社会学ってどんな学問?
「人と違う自分」が強みに変わる
独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科

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社会学ってどんな学問? 「人と違う自分」が強みに変わる 独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科

30年以上前から独自の留学制度を開発するなど、グローバル人材育成に力を入れてきた亜細亜大学。コロナ禍を経て学生の留学機運は再び高まりを見せていますが、都市創造学部教授の白井昌宏教授は「コロナ禍をきっかけに身の回りにある学びの題材に目を向ける学生が増えてきています」と語ります。亜細亜大学ではいち早くそのニーズに着目し、2025年4月より都市創造学部を改組して社会学部現代社会学科の開設を決定。その狙いと新たに開設する現代社会学科の学びについて、社会学部学部長就任予定者である白井教授にお話を伺いました。

見えないものに光を当てる「社会学」とは

ーー亜細亜大学では2025年4月に都市創造学部を改組し、社会学部現代社会学科を開設予定です。これにはどのような経緯があったのでしょうか?

白井:2016年に開設した都市創造学部では、多角的なテーマで都市の課題解決を扱い、経営学や社会学の観点で現代都市を考察してきました。この学部は未来の都市社会をグローバルな視点で捉えていけるよう、海外留学と海外就業体験が全員必修であるなど先進的な取り組みを行っていましたが、ご存じの通りここ数年はコロナ禍で海外に行きづらい状況になってしまいました。それをきっかけに自分の身の回りのことを深く考えて、身近な社会問題に学びの題材を見出す学生がとても増えてきたのです。

社会学ってどんな学問? 「人と違う自分」が強みに変わる 独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科

ーー身の回りに社会学的な学びの題材があるとのことですが、記事を読む高校生に向けて何か具体例をご紹介いただけないでしょうか。

白井:私は建築デザインおよび都市デザインを専門としています。その分野でお話しますと、ある場所を再開発するということは、建築計画や都市計画に基づいて地域の機能性や利便性を高めるだけでなく、経済を活性化して利益を上げる役割も求められますよね。だから大きなビルや生まれ変わった街並みばかりが脚光を浴びがちです。いっぽうでその場所の歴史や、そこに長年住んできた人々の暮らしはどう変化するのか。再開発で私たちは何を得て何を失うのか。そういった光の当たらない事象に光を当てて考察するのが社会学の学びなのです。

例えば最近は明治神宮外苑の再開発について、さまざまな報道がありましたよね。元々この計画は、外苑周辺の環境を継続的に維持するための資金確保、つまり経済的な必要性から起案されたものでした。しかし外苑に思い入れのある著名人が反対を表明したり発信をしたことで、再開発の経緯やそこを利用する人々のコミュニティ、土地の歴史などが注目を集めたのです。社会学的なトピックが大きくクローズアップされた事例ですね。

ーーそういった事象に光を当てるためには、どんな学びが必要になるのでしょうか。

白井:意外かもしれませんがじつはメンタル、つまり気持ちの持ち方がとても重要です。普段の私たちは、何気なくいろんなことをじつは見過ごしています。それを見過ごさないための能力というか、気持ちの持ち方を身につける必要があると思います。

私はもともと工学系で建築が専門分野です。社会学に触れたのは大学院博士課程のときでしたが、そこで出会った人はものの見方が自分とは異なっていることに驚きました。社会のいろんな物事や人に目を向けていて、まだ顕在化していない事象、すなわち「見えていないもの」に光を当てようと考えていたのです。「課題発見力」と言ってもいいかもしれませんね。

ーー社会学を学んでそのような視点を身につけることは、実社会ではどのように役立つでしょうか。

白井:どのようなキャリア形成を図るのかはひとりひとりが異なりますが、仮に企業に就職したとしましょう。いま企業の人はどうやって商品やサービスで利益を生むかということはもちろん、社会に隠れている見えないニーズを探し出すところに非常に苦労しています。経営学でも近いことは学べるかもしれませんが、そういった見えていないものに対して視野を広げていくのは社会学が得意とするアプローチです。あるいは行政に進んだ場合は、市民社会のために何ができるかを仕事として考えなくてはなりません。「じつはこんな人たちが困っている」「この地域にはこんなポテンシャルがある」など、見えないものに視野を向けられる力は非常に役立つのではないかと思います。

ーー社会学は文系の学問だと思っていましたが、データを扱う理系的な素養も必要です。白井先生は建築学科のご出身ですが、どちらに近い学問だとお考えですか?

