22年中学入試最終予測(前編)

中学・高校情報 情報編集部
22年中学入試最終予測(前編)

受験生増加で激戦継続 学校選びは多様化が進む

1月から本格的にスタートする首都圏の私立中入試。コロナ禍2年目の2022年入試も私立中高一貫校の人気は高く、学校選びも多様化しています。ここでは、22年入試予測と注目校、入試の際に気をつけたいことなどについてお伝えします。

22年入試は受験生が増加 受験生層の二極化が進む

大手塾(サピックス、四谷大塚、日能研、首都圏模試センター)が一年を通して実施している模試の志望状況は、受験生の動向を予測する際、参考になるデータです。今年行われた各社の模試の受験者数をみると、ほとんどが前年を上回っているので、22年入試は全体の志願者が増えるのは間違いなさそうです。四谷大塚によると、21年入試の受験者数は約5万2000人でしたが、22年入試は2500人増の約5万4500人程度になる見込みです。

特に東京では、私立中の受験者が右肩上がりで増えています。千代田区、中央区、文京区、港区、江東区など、都心部の人口増が拍車をかけています。以前から中学受験率が高いこのエリア。教育への関心が高く、小学校低学年から塾に通わせている家庭も多いようです。

私立中を受験する児童は、その多くが大手塾に通っているものの、そういった塾には所属せず、模試も受けずに私立中を目指す人もいます。そういう受験生や塾に通い始める時期が比較的遅かった人にとって、毎年人気が集まる難関校を目指すのは、より厳しい道のりになります。ですから、自分の実力で合格できるような身の丈に合った私立中を目標にする傾向がみられます。よりレベルの高い学校を目指す層との二極化が進み、受験生層の裾野が広がってきています。

1月入試は、埼玉が志願者を多く集めそう

22年はどのような入試になるのか。各校の志望動向と注目校について、1月に入試を行う埼玉や千葉、寮がある地方の学校の首都圏入試からみていきましょう。


一般的に、1月入試は2月に入試が始まる東京、神奈川の試し受験としての出願が多く、来年も埼玉の私立校は多数の志願者を集めそうです。栄東は21年には実施しなかった東大Ⅱ入試(1月18日実施)を22年に再開。この日程に入試を行う学校は少ないので、志願者が集中する可能性があります。栄東は東大クラスと難関大クラスを設置していますが、クラスによる学力の差はほとんどなく、互いに切磋琢磨する雰囲気があります。


一方、千葉の一般入試が始まるのは1月20日。10日から始まる埼玉より遅いスタートとなります。東京・神奈川の入試がはじまる2月1日までに新型コロナウイルスに感染したり、濃厚接触者になると外出できなくなり、2月からの入試に影響が出てしまいます。このこともあって、21年の入試では千葉の学校を避ける傾向がみられました。また、東京からの受験生が集まるのは渋谷教育学園幕張東邦大付東邦市川昭和学院秀英などで、都県を越えて受験する学校があまりないというのも千葉の特徴です。22年は志願者が増えそうですが、コロナ禍前の志願者数までには戻らないと思います。

千葉でも、21年に共学化・校名変更した光英VERITAS昭和学院千葉日本大第一東海大付浦安は志望者が増加しています。

また千葉市立稲毛は22年から稲毛国際に名称変更し、中等教育学校になります。22年度入試から一次検査と二次検査に分けて試験を実施。適性検査に英語リスニングが加わり、募集人員も80人から160人に倍増しました。12月11日(土)に実施された一次検査の受検者数は846人で、21年と比べると264人増になりました。

茨城の江戸川学園取手は、22年入試から英語を含めた5科入試になります。ただ、公表している模擬問題などを見る限り、小学校の英語の授業を理解できていれば問題なさそうです。英語では差がつかず、実質4科での判定になるでしょう。


これまで、寮のある地方の学校の首都圏入試は、合格しても進学しない場合が多かったのですが、近年は進学先として選択肢に加える家庭が増えています。寮に対する考え方が変わってきて、良い教育を行っている学校であれば子どもを寮に預ける選択もポジティブに捉えられるようになりました。北嶺不二聖心女子学院静岡聖光学院早稲田佐賀などは入学することを考えて受験する家庭が増えています。模試の状況をみると、早稲田佐賀や盛岡白百合学園の志望者が増加しています。

また21年には首都圏入試を行わなかった長崎日本大が22年に入試を再開。日本大三島も東京、神奈川で出張入試を始めます。日本大三島は寮を設置していませんが、新幹線で東京から1時間ほど。比較的通いやすい学校です。

