同様の制度を設けています。
大学に合格しても経済的な面から進学を諦めないよう、受験を決めたら、あるいは合格したら大学に相談してみることをお勧めします。
キャリアサポートに力を入れる就職支援
就職活動(就活)について知っていますか。高校生が大学に入学するために受験勉強をするのと同じように、大学生は就職するための就活を行います。就職は大学入試より厳しく、100社受けて1社に採用されることなど、珍しいことではありません。人気企業になれば、7万人が応募し1000人採用など当たり前のことです。倍率は70倍にもなり、大学入試の比ではありません。そのため、大学の支援が大切になってきます。大学では早い学年から、就職するには何が必要かを考えさせるキャリアサポートの授業を行っています。
現行の就活は大半が3年生の3月から始まります。それまでに企業を訪問し仕事の内容の説明を受けたり、希望する企業の卒業生を訪れ話を聞いたり、インターンシップに参加することもあります(就活のスケジュールは今後変わる可能性があります)。社会には皆さんが知っているよりはるかに多くの企業があり、業績のいい企業もたくさんあります。大半の大学は、そうした情報を提供したり、公務員や教員など、試験がある職種を目指す場合に対策講座を開講したりしています。例えば、青山学院大は就活に力を入れている大学として知られています。その成果は就職率に出ます。青山学院大は首都圏の難関8私立大(早稲田、慶應義塾、上智、明治、青山学院、立教、中央、法政)の中で、11年から21年のうち、8年で実就職率(就職者数÷〈卒業者数−大学院進学者数〉×100で算出)がトップでした。大学のサポートがこういった就職率に反映されるのです。
就職状況で人気学部も様変わり
近年、好調な大学生の就職状況が続いていましたが、ここにきてブレーキがかかっています。22年春に卒業を予定している大学生の21年12月1日時点での就職内定率は昨年同時期より0.8ポイント増の83.0%でした。2010年から毎年上昇を続けてきましたが、19年に1.7ポイント減、20年にはコロナ禍の影響もあり、さらに4.9ポイント減りました。21年はやや回復したものの、コロナ禍が続く中で経済・雇用状況が依然厳しい状態にあると見られます。これを受け、受験生たちの志望校選びも変わってくると予想されます。
大学通信では毎年、全国の2000進学校の進路指導教諭にアンケート調査を実施しています。昨年は750校から回答がありました。
表6 生徒に人気のある大学はどのような大学でしょうか?(複数回答可)
表6は、その中で「生徒に人気のある大学」について聞いた結果です。トップは「自分のしたい勉強ができる大学」で76.7%、次いで「知名度が高い大学」58.7%、「家から通える大学」57.4%、「社会的評価・イメージが良い大学」57.1%、「資格が取得できる大学」55.1%、「就職に有利な大学」53.3%の順でした。「資格が取得できる大学」と「就職に有利な大学」は前年と順位は同じですがポイントが増えており、長引くコロナ禍で就職状況への不安があると見られます。
また、「家から通える大学」が昨年4位→3位(2.0ポイント増)にアップした一方、近年人気が高まっていた「留学制度の充実・国際交流の活発な大学」が同8位→10位(9.5ポイント減)に大きくダウンしたのも、コロナ禍でますます地元志向が高まっているのに対し、留学ができないことから関心が薄れていると見られます。
表7は、生徒に人気のある学部・学科系統を聞いた結果です。1 位は3年連続で情報系(55.9%)です。近年は情報技術の発達が著しく、エンジニアやデータサイエンティストなど就職でも大きな需要が見込まれることから人気を集め、今年も高い人気となりました。それは5位に工学系(29.2%)が来ていることにも表れています。2位は看護、3位は医療技術系、4位は経済系です。昨年と比べると、就職に強い理系や看護、医療技術、薬、医といった資格系の学部が上位にいるのと対照的に、表6と同じく国際系は順位を下げています。
表7 生徒に人気がある学部・学科系統はどこでしょうか?(複数回答可)
大学入試改革後の入試対策は
21年度入試から、大学入試が大きく変わりました。センター試験に代わる共通テストはその大きな柱です。
従来の試験があまりにも知識、技能に偏り、日本の子どもたちは、他の国の子どもたちに比べて、答えが一つの問題には強いが、答えがない、あるいは複数ある問題には弱いといわれています。グローバル化やIoTなど技術の進歩が著しい中、これからは、より柔軟で多様な能力が求められていくのは間違いありません。こうした人材の養成をにらみ、「思考力・判断力・表現力」を養成する教育に変えていくため、入試改革が実施されることになったわけです。
しかし、紆余曲折の末、21年の大学入学共通テストはこれまでのセンター試験とあまり変わらないものになりました。たとえば、数学と国語では「思考力・判断力・表現力」を問うべく、マークシート方式の試験だけではなく、記述式の試験が課される予定でした。また、英語の試験では、英語の4技能(読む、聞く、書く、話す)を重視し、これまでの「読む」「聞く」だけの試験に加えて、新たに「書く」「話す」の2技能を英検やTOEFL、TEAPなど、英語の外部試験の成績を活用して判定することになっていました。しかし記述式の試験は、数十万人の答案を短期間で正確・公平に採点できる体制を作ることが困難であったため、英語外部試験は地域や経済状況による受験機会の公平が担保できないことなどから、いずれも見送られることになりました。
また一般入試、推薦入試、AO入試は「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」にそれぞれ名称が変わりました。学校推薦型選抜・総合型選抜は学力もしっかり問うものになり、逆に一般選抜は、従来の学力試験の成績だけで合否が決まっていた方式に加え、高校時代の活動歴なども合否の判断に使う多面的な選抜が行われる可能性があります。英語の外部試験や記述式の試験導入は見送られましたが、こうした能力はこれからの時代を生きるのに不可欠なものです。英語の4技能をしっかりと身につけ、国語力をアップすることはとても大事なことです。多面的評価になる大学入試に対応するには、高校時代に部活動や学校行事にも積極的に取り組むことが求められます。勉強だけしていればいい、部活動さえしておけばいい、などという考えは捨てたほうがいいでしょう。学校生活の中で、何事にも主体的に取り組むなど、新たな入試への対策をしていくことが大切です。