大学入試改革、コロナ禍で波乱の2021年度入試
安全志向と地元志向がより一層強く

入試 小松 栄美
大学入試改革、コロナ禍で波乱の2021年度入試 安全志向と地元志向がより一層強く

2021年度入試から大学入学共通テストがスタートし、従来の入試制度も名称が変わる。新たな制度で行われる21年度入試はどうなるのか。

まず、20年度の入試を振り返ってみよう。今年で最後となった大学入試センター試験は、志願者が3.3%減少し、過去31回実施された中で減少数が最大となった。国公立大の志願者数は6.4%減少。私立大では、センター利用入試で10%以上減少したのをはじめ、一般入試も4%近い減少となった。

入試制度の変わり目となる20年度入試は、例年以上に安全志向が強かった。国公立大の志願者が減ったのは、センター試験の志願者減少に加え、平均点が下がったことが要因だ。「入学定員厳格化」で一般入試の難化が進む私立大は、推薦やAO入試に人気が集まった。併願受験の利用が多かったセンター利用入試は、合格最低点が8割以上の大学もあり、合格可能性を考え敬遠する受験生が激増した。

21年から始まる大学入学共通テストは、記述式問題と民間英語試験利用が目玉となる予定だったが、昨年末になってどちらも見送られた。センター試験からの主な変更は、英語の配点が「筆記200点、リスニング50点」から「リーディング100点、リスニング100点」に、数学の「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」の試験時間が60分から70分になること。さらに、センター試験では6割の平均点を目途としていたのが、共通テストでは5割になる。平均点が下がることにより問題が難しくなり、受験生間の得点差も開くと予想される。ただ、試験方法は従来と変わらないため、国公立大離れには歯止めがかかりそうだ。

21年度入試はコロナ禍の影響も見過ごせない。「学校推薦型選抜」「総合型選抜」は、大会やコンテストが中止になり、活動実績の要件を満たせず出願できない可能性がある。一般選抜も視野に入れた準備が必要だ。また、地方出身学生の困窮や、帰省ができないといった問題もコロナ禍で発生した。地元志向は一層強まると見込まれる。

学部の志望動向は、コロナ不況による将来の就職を見越して、理系学部の人気が高い「理高文低」の傾向がある。オンライン授業やテレワークで注目された情報系の人気がアップしそうだ。不況時は、国家資格に直結した医療系の人気が高いが、院内感染の報道に触れ、今回は慎重な動きになりそうだ。