2月入試は伝統校の人気が復活 臨海地区から通いやすい学校が志望者増

このところ、男女ともにトップ校とそれに次ぐ難関校の人気の差が縮まってきています。女子校はその傾向がより顕著に表れており、豊島岡女子学園鴎友学園女子吉祥女子洗足学園の人気はトップ校に迫る勢いです。特に、吉祥女子は志望者が増えており、22年入試は難化しそうです。

ここ数年、人気が続いている男子校ですが、特に武蔵の志望者が増えています。広報活動を積極的に行い、説明会などを通して教育内容が広く伝わるようになってきたことも一因です。武蔵は併設の武蔵大との高大連携教育が行われています。内部進学者はほとんどいませんが、併設大には日本にいながらロンドン大学の学位を取得できるパラレルディグリープログラムがあるなど、グローバル教育に力を入れている大学として定評があります。22年には国際教養学部も開設します。

この他、男子校では攻玉社成城京華佼成学園聖学院鎌倉学園サレジオ学院逗子開成の志望者が増えています。特に人気があるのが獨協日本大豊山。午後入試を実施し、併願校として受けやすいことも人気の理由です。獨協は21年入試から午後入試を実施しています。巣鴨世田谷学園、女子校では香蘭女学校恵泉女学園、共学校では神奈川大付なども午後入試を機に人気がアップしました。

また、豊洲などの人口が増えている臨海地域から通いやすい学校も志望校として選ばれやすくなっています。前出の獨協、日本大豊山がある有楽町線沿線や、安田学園青稜かえつ有明など、大江戸線やりんかい線、大井町線沿線の学校は志望者が増加傾向です。


人気が伸びている学校の中には、明治時代に創立された伝統校も目立ちます。早慶をはじめとする難関大学への合格実績が良い攻玉社や、高校からドイツ語を選択でき、獨協医科大への推薦枠がある獨協、豊かな自然環境があり勉強とクラブ活動の両方に力を注げる鎌倉学園、面倒見の良さに定評があり、生徒一人ひとりに合わせた進路指導や学力を伸ばすきめ細かなフォロー体制がある京華などです。

一時期、人気が伸び悩んでいた女子の伝統校も、復活してきました。伝統校の良さは学校の敷地の広さや図書館の蔵書数など、施設・設備が充実している点。なかでも、山脇学園は高人気です。英語教育やICT教育にも力を入れ、募集をやめた短大の施設をリニューアルしてイングリッシュアイランド、サイエンスアイランド、リベラルアーツアイランドの3つの施設をつくるなど、様々な改革を行っています。SNSを使った情報発信の効果も人気の回復につながりました。

女子の伝統校の中では学習院女子三輪田学園も人気です。学習院女子は、敷地内に広大なグラウンドがある恵まれた環境です。帰国生が多く、語学教育に力を入れている点や、併設大への内部進学はもちろん、生徒の約半分が外部の大学に進学して多様な進路を実現していることも人気につながっています。三輪田学園は、床暖房・無線LANを整備した図書館をはじめ、室内温水プールなど充実した施設・設備が魅力です。課題図書を読んでレポートにまとめるなど、読書指導にも力を注いでいます。この他、理工系の学部・学科への進学率が高い普連土学園も志望者が増えています。

女子校には、日本の伝統文化を学べる学校も目立ちます。放課後に華道講座を行う共立女子は、草月流、小原流、池坊、古流の4流派から選べますし、十文字にも伝統文化に触れる機会があります。伝統校には古くから受け継いできた取り組みも多く、それが学校の校風にも表れています。そういったものを守りながら、新しいことにもチャレンジしている伝統校は人気があります。学校選択の際には、自宅を中心に円を描いてみて、100年以上の歴史がある学校をチェックして見学してみるのもいいかもしれません。

また、海城では今年、新理科館が完成。物理・化学・生物・地学の4科すべての実験室を設置しています。壁面には各科に関連する展示物が並び、生徒の知的好奇心を刺激する施設となっています。関東学院も、最新設備が整う5つの理科実験室が同校の理科教育を支えています。駒場東邦には4科の計9つの実験室が設置されています。充実した施設・設備が生徒の学習意欲を掻き立てています。


海外大学への合格実績が伸びている学校も人気が高まっています。広尾学園は今年、海外大学の合格者数がトップで、延べ222人が合格しています。北豊島も、80校近い海外大学に現役の合格者を出しています。少人数で徹底的に勉強させる環境があるので、海外大学合格を視野に入れて学びたい人にはお勧めです。

21年に共学化・校名変更で再スタートを切り志願者が集中した広尾学園小石川は、22年入試も引き続き人気が続いており、厳しい入試になりそうです。