中学受験のエキスパートが選ぶ2021年度首都圏中学入試の注目校はココだ!
新型コロナウイルスの蔓延で、会場での中学受験模試の開催が難しく、自宅でのオンライン受験が実施される時期もあった。しかし今はコロナ対策を徹底し、外部会場での開催が再開されている。
大手中学受験塾の秋の模試では、受験者数が昨年と比較して減っておらず、逆に増加した模試もある。コロナ禍でも中学受験を目指す家庭は減少していないようだ。来春の入試状況は今春並みとみられる。
では、志望校に合格するためにどうやって学校を選んでいけばいいのか。首都圏の有力塾などのエキスパートにアンケートを実施し、2021年入試の注目校を挙げてもらった。それをまとめたのが以下の表である。
ICT教育の充実でコロナ禍でも対応が早かった私立校
最初に新型コロナウイルスへの対応が好評な学校について見てみよう。3月の初めから5月末までの約3カ月間に及ぶ休校期間中、私立校はいち早い対応を取った。
早い学校では3月からオンライン授業を実施。また配信する授業動画の作成やオンライン授業の工夫など、全教員が一丸になって取り組んだ学校も数多くあり、その結果、ベテラン教員と若手教員の交流が新たに生まれ、全教員のスキルアップにつながったケースもあるという。
もともと私立校ではICT教育が盛んで、1人1台のタブレット端末を備えている学校も多い。家庭にパソコンなどが無い生徒には、学校のパソコンを貸出した学校もあるという。
海城、佼成学園、城北、聖学院、大妻、女子聖学院、玉川聖学院、啓明学園、栄東、桜丘なども早期から対応した学校だ。かえつ有明、開智日本橋学園、広尾学園、三田国際学園などもICT(情報通信技術)教育が進んでいる。
鴎友学園女子では、BYDO(Bring Your Own Devaice)を採用し、生徒たちは自分のデバイスを持ち込んで学習に利用した。その結果、多様なソフトを利用した学習が実施することができた。生徒たちのスキルも高く、逆に生徒たちからさまざまなアプリの提案があったという。
休校が解除された後は登校での対面授業が始まったが、密を避けるため最初は分散登校が行われた。1クラスの人数を減らすために、出席番号の奇数と偶数で2分割して登校させた学校が多かったようだ。しかし女子聖学院では学年ごとに登校日を設定し、横のつながりを重視したという。
また、女子美術大付では、昼食を取らずに済むように午前中4時間だけの授業にした。授業はすべて美術という変わり種。学校で楽しく学ぶことを最優先した教育姿勢が評価された。
現在は、換気や消毒など感染対策を徹底し、ほぼ通常授業に戻っている。「コロナ禍でのさまざまな工夫や対応が、通常の授業を進化・発展させる効果があった」とエキスパートは考えている。
2021年入試で志願者が増加しそうな人気アップ校は?
次に、来年入試で人気がアップしそうな学校を見てみよう。エキスパートは入試変更や共学化、大学合格実績などに注目している。
首都圏では午後入試が多く実施されているが、21年も新たに始める学校がある。獨協は東京と神奈川の入試が始まる2月1日に午後入試を新設する。最近は難度が落ち着き、少し受けやすくなっていたが、午後入試の実施で難関校との併願者が増えて、レベルアップにつながりそうだ。また、神奈川大付はもともと2日から入試が始まる学校でったが、1日に午後入試を新設する。
中学入試では入試を複数回実施する学校が多い。そのため、入試を増やす傾向が強いが、近年は逆に減らす学校が現れている。
鴎友学園女子は16年に3回実施していた入試を2回にした。21年は吉祥女子が、前年までの2月1日、2日、4日の3回入試から、4日入試を廃止して2回のみにする。募集人員は1日が20人、2日が10人増加される。吉祥女子はトップ難関校との併願者が多いだけでなく、最近は第一志望者も増加している。学力上位受験生にとっては、入試後半日程で受験可能な学校が減るため影響が出そうだ。
世田谷学園では19年から算数1教科で受けられる特選入試を開始し、多くの受験生を集めた。21年は新たに理数コースを設置し、本科コース160人、理数コース40人の募集になる。入試科目は同じ国算理社の4科だが、理数コースは算数と理科の配点が本科コースの倍になる。理数科目が得意な受験生には有利だ。大学合格実績が好調だが、理数系に力を入れることで今後も伸びが期待される。
また、21年は共学校に移行する学校が多い。芝浦工業大付は高校が17年に男子校から共学化したが、21年からは中学も共学化する。女性の研究者や技術者の養成に中学から取り組む。
聖徳大付女子も共学化し、校名を光英VERITASに変更する。グローバル教育と理数教育を重視した進学校を目指す。小笠原流礼法教育をさらに推し進め、思いやりの心と日本文化を学び世界に通用する人材を育成する。
村田女子は、停止していた中学募集を再開する。同時に共学化し、校名を広尾学園小石川に変更。広尾学園と同内容の教育を実施する予定だ。広尾学園に少し届かない学力層の受験生が目指すと予想され、人気になりそうだ。
人気男子校の本郷は21年から高校募集を停止する。そのため、中学の募集人員が40人増える。競争が少し緩和されそうだ。
中学入試の志望校選びでは、大学合格実績が重視される。実績が好調な学校は人気アップしそうだ。
サレジオ学院は今春東大合格者が昨年比4人増の10人だった。「2桁合格者を出したインパクトが大きい」とエキスパートは評価する。さらに早稲田大に72人、慶應義塾大に53人が合格するなど難関私大に強い。模試でも志望者が増えているという。
大宮開成は今春の合格実績は法政大が全国トップ、立教大と中央大もベスト5入り。私大に強いだけでなく、東大や東北大、埼玉大など国公立大合格者も増加傾向だ。
入学後に生徒を伸ばす学校が高評価
受験生や保護者に勧めたい学校を見ると、エキスパートなりの視点がうかがえる。麻布、開成、栄光学園、海城、早稲田大高等学院、桜蔭、豊島岡女子学園、白百合学園、立教女学院、明治大付明治など伝統校や上位校の評価が高い。
一方、京華、佼成学園、聖学院、藤嶺学園藤沢、共立女子第二、麹町学園女子、佼成学園女子、玉川聖学院、聖園女学院、駒込、実践学園、獨協埼玉、文化学園大杉並など中堅校からも多く選ばれている。子どもを入学後に丁寧にみて伸ばしてくれるという評価が高いようだ。
コロナ禍で思うように勉強が進まず、上位校に合格できないこともあるだろう。しかし、子どもの実力にあった学校の中にも、将来子どもが活躍できる力を身につけられる学校が多くある。そのような学校を探してほしいとエキスパートは願っている。