大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座

大学選び入門
大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座

今の大学は、お父さんやお母さんが受験した30年前とはまったく違います。時代の移り変わりと同じで、大学も“象牙の塔”と呼ばれるままではありません。大学を取り巻く環境、入試制度、人気学部、就職状況、学費など、大きく変わっています。まさに隔世の感といっていいでしょう。大学入試の現状はどうなっているのでしょうか。この講座で知識を深め、入試についてじっくり考えてみましょう。

大学・短大全入時代到来が明らかに

大学・短大全入時代が到来しました。全入時代とは、「大学・短大の入学定員≧大学・短大志願者」になることです。つまり、大学・短大入学希望者が、進学先を考慮しなければ、全員が必ずどこか国内の大学・短大に入学できることを意味しています。日本私立学校振興・共済事業団によると、21年の私立大の総入学定員49万5162人のところ、入学者数は49万4213人で、入学者が定員を949人下回りました。

しかし、全入のような状況は、現実には起こりえません。東京大、早稲田大などの人気大学や医師になるための医学部医学科に、浪人しても進学したい受験生はたくさんいるからです。

浪人生が生まれた分、定員が埋まらない大学・短大が出てくることになります。その割合が高い学校では、淘汰されることに結びつきます。

こうなった大きな理由が少子化です。表1を見てください。受験生数がもっとも多かったのは1992年です。その後、18歳人口は減少の一途をたどっています。

92年当時の受験生数は、約121.5万人で、入学者数が79.6万人。受験生の3人に1人、42万人近くが、大学・短大に入学を希望しながら入学できなかったことになります。大変な激戦入試でした。


それが2021年には、受験生数が約70.2万人で、1992年の入学者より少なくなっています。一方、入学者数は約67.3万人で、進学を希望しながら入学できなかった人はわずか2.9万人です。大学・短大に進学を希望しながら入学できなかった人は、およそ24人に1人と激減しているのです。

大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座
表1 18歳人口と受験生数の推移

以前に比べ、大学に入りやすくなっている

受験生数減もさることながら、大学数が増えていることも全入時代到来の一因です。4年制大学は1992年の523校から2021年は803校へ280校、約1.5倍に増えました。新設大学だけではありません。既設の大学でも学部新設のラッシュが続き、受け皿は広がっているのです。特に4年制大学の入学者を1992年と2021年とで比べますと、およそ54.2万人から62.7万人に15.8%増えています。逆に短大入学者は減っています。この間、18歳人口は44.4%減っていますから、4年制大学への入りやすさが浮き彫りになってきています。

このように、受験生は減り、大学入学者は増えているとなると、各大学にとって定員確保が厳しいことになります。その結果、定員割れの大学も多くなります。表2を見てください。これは日本私立学校振興・共済事業団調べのこの5年の定員割れ状況ですが、定員割れの私立大の割合は17年から21年まで39.4→36.1→33.0→31.0→46.4%と推移しています。

大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座
表2 この5年の私立大の定員充足率


定員割れ校数は景気の状況や18歳人口の増減の影響を受けて変動しています。近年は、16年から大規模大学を中心に入学募集定員を超える割合が厳しく制限されることで合格者が減っているため、その分、定員割れ校数が減ってきましたが21年は増加に転じています。

大学選びの傾向について触れておきましょう。ここ数年の傾向のひとつが、「安全志向」です。リーマン・ショック以降景気は回復していますが、それでも大学進学にかかる経費削減は大きな課題です。なるべく安上がりに大学に進学してほしいと考える保護者が多いのです。その結果が国公立大人気の高さに表れています。近年は確実に合格できる大学を目指す「安全志向」、浪人を避ける「現役志向」、自宅から大学に通う「地元志向」が高まっています。コロナ禍で景気が後退すると、この傾向はより強まると見られます。

大学の二極化進み、志望校選びが難しい時代へ

ここ数年、私立大の志願者は増加傾向でしたが、近年は大幅減。志願者が集まる大学と集まらない大学で、「大学の二極化」が進んでいます。大学はやがて、「入試を実施しても全員合格に近いため、試験を実施する意味があまりない大学」と、「厳しい入試が展開される難関大学」との二極に分かれていくということです。


このような状況になってきますと、志望校選びが難しくなります。学力を測る尺度である偏差値が、全入の大学では役に立たなくなります。4割以上の私立大で定員割れが起きているわけですから、進学しようと思えばどこかの大学に進学することが可能です。それが進みたい大学であれば、言うことないわけですが、なかなかそうはうまくいきません。難関大の入試は厳しいままだからです。


大学の選び方は大きく分けて3通りあります。ひとつは大学で学びたいことが決まっていて、それを実現できる大学を選ぶという方法です。その分野で学べば、大学卒業後の進路まで考える余裕があり、目標が早く定まります。もっともオーソドックスな大学選びの方法です。

一方、行きたい大学が決まっている場合もあります。どうしても○○大学に行きたい場合は、学力と相談しながら、その大学で自分が学びたい分野を探し、受験する学部を決めていくことになります。特に文系でよく見られる方法です。

最後は前記のどちらでもないという時の選び方です。これは様々な視点から選んでいくことになります。この場合、学力で合格できそうな大学を選びがちですが、これはあまり感心しません。

その前に自分なりに絞っていくことが必要です。多くの受験生は、高校で既に文系か理系かは選んでいるはずです。さらに、自分に向くかどうかもそれぞれの学部で何を学ぶかを知れば、わかってくるでしょう。大学選びについても、自宅を離れて進学していいかどうか、親と相談して決めれば絞ることができます。また、学部によって学費の差もあります。表5・学部系統別の平均の学費を参考にしてください。ぼんやりとでもいいから、進学したい学部、大学を決めていくことが大切です。