京都産業大学が系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見 ~謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進

研究・産学連携 大学プレスセンター
京都産業大学が系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見 ~謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進

~ 米国天文学会 専門雑誌The Astronomical Journalに掲載 ~

京都産業大学理学部 米原 厚憲 教授らの研究グループは、大きな質量の系外惑星(ホット・ジュピター※1)において、生まれて間もない恒星の近傍をほぼ円軌道で公転するという新たな特徴を示す「KELT-24b」を発見した。「KELT-24b」を持つ恒星「KELT-24」は、この種のホット・ジュピターを持つ恒星の中で最も明るく、トランジット現象(※2・ 図1)のより詳細な観測が可能であるため、これまで十分に解明されていないホット・ジュピターの形成過程の謎に迫ることが期待される。

※1 ホット・ジュピターとは、系外惑星の一種で、太陽系の木星(ジュピター)に匹敵する、あるいはそれ以上の質量を持つ惑星のうち、恒星の非常に近くを公転しているものをさす。

※2 恒星の周りを公転している惑星が、ちょうど恒星と我々の間を通過する場合、恒星からの光の一部を惑星が一時的に遮る(蝕を起こす)ことで、恒星がわずかに、そして一時的に暗くなって観測される現象。

京都産業大学が系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見 ~謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進
図1 トランジット現象の概念図。惑星が恒星の前を横切った際の光度変化を表す。

2019年のノーベル物理学賞は、1995年に恒星まわりの太陽系以外に初めて系外惑星を発見したMichel MayorとDidier Quelozに贈られることになった。その発見から現在までに、4000個を越える系外惑星が発見され、宇宙には太陽系とは全く異なる惑星の世界が広がっていることが明らかになり、発見された系外惑星の存在を理論的に説明することで、惑星の形成・進化(生い立ち)について新たな知見が得られるようになった。

その中でも、恒星の非常に近くを公転するホット・ジュピターは、その形成・進化の過程が太陽系の惑星とは明らかに異なると考えられており、ホット・ジュピターは実際にどのような過程を経て現在の場所に存在しているのかは、明らかにされていなかった。

本学神山天文台の荒木望遠鏡による観測などから、新たな系外惑星「KELT-24b」の存在と、その系外惑星の物理的性質が明らかになった。その性質は、若い恒星の非常に近くを公転しているにも関わらず、その軌道がほぼ円軌道になっている。これまでホット・ジュピターが遠方で形成して近傍まで移動する場合はその軌道が長い時間をかけて円軌道に変化すると考えられていることから、ホット・ジュピター形成過程の解明につながる重要な発見である。今後のより詳細な観測から、ホット・ジュピターの大気構造などがより詳しく解明されることが期待される。

この研究成果は、2019年10月23日に米国天文学会 専門雑誌「The Astronomical Journal」に掲載された。

京都産業大学が系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見 ~謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進

図2 恒星KELT-24とその周辺の天体の画像。デフォーカスと呼ばれる、わざと像をぼやかす特殊な観測方法でデータを取得したため、恒星の像はどれもドーナツ状の形状をしている。ターゲットの右下などにある暗い恒星の像などで、ドーナツ状の形状がよく分かる。

京都産業大学が系外惑星の新たな形成モデルであるホット・ジュピターを発見 ~謎に満ちた系外惑星の解明に一歩前進図3 トランジット現象の際に観測された明るさの変化。上段には、今回の観測ターゲットであるKELT-24の明るさの変化が、下段にはトランジット現象が起きない比較星の明るさの変化がそれぞれ示されている。KELT-24は横軸が0.02日付近から暗くなり始め、0.20日付近で元の明るさに戻っている。