白井:意外かもしれませんが、建築は社会とかなり密接につながっているんですよ。時には住民の反対運動と向き合うこともあり、その土地の成り立ちやコミュニティを調べたりと、実務では社会学の要素がかなり大きいのです。「自分は理系だけど文系のことをあまり知らなかったし、むしろこれからのことを考えるヒントが転がっているな」と考えたことが、博士課程で社会学を専攻したきっかけになっています。

基本的には社会学は文系に属する学問だと思いますが、さまざまな数値を取り扱うデータサイエンスの要素もあるので、理系領域にも興味を持てる人が理想的です。「定量的」「定性的」という表現が社会学ではよく用いられますが、前者は数値化できること、後者は数値化できない要素を表しています。例えば困っている人がいたとすると、何人が困っているかは数値化できでも、どれくらい困っているかは数値ではなく言葉で表現するしかありません。文系だろうが理系だろうが、片方に軸足を置きながらどちらの領域も行き来できる、ということが求められているのではないでしょうか。

社会学ってどんな学問? 「人と違う自分」が強みに変わる 独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科

 

現代社会を多角的に切り取る、3つの「キーワード」

ーー亜細亜大学で開設予定の社会学部現代社会学科では、どんなことを学べるのか特色を教えてください。

白井:現代社会を考える上で重要なキーワードとして、「エンターテイメントと文化」「コミュニティとネットワーク」「都市とビジネス」という3領域の学びを用意しました。それぞれの領域にはゲーム業界ご出身の先生や、都市計画の実務を担当していた先生など、実務に携わってきた経験豊富な教員が多いことも本学の特徴です。実社会に即したリアルなことを学べると思います。

「私たちの生活に大きな影響を与えている、消費文化やサブカル文化はどこへ行くのか」「東日本大震災をきっかけに頻繁に用いられるようになった、人と人とのつながりとは何なのか」
「テクノロジーやイノベーションによって、産業構造や社会の在り方はどう変わっていくのか」

このように”現代” というキーワードを切り口にすると、いまの社会をドライブしているこの3領域が自ずと浮かび上がって来るように思います。社会学はいろんな大学で学ぶことができますが、「現代」というキーワードを冠した大学は特に関東には少ないので、非常に新しい試みだと思います。

社会学ってどんな学問? 「人と違う自分」が強みに変わる 独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科
画像提供=亜細亜大学

ーーこれらの3領域はコース制で学ぶのでしょうか?

白井:いえ、コースという呼び方をしていますが、実際には、学生の興味・関心に合わせて学びたいものを選択できます。大学での学び方というのは個人差が大きく、最初から特定の分野にフォーカスして掘り下げる人もいれば、広く満遍なく学びたいという人もいます。個々の学び方に合わせて柔軟に対応できるように、コースに縛られない自由度の高いカリキュラムになっています。

ーーその他にも何か新しい取り組みなどの予定があれば教えてください。

白井:社会学の面白くて重要な要素、それがフィールドワークです。もちろん机に座っていても学べることは多いのですが、やはり実際の現場に出て人と接して話を聞いてみると、そこにはもっと濃密な学びと気づきが溢れています。とは言え何の下準備もなく外に出て、良質なフィールドワークができるわけではありません。事前にリサーチしてデータを集めたり、インタビューで得られたことばをどのように分析するかも大変重要です。そういった手法を以前は学生に委ねていた部分が大きかったのですが、今後は手法の共通化を図りながら、フィールドワークを社会学部の学びの柱の一つにしたいと考えています。もともと本学は留学に強い大学なので、海外でフィールドワークをやりたい学生向けの支援も充実させていく予定です。

そして専門分野の知見が深まるとともに、フィールドワークでは学生の「人間力」が非常に鍛えられます。テーマによっては限界集落に行ったり、アジアの僻地に行く人もいるかもしれないし、そこで現地の暮らしを観察したり、住民にインタビューを行うわけです。未知の場所に飛び込めるとか、初対面で誰とでも話せるとか、数値化できない能力がフィールドワークにおいては非常に重要です。企業にせよ行政にせよ、社会人になったときにこうした人間力は大きな強みとして発揮できるのではないかと思います。

社会学ってどんな学問? 「人と違う自分」が強みに変わる 独自の視点で現代社会を考察しよう–亜細亜大学 社会学部 現代社会学科
画像提供=亜細亜大学

ーー新しい社会学部に、どんな学生に来てほしいと思いますか?

白井:やはりいろんなことに対する好奇心が強い人です。ネガティブな意味でも使われますが、ポジティブな意味でも使われるような、「マニアック」などと言われる人もいいですね。他人が気づかないところに気づく人。他人がハマらないものにハマる人。そういう人たちが最近は評価されています。「多数派とは視点の持ち方が全然違う人」には私はすごく価値があると思うし、そんな学生がどんどん集まると面白いですよね。

あとは前述の人間力が高い人、例えば人と話すことがものすごく得意な人もいいですね。そういう「人好き」で社交性の高い人は、フィールドワークにすごく向いていると思います。

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ーー社会学部の2025年度入試について教えてください。

白井:年内は総合型と指定校と公募制推薦を実施予定です。社会学部としては推薦や総合型といった受験生の興味関心を直接知ることができる「面接」がある入試がより大事だと考えているんです。その人がテストで何点取れるかということより、どんなことに興味を持っているか、どういう視点を持っているか、人となりを知りたいからです。それが社会学のような学問にはすごく大切な要素となってきます。

もし現時点ではこれ、という興味・関心が決まっていない人でも、「いろいろ学びたい!」という旺盛な好奇心で入学してもらって、幅広い領域に触れて探してもらうのも大歓迎です。社会学に興味があれば、みなさんの好奇心を刺激する授業やプログラムをいろいろ用意してお待ちしています。