国の給付奨学金(修学支援新制度)利用者が増加
入学前予約型、入試特待生など多様な制度の活用を

入試 小松 栄美
国の給付奨学金(修学支援新制度)利用者が増加 入学前予約型、入試特待生など多様な制度の活用を

22年度大学入学者の初年度学費(平均額)は、国立大の標準額で約82万円。公立大(地域内)は約76万円。私立大は学部系統によって異なり、文系では法・政治学系統が最も安く、約127万円。一方、理系は理工学系統が約166万円(大学通信調べ。公立大のみ21年度実績)。地元を離れる場合は、住居費などの生活費も必要となる。家計収入だけでは賄うことができず、奨学金やアルバイトで補う学生が大半だ。

奨学金の中で利用者が最も多いのが、日本学生支援機構(JASSO)の制度で、給付型と貸与型がある。20年度から導入された給付型は、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯が対象。国の修学支援新制度と呼ばれ、授業料減免と奨学金給付とがセットになっており、21年度は前年より約5万人多い約32万人が利用した。さらに、政府が今年5月に発表した「教育未来創造会議」の提言には、給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大が盛り込まれ、24年度から支援が始まる見込みだ。高3生は、今はJASSOの基準に該当しなくても、入学後に申請できる可能性がある。

一方、貸与型の利用者はのべ約123万人。無利子と有利子の2種類があり、卒業後に返還する。給付型、貸与型のいずれの制度も、高校在学中の予約採用だけでなく大学入学後の申し込みが可能だ。

このほか、各大学では独自の奨学金制度を用意し、経済的な理由で進学を断念することのないように支援体制を整えている。近年は、大学入学前に受給の可否が分かる給付型奨学金の充実が図られている。

秋から冬にかけては、入学前予約採用型奨学金の募集が行われる。世帯所得や高校の成績、居住地など、各大学が定めた条件を満たす生徒が対象で、書類審査により採用候補者を決定し、入試に合格して入学することで正式採用となる。早稲田大、慶應義塾大、明治大、青山学院大、法政大などが実施しており、23年度は東北学院大が新たに導入する。都内の大学の場合、主に首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)以外の高校出身者が対象だが、明治大では、首都圏出身者は所得上限を下げて対象に加えている。

入試成績上位者の学費を減免する特待生制度は、多数の大学が実施している。駒澤大、亜細亜大、昭和大、帝京大、立正大などは合計100人以上の採用枠があり、慶應義塾大、北里大、東京慈恵会医科大などは医学部も対象とする。23年度は長浜バイオ大が国立大並みの学費で学べる制度を新設予定だ。

また、今は奨学金の必要がなくても、入学後に家計が急変することもある。各大学では入学後に申し込む奨学金や家計急変者のための一時給付金を用意しており、どのようなサポート制度が利用できるかを知っておくことは大切だ。学生支援を重視する大学は、奨学金制度の充実にも力を入れている。入学後のまさかへの備えも、大学選びの視点のひとつだ。