合格実績がアップした中高一貫校の人気を検証

中学・高校情報 大学通信 大野 香代子

学校独自の努力による成果

次に早稲田大と慶應義塾大の合格者が増えた学校を見てみよう。18年に「早大+慶大合格者」が一昨年より5人以上増えた、首都圏の中高一貫校は45校あった。17年は40校だったので5校増加した。10人以上増えた学校となると、17年の17校から18年は30校に増えている。

最近は私立大入試の「入学定員超過抑制政策」で、大学が合格者を絞り、人数自体が減少しているため、各校の合格実績の伸びが鈍化していた。18年の合格者数も、早稲田大は前年比1395人、慶應義塾大は同161人の減少だった。そのような状況の中で増加校が増えたのは「厳しい状況が続く中で、学校が努力を重ねた成果が出てきたようだ」と、大学入試に詳しい関係者はみている。

実績を伸ばした学校の19年の志願者数を合計すると、5人以上の学校で昨年より9・2%増、10人以上増えた学校で8・9%増だった。「東大+京大」が増えた学校より増加率が高い。「最難関の東大や京大に手が届かなくても、私大の雄である早慶に合格してほしいという保護者の気持ちが表れたのでしょう」と井上さん。

表2は早慶の17年の合格者が10人未満で、18年に5人以上増えた学校の中で、志願者が増えた学校を多い順にまとめたものだ。

[表2]17年の早大+慶大合格者が10人未満で、18年に5人以上合格者が増えた学校で、志願者が増加した私立中ベスト10[首都圏・関西圏]

順位 男女共学別 学校名 所在地 18年
早大+慶大
合格者数
前年比 19年
志願者数
前年比 偏差値
1 日本大第一 (東京) 12 (+12) 1106 (+174) 38
2 捜真女学校 (神奈川) 7 (+6) 652 (+137) 39~40
3 多摩大目黒 (東京) 15 (+7) 937 (+124) 40~45
4 日出学園 (千葉) 12 (+12) 393 (+119) 39
  金蘭千里 (大阪) 15 (+9) 1004 (+119) 45~53
6 横須賀学院 (神奈川) 12 (+7) 385 (+76)
7 自由の森学園 (埼玉) 5 (+5) 158 (+45)
8 神戸龍谷 (兵庫) 6 (+5) 330 (+31) 36~38
9 相洋 (神奈川) 5 (+5) 220 (+25)
10 京都橘 (京都) 5 (+5) 334 (+15)

表中◎は共学、●は男子、○は女子を表す。偏差値は日能研の2019年結果偏差値

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トップは日本大の付属校の日本大第一だ。18年は早稲田大に10人、慶應義塾大に2人合格し、17年のゼロから躍進した。数年前から4科(国語、算数、理科、社会)と2科(国語、算数)の入試を、日にちを分けて実施し人気を集めている。同校の鳩山高史教頭が話す。

「低学年では勉強に取り組む姿勢を育て、習熟度別に指導を行って学力を伸ばしています。キャリア教育や環境学習を実施する中で、自分の将来についてじっくり考えさせます。高2で日本大進学クラスと難関大進学クラスに分かれ、実践的なカリキュラムで難関大合格力を養っています」

2位は捜真女学校で1人から7人に増えた。安田さんが言う。

「キリスト教教育を根底に人間力を高める教育を行っています。英語は少人数授業で4技能を重視した指導を実施。3回の午後入試はいずれも志願者が増えました」

3位は多摩大目黒だ。早稲田大が4人増、慶應義塾大が3人増だった。併設の多摩大があるが、他大学進学が中心の学校だ。特待・特進入試を実施しており、学力上位生の併願も多い。

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