大学入試はこうして行われる!大学受験入門講座

大学選び入門

入試に大きな影響を与える大学入学共通テスト

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表3 センター試験および大学入学共通テスト志願者数の推移

ここからは、現行の制度における入試状況について、大学入学試験の現況から見ていきましょう。

国公立大の一般選抜は大学入学共通テスト(以下共通テスト)の結果が不可欠です。22年の共通テストには53万367人が志願しました(表3参照)。昨年の志願者数と比べて4878人(0.9%)減少しました。昨年の共通テストの平均点が高かったことから今年は平均点は下がると思われていましたが、文系・理系ともに予想以上に大きく平均点がダウンしました。これまで、センター試験では、平均点がアップすると、国公立大の志願者が増え私立大の志願者が減り、逆に平均点がダウンすると、受験生は弱気になって国公立大志願者が減り、私立大志願者が増える傾向にありました。

ただ、近年はこうした傾向が影を潜めています。国公立大の志願者は、センター試験の平均点に関係なく連続で減少してきました。19年は8年ぶりに増加に転じましたが、国立大だけの集計では減少が続いています。国公立大人気は高いのですが、難関大学を中心に後期の縮小もしくは廃止が進んでいるため、出願したくてもできない状況にあるからです。さらに、現行の教育課程で実施されていたセンター試験のハードルが高くなった影響もあります。理系の受験生は専門理科を2科目受ける必要があり、数学も学ぶ範囲が広がりました。そのため私立大に志望変更する受験生が増えているのです。

一方、私立大はセンター試験の平均点に関係なく、近年、志願者が増え続けていました。これは、国立大からの志望変更に加え、入試方式の多様化や受験料割引、ネット出願の普及などにより、出願しやすくなったためです。さらに、16年から大規模大学を中心に、入学者が募集定員を超える割合が厳しく制限されたため、合格者が減っています。志願者が増えているところに合格者が減少しているので、私立大入試は難化しました。21年入試では、この年からの大学入試改革を避けようと、20年入試で多くの受験生が大学に入学してしまったため、浪人生が大幅に減少し、私立大全体の志願者が大きく減少しました。それでも、21年からセンター利用入試から変わった共通テスト利用入試の重要度は変わりませんでした。コロナ禍でなるべく移動をしたくない受験生心理から、大半は出願するだけで合否が決まる共通テスト利用入試に注目が集まったのです。

共通テスト利用入試は一般方式よりハードルが高くなりがちです。そのため、合格校を確保するために、自分の学力で確実に受かる大学に出願するケースが数多くあります。受験回数の確保の面からも、現在の私立大学入試において、共通テストは大きな影響力を持っているのです。

多様化が進む大学入試

大学の二極化が進んできますと、どのルートで大学に入学するかも重要になってきます。その中で人気を集めているのが学校推薦型選抜と総合型選抜です。

表4を見てください。これを見ますと、一般選抜での入学者が、国立大では83.3%、公立大では71.3%と高率ですが、私立大では43.4%となっています。私立大では一般選抜より学校推薦型選抜や総合型選抜で入学する学生の方が多く、5割を超えています。それだけ、私立大では、入試における学校推薦型選抜や総合型選抜の比重がアップしているわけです。

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表4 2020年の入試種別入学者数の割合(%)

学校推薦型選抜は高等学校長の推薦を受けて出願しますが、多くの場合、出願に際して高校在学中の成績基準が設けられています。評定平均値が4.0以上というようにです。これは高校1年、2年と3年の1学期までの成績を平均した値です。これが一定のレベル以上であることが必要なのです。さらに、学業成績だけでなく、課外活動を評価する学校推薦型選抜も多くなっています。

私立大の学校推薦型選抜では、大きく分けて指定校制と公募制の二種類があります。

指定校制では、応募できる高校が大学によってあらかじめ決められています。難関大で多く実施され、面接や小論文などの試験がありますが、出願すればほとんどの場合、合格になります。ただ、各高校から応募できる人数が1人など募集枠が小さく、高校内での選考を通過できるかどうかが重要になってきます。

一方の公募制は高等学校長の推薦を受けることは同じですが、成績基準を満たしていれば、どこの高校からでも出願できるのが特徴です。一般選抜に比べて小論文、面接が中心のため科目負担が軽く、関西の大学などでは学力試験を課しますが、一般選抜より科目数が少ないところが多くなっています。また、学校推薦型選抜では合格=入学が原則ですが、関西の大学などでは、他大学との併願を認め、合格後に入学する大学を決められる一般選抜のような学校推薦型選抜も多くなっているのが特徴です。これ以外にも、スポーツの成績を重視したスポーツ推薦などもあります。

総合型選抜の前身であるAO入試は90年に慶應義塾大が始めた方式で、93年まで1校しか実施していませんでした。しかしその後に実施校が急増し、一昨年は国公私立大あわせて607校が実施しました。2001年以降増えており、まさに「21世紀型の選抜」といっていいでしょう。AOとはアドミッションズ・オフィスの略で、アメリカの大学で行われている一般的な選抜方式です。

総合型選抜は入学を希望する受験生と大学が面接などを通して、お互いに納得して入学する、させるという方式です。学校推薦型選抜での高等学校長の推薦や出願の基準である高校在学中の成績基準などは設けられていないのが普通です。ただ、高校でのクラブ活動、ボランティアなどの社会活動の取り組みなどが求められます。自己推薦をするものもあり、入試の中心は複数回実施する面接です。なかには小論文や学科試験を課す大学もあります。

