合格実績がアップした中高一貫校の人気を検証
6年後の大学合格実績は、中学入試の志望校選びで重要なチェックポイントだ。実績がアップすれば、保護者の注目が集まる。中高一貫校の大学合格実績は、翌年の中学入試にどのくらい影響しているのか、検証を試みた。
首都圏中学入試は受験生が増加
2019年の首都圏中学入試は、受験生数が増えて人気校に集中し厳しさが増した。大手中学受験塾の日能研によると、公立一貫校を含めた受験生数は5万9500人で昨年比2200人増、中学受験率は0.1ポイントアップして20.2%。受験生1人あたりの併願校数は4.8校から5校に増え、全体の延べ志願者数も約1万7000人増の約29万5000人だった。中学受験情報誌『進学レーダー』の井上修編集長がこう話す。
「受験生が多かったので、志願者が増えた学校が多くなりました。特に難関大付属校と大学合格実績が好調な進学校に人気が集中しています。厳しい大学入試事情を踏まえて、我が子を伸ばしてくれる学校を保護者は選んでいます」
保護者の関心が高い大学合格実績
そんな中、保護者はどのような点を重視して志望校を選んでいるのか。昨年、大学通信が首都圏の学習塾の塾長、教室長にアンケートを実施した。
「保護者は志望校を選ぶ際に何を重視しているのか?」という質問に対して、トップは85.9%で「大学合格実績(付属校含む)」。前年より5.5ポイントアップした。2位は「通学の交通の便」64.7%、3位は「偏差値」59.7%だ。
[表1]18年の東大・京大合格者がゼロから1人以上になり、志願者が増加した私立中ベスト10 [首都圏・関西圏]
順位 | 男女共学別 | 学校名 | 所在地 | 18年 東大+京大 合格者数 |
前年比 | 19年 志願者数 |
前年比 | 偏差値 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ◎ | 山手学院 | (神奈川) | 3 | (+3) | 2598 | (+607) | 48~55 |
2 | ◎ | 東京都市大等々力 | (東京) | 1 | (+1) | 3495 | (+452) | 48~57 |
3 | ● | 明治大付中野 | (東京) | 2 | (+2) | 1995 | (+343) | 54~56 |
4 | ○ | 大妻中野 | (東京) | 1 | (+1) | 1463 | (+288) | 41~49 |
5 | ○ | 国府台 女子学院 |
(千葉) | 2 | (+2) | 1228 | (+233) | 50~52 |
6 | ◎ | 西武学園文理 | (埼玉) | 2 | (+2) | 2033 | (+176) | 38~47 |
7 | ◎ | 青山学院 | (東京) | 2 | (+2) | 1094 | (+161) | 58~64 |
8 | ● | 城西大付川越 | (埼玉) | 2 | (+2) | 618 | (+84) | 38~50 |
9 | ◎ | 啓明学院 | (兵庫) | 1 | (+1) | 641 | (+81) | 41~52 |
10 | ◎ | 城西大付城西 | (東京) | 1 | (+1) | 326 | (+40) | - |
表中◎は共学、●は男子、○は女子を表す。偏差値は日能研の2019年結果偏差値
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では、保護者の関心が最も高い大学合格実績が、伸びている学校の人気はどうだったのか、19年の志願者数の増減で見てみよう。中学入試は1月から2月上旬に行われる。大学入試より前に実施されるので、同じ年の合格実績はわからない。そのため、保護者は前年春の合格実績をもとに、受験校を選ぶことになる。そこで、18年の大学合格実績を17年と比較し、難関大の実績が伸びている学校の19年志願者数を検証した。
18年に「東大+京大合格者」が17年より1人以上増えた、首都圏の中高一貫校は57校あった。それらの学校の19年志願者数を合計したところ前年比7.9%増だった。東大+京大合格者が増加したことが、志願者増につながっていることがわかる。さらにそれを絞り込み、ゼロから1人以上になって志願者が増加した学校をピックアップしたのが表1だ。
最も志願者が増えたのが山手学院だ。18年の1991人から19年は2598人になり、607人増加した。入試を4回実施しているが、すべての回で男女とも増えた。18年は東大に2人、京大に1人が合格。安田教育研究所代表の安田理さんがこう話す。
「以前から大学合格実績が好調な学校です。最初はMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、次に早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)など難関私大合格者が伸びて人気が高まりました。さらに、国公立大も伸びています。志願者増は、他校との比較で選ばれたというより、山手学院の人気アップが進んだからという印象です」
2位は東京都市大等々力で、前年比15%増の3495人。以前は女子校だったが9年前に共学部を併設し、カリキュラム改革して生徒の学力を伸ばした。その結果、大学合格実績が着実に伸びている。18年は東大に1人合格。さらに19年は東大に2人が現役合格した。
3位は明治大付中野。8割以上が明治大へ進学する大学付属校だ。ただ、明治大の付属校は明治大へ進学を決めながら、国公立大との併願が認められる。その権利を生かして難関大に挑戦する生徒も多い。新校舎が完成し、環境が整備されたのも高人気の一因だ。