京都産業大学などの研究グループが「あかつき」を用いて、金星の全球的な大気構造を解明

研究・産学連携 大学プレスセンター
京都産業大学などの研究グループが「あかつき」を用いて、金星の全球的な大気構造を解明

図1=電波掩蔽観測のイメージ図

~ 金星探査史上初めての快挙、英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載 ~

京都産業大学理学部 安藤紘基 助教らの研究グループらは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」と欧州宇宙機関(ESA)の金星探査機「Venus Express」による電波掩蔽(えんぺい)観測から、金星探査史上初めてとなる雲層の下(高度40km)から上(高度85km)における全球的な気温分布および大気安定度を取得した。

金星は地球の双子星と呼ばれるほど質量や大きさが似ているが、両者の大気環境は全く異なる。これまで大型望遠鏡を用いた地上観測や人工衛星に搭載されたカメラ・分光器による撮像観測が実施されてきたが、金星には分厚い雲があるために、雲の中やその下の大気構造についてはよく分かっていなかった。

本研究では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」と欧州宇宙機関(ESA)の金星探査機「Venus Express」の電波掩蔽観測によって、金星の雲層の下(高度40km)から上(高度85km)における気温の高度分布を全球的に取得。その結果、緯度70度よりも赤道側の大気構造は、過去にプローブや着陸機を用いて実施された直接観測の結果と似ていることを確認した。
一方、直接観測の結果は皆無であった緯度70度よりも極側の大気構造は、大気安定度の低い領域が雲層の中から下まで連続的に広がっていることが分かった。

このような大気安定度の緯度分布は、地球とは正反対の性質を持ち、金星探査史上初めて見出されたものである。また、本研究によって、全球的かつ統計的に得られた気温と大気安定度のデータは、大気大循環モデルをはじめとする数値モデルにとっての良いリファレンスとして、今後大いに活用されることが期待される。

この研究成果は、2020年2月26日に英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

[関連リンク]
・金星探査史上初めての快挙!「あかつき」を用いて金星の全球的な大気構造を解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20200226_345_release_ira01.html
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京都産業大学などの研究グループが「あかつき」を用いて、金星の全球的な大気構造を解明

図2 電波掩蔽観測によって得られた気温(a)と大気安定度の緯度-高度分布(b)

 

京都産業大学などの研究グループが「あかつき」を用いて、金星の全球的な大気構造を解明

図3 金星の大気安定度の緯度分布の概念図