面接では「高校時代、何をしてきたか」「この大学・学部を選んだ理由は」「大学に入学したら、何をしたいか」などを聞かれるのが一般的です。意欲面を問われ、自分をさらけ出す選抜になるため、自分をどうアピールできるかが合否の分かれ目になります。ただ、学校推薦型選抜や総合型選抜では科目負担が軽いため、学生の学力低下の一因との指摘があります。そのため、調査書の提出を求めたり、国公立大では共通テストの成績が必要な大学が増えています。

16年には東京大が推薦入試を、京都大が推薦・AO入試などで選抜する特色入試を、それぞれ初めて実施して大きな話題になりました。学力試験だけでは計れない、卓越した能力を持つ多様な生徒を獲得するのがねらいです。さらに17年には大阪大が後期日程を廃止して推薦・AO入試を導入して注目を集めました。また東北大では、18年から一般入試の募集人員を減らしてAO入試の募集人員の増員が行われました。私立大だけでなく国立大でも、学校推薦型選抜や総合型選抜の比重が高まってきています。

一般選抜は国公立大と私立大では大きく異なります。国立大の入試では、同じ大学で前期と後期2回入試を行うのが一般的です。多くは前期のほうが募集人員が多く、後期は少なくなっています。前期で合格し入学手続きをとると、後期を受験していても合否判定から除外されます。22年で見ますと前期は2月25日から始まり、合格発表は3月10日までに終わります。後期は3月12日から入試が始まります。前期の入学手続き締切日は3月15日です。

出願は1月24日〜2月4日までに統一されており、前期の結果を見てから後期に出願することはできません。後期は前期の敗者復活戦の入試になり、最初の出願時には大変な倍率になりますが、実際の受験者数は少なくなることが多く、学部・学科によっては競争率が1倍台のところも出てきます。最後まで諦めないで粘ることが大切です。さらに、最近では東京大をはじめ、後期を廃止する大学も増えています。そうなりますと、その大学を受験するチャンスは1回だけとなるわけです。

一方、公立大は国立大と同じ入試システムですが、前後期の他に中期を設けています。これは3月8日から始まる入試で、大学によって中期を実施する大学と実施しない大学があります。

国公立大の合否判定は共通テストの成績と、大学で行う独自の2次試験の得点の合計で行われるのが一般的です。しかも共通テストの重みが高い大学、学部のほうが多く、共通テストの出来、不出来が合否を左右する場合が多くなっています。

ただ、国立大でも難関大では大学独自の試験の重みのほうが高くなっています。東京大では共通テスト110点満点に対して2次が440点満点の計550点で合否判定します。例えば、東京大・文科Ⅰ類の21年の合格最低点は334.7778点です。900点満点の共通テストの成績を110点に圧縮するため、端数が出てくるわけです。共通テストの問題の配点が2点の場合、これを落とすか正解するかで0.2444点変わりますから、この差で不合格になる場合も出てくるわけです。

また、東京大や京都大などの難関大を中心に共通テストの成績で2段階選抜を行うケースがあります。2次試験の受験者を募集人員の5倍などに制限している大学があり、共通テストの成績だけで門前払いにされてしまうことがあります。

前述の通り、私立大は同じ大学、同じ学部でも複数回入試が行われており、何度受けてもかまいません。複数の合格校の中から、入学する大学・学部を決められます。

私立大では近年、入試の多様化が進みました。受験生を多角的に評価しようという狙いで、数多くの方式が実施されるようになってきています。例えば「地方試験」を実施する大学が多くあります。これは大学所在地と異なる地方に試験場を設け、わざわざ大学まで受験に行かなくてもいいようにするものです。

これ以外にも「試験日自由選択制」があります。これは例えば、3日間同じ学部で試験を実施し、他大学との併願のことを考え、都合のよい日に受験すればいいようにしたものです。どうしてもそこに入りたければ、3日間連続して受けてもいい大学もあります。合格発表は1回で、偏差値法を使って判定し、問題の難易で差がつかないように工夫されています。また、共通テストの成績だけで合否が決まる「共通テスト利用入試」や共通テストの成績と大学での試験の成績を合計して合否判定する「共通テスト併用方式」などもあります。

近年増えているのが、「全学部統一日程試験」です。同志社大、立教大、明治大、法政大、青山学院大など多くの大学で実施されています。これまで学部ごとに行われていた入試を、1日で全学部(文系全学部のみなどの場合もある)が入試を実施するという方式のことです。今まで難関大では受験機会が少なかったのですが、これにより受験機会が増え、人気を集めています。また、英語の外部試験を利用した入試も増えています。15年に上智大がTEAP(アカデミック英語能力判定試験)利用入試という英語の外部試験を利用した全学部型の入試を実施して志願者を増やすと、翌年以降、多くの大学が同様の入試を実施し、急速に広がっています。

多様化しているのは入試だけではありません。キャンパスの新設や移転なども積極的に行われています。

首都圏では、21年に横浜市にみなとみらいキャンパスを開設して国際日本学部・外国語学部・経営学部を移転した神奈川大が、22年は横浜キャンパスに建築学部を新設します。さらに横浜キャンパスには、23年に平塚市の湘南ひらつかキャンパスから理学部が移転し、理工系学部が集結する予定です。中央大は、これまで4年間、八王子市の多摩キャンパスだった法学部が、22年入学者は2年次から、23年以降の入学者は4年間、東京・文京区に開設する茗荷谷キャンパスで学べるようになります。

西日本でも、立命館大では3年次まで大津市のびわこくさつキャンパス、4年次が茨木市の大阪いばらきキャンパスだった情報理工学部が、22年入学生から3年次も大阪いばらきキャンパスで学べるようになります。

いずれも利便性の高い場所にキャンパスを新設したり、教育資源を集中させることで、学生の学びやすさや、学部間の連携の向上を図っています。このような学部・学科の移転、都心キャンパスの新設など、ダイナミックな大学改革は受験生の注目を集め、倍率アップの要因になりますので注意が必要です。

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