伸びている学校はここだ! 2010年と2020年の大学合格者数を比較 総合第1位は東京都市大付!早稲田大でトップなど難関7大学でランクイン

東大合格者を増やす首都圏の学校 地方は医学部志向強し

では、合格実績が伸びている学校はどこか。ここに掲載した表は、10年前と今年の大学合格者数を比べ、増加人数が多かった首都圏の学校のランキングだ。

【表の見方】 表2と表3を除き、2010年と2020年の合格者数を比較し、首都圏およびその近県の学校について増加数が多い順に並べた(表2、表3は全国の学校を対象としている)。私立大は2010年の早稲田大を除き、いずれも大学発表データを使用しており、巻末一覧表の高校発表の合格者数とは異なっているので注意。国立大と2010年の早稲田大については、合格者数が未発表の大学は含まれておらず、判明分だけの順位である。各表中の◎印は私立、※印は国立、無印は公立をあらわす。

【表1】東大合格者が増えている学校上位20校

伸びている学校はここだ! 2010年と2020年の大学合格者数を比較 総合第1位は東京都市大付!早稲田大でトップなど難関7大学でランクイン


それでは表1の東大合格者が増えている学校から見ていこう。ランキング上位20校中、13校が中高6カ年一貫教育の私立校となっている。

トップは渋谷教育学園幕張だ。83年に創立され当初の進学実績はあまり目立たなかった。それが当時としては珍しいシラバス(授業計画)をはじめとする情報開示を積極的に行うなど保護者からの期待を集め、進学校としての評価を上げたことが短期間での実績アップにつながった。

2位は渋谷教育学園渋谷だ。前身の渋谷女子から96年に改組を行って共学の渋谷教育学園渋谷となり、1位の渋谷教育学園幕張と教育理念やシステムを共有することで、急激に合格実績を伸ばしている。

3位の桜蔭は東大合格者ベスト10の常連校、4位の開成は、39年連続東大合格者1位の学校だが、ともに今春は例年より合格者を増やしたことでランクインしている。

5位は横浜翠嵐だ。神奈川の公立校は、以前は低迷が続いていたが、05年の学区の撤廃や07年の学力向上進学重点校の指定、公立一貫校の設置など大きく改革が進められ、進学実績をアップさせてきている。7位の湘南、15位の南もその成果といえるだろう。同様に、東京も都立校を進学指導重点校に指定したり、公立一貫校を作るなど教育改革を進めており、11位の戸山、13位の都立武蔵、18位の大泉など、着実に成果が出てきている。

【表2】2020年全国東大合格者ランキング

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次に表2を見てほしい。今年の全国の東大合格者ランキングベスト20だ。ここでも圧倒的に私立校が強く、表の20校中16校を占めている。一貫校は国立校を含めて18校になる。なかでもトップの開成をはじめ、2位の筑波大付駒場、4位の灘、6位の麻布、7位の駒場東邦など、20校中13校が男子校だ。また女子校でも桜蔭が3位、女子学院が18位に入っており、男女別学校の大学合格実績の高さがはっきりと分かる。

表2にランクインしている学校はいずれも進学校として名高く、毎年、大学入試で高い合格実績を残している。しかし、すべての上位校が、10年前に比べて東大合格者数が目立って増加しているわけではない。なぜ合格者数が伸びていないのか。

ひとつには、価値観の多様化により、東大にこだわらず、医学部や海外大学への進学を希望する生徒が増えていることがある。なかでも上位校では医学部人気が高く、東大の理Ⅰや理Ⅱよりも他の国公立大医学部を目指す生徒が多いことも一つの要因だ。

【表3】国公立大 医学部・医学科 現役合格者ランキング(全国)

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表3は国公立大医学部・医学科現役合格者ランキングだ。表を見ると、上位20校中17校が私立一貫校で、東大ランキングと同様に私立の強さが際立っている。

トップの東海は日本で毎年、もっとも多くの医師を輩出しているといっていいほど、医学部進学者がたくさんいる。2位の久留米大付設、3位の灘は卒業生占有率(卒業生数に対する割合)がそれぞれ21.7%、19.5%と高く、医学部志向の強さがうかがえる。4位には洛南、5位には札幌南、6位には愛光と、医学部に強い常連校が並ぶ。

表3の特徴として、上位20校のうち、首都圏の学校は豊島岡女子学園、聖光学院、渋谷教育学園幕張、桜蔭、海城、日比谷の6校にとどまり、国公立大医学部が首都圏以外の学校で人気が高いことが分かる。医学部は根強い人気があるにも関わらず、首都圏の学校で合格者数が伸びない理由には様々な要因がある。まず、首都圏では地元にある医学部より東大の人気が高くなっていることだ。首都圏では国公立大医学部の定員枠が比較的小さい上、東大・理Ⅲや千葉大、東京医科歯科大など、難関大ばかり。その一方で、慶應義塾大をはじめ、日本医科大や順天堂大など、有力な私立大医学部が数多くあり、わざわざ無理して地方の国公立大医学部に進学しなくていいことも大きな理由になっている。

さて、学校を取り巻く状況も注意深く見ていけば、合格者ランキングに反映されていることがお分かりいただけただろう。ランキングの合格者数を見ているだけでは、伸びている学校は分かりにくい。

早慶への合格者が増えている高校上位20校