「警察官になるために、知っておいて欲しいこと」
日本文化大學 鎌原俊二学長に聞く!
「将来、誰かの役に立つ仕事をしたい」と思っている高校生の方はたくさんいることでしょう。なかでも国や自治体の職員となる国家公務員や地方公務員は人気の職種です。今回は公務員の1つである警察官にフォーカスし、警察官実就職率1位(2022年 大学通信調べ)を誇る日本文化大學の鎌原学長に、仕事の醍醐味や心構え、高校生のうちからできることなどをうかがいました。
警察官の種類と、業務内容の違いを知っておく
警察官には、大きく2種類あります。
まず大多数を占めるのが地方公務員となる「都道府県警察」の警察官です。管轄する都道府県において、事件事故の防止や犯罪捜査、災害警備などの業務を担い、住民の安全安心を確保します。各都道府県警察の採用試験に合格することが条件となりますが、試験の内容や受験資格が各都道府県によって少しずつ異なるので、希望する警察の採用試験案内などをしっかり確認してください。
もう1つは、国家公務員となる「警察庁」の警察官で、国家公務員試験合格者の中から選抜されます。警察庁で勤務するだけではなく、都道府県警察や内閣府といった政府の行政機関に出向することもあります。いわゆるキャリアとよばれる「総合職」はゼネラリストとしてあらゆる業務を経験します。「一般職」で採用された場合は、刑事、生活安全、警備、交通の各部門のどれか1つをスペシャリストとして担当します。どちらも自ら捜査を行うことはなく、都道府県警察の管轄をまたぐ広域的な事件が起こった場合などに、関係する都道府県警察に共同捜査の指示を出すなど、捜査の方針や態勢についての調整をします。例外的に、都道府県警察の管轄や国境をまたぐサイバー犯罪については自ら捜査を行っています。
そのほかに皇宮警察本部の皇宮護衛官という職業もあります。主たる業務は皇室のご身辺の安全をお守りすることで、皇宮護衛宮採用試験を経て採用される国家公務員です。
警察官のやりがいは、誰かの役に立てること
事件や事故が起こると曜日も時間も関係なく捜査にあたる警察官の仕事は、ときに辛さも伴います。それでも、困難な捜査の末、被害者の方に犯人逮捕の報告をすると「ありがとう」といった感謝の言葉をかけられることがあります。これは何ものにも代えがたい喜びです。また、災害救助など危険な業務におもむいて人の命を守る際には、誇りを感じます。こうした職務内容を鑑みても、警察官には、性格的に明るくて元気、常に前向きな姿勢の人、多少困難な状況でも前に進もうとする精神力を備えた学生が向いていると言えます。
高校卒業と大学卒業で違いはあるか?
都道府県警察には、Ⅰ類(大学卒業程度)、II類(短大または専修学校卒業程度)、III類(高校卒業程度)の採用試験区分があります(各都道府県警察によって名称が異なる場合や、Ⅱ類の採用をしていないところもあるので注意)。つまり、高校卒業時にも警察官になれるチャンスがあるのです。それでは、Ⅰ類とⅢ類では、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、採用枠はⅠ類の方が大きくなります。例えば令和5年度の警視庁警察官の採用予定人員は、Ⅰ類800名、Ⅲ類300名です(男女通算、共同試験採用予定人員を含む)。採用後は訓練施設である警察学校に入校し、Ⅰ類合格者は6ヵ月、Ⅲ類合格者は10ヵ月の研修(初任教養)期間を過ごします。その後警察署での見習い勤務を経て警察官となりますが、昇任試験の受験資格が得られる実務年数が異なるうえ、給与もⅠ類合格者の方が高くなります。こうした制度的な違いのほか、大学という環境で4年間を過ごすことで得られる人生経験は、仕事をする上でも役に立ちます。
法学部の学びは警察官の仕事にも不可欠
法学は私たちの生活の共通ルールを定めた法律を学ぶ学問です。誰にとっても身近であり、その知識は無駄になることがありません。そのため、警察官をはじめとした多くの公務員志望者が法学部に進学をしています。
一言で法律といっても、6法といわれる「憲法」「民法」「刑法」「商法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」をはじめ、日本には2000近くの法律があります。これらを全て覚えようとしたら大変ですが、法律がどのような考え方のもとに設計されているのか、法律文書の読み方、過去の裁判の事例(判例)などを基礎から学ぶことで、リーガルマインド(法的思考力)を身につけることができます。
また、例えば「道路交通法」や「風俗営業法」といった法律は、実態に合わせて頻繁に改正されます。法律は一度覚えれば良い、というものではなく、社会人として働きだしてからも法改正に応じて知識を更新しなければなりません。そのためにも、条文を丸暗記するのではなく、法的な考え方や、判例の調べ方などの手法を身につけることが大切なのです。ちなみに本学には模擬法廷が設置されていて、ここで模擬裁判を通して実際に法律がどのように適用されるのかを学ぶ授業もあります。
コミュニケーション能力の向上も大学が担う大切な役割です。近年、この能力は社会人に特に求められるようになってきました。本学では、ゼミでの活発な意見交換や教員との質疑応答を重ねることで、他者の意見を認め、自分の考えを端的に伝える力を身につけます。こうした訓練を4年間にわたって続けることができるのも、大学の環境ならではでしょう。
日本文化大學が大切にしてきた、日本の文化と人格教育
日本文化大學は、1978年に開学した法学部のみの単科大学です。日本の伝統を重んじて知性や礼儀を身につけ、人のために行動できる人材育成を行ってきました。法学部としては大変珍しいのですが、茶の湯について学ぶ日本文化史が必修です。茶の湯を通して学ぶ気配りや思いやりは、良好な人間関係を築くことに役立つほか「人の役に立ちたい」と願う公務員志望者にとっても必要なスキルとして学生たちに受け入れられています。
そのほか、「危機管理学」や「地域防災論」「警察学」など、公務員として知っておくと役に立つような知識を修得することができる科目を積極的に設置しています。
本学の特徴として、ここ十数年は高い警察官実就職率があげられますが、警察官志望者が増え出したのは2000年ごろからです。警察関係者の中で本学のことが口コミで伝わり、警察官志望の学生が次第に多く入学するようになり、今では多くの卒業生が警察組織に勤務しています。
本学は、「警察官になりたい」という夢を学内の友人と共有し、お互いに励まし合いながら公務員試験という大きな目標に向かって挑戦できる大学です。少しでも興味がわいたら、ぜひオープンキャンパスにきてみてください。警察官として勤務する卒業生によるトークショーを企画しています。その話を聞いたうえで直接疑問をぶつけることで、自分の将来の姿をより具体的に想像することができます。
高校生のうちは、好奇心を大切に
警察官志望者に限らず高校生の皆さんにお伝えしたいのは、自分の好奇心に素直でいてほしい、ということです。「なんだろう」とか「なぜだろう」といった疑問を素直に持ち、自分で考えたり調べたりする力をつけておくと、広く世界のことを知るきっかけになります。
また、読書の習慣を身につけてください。まずはどんなジャンルでも構いませんので自分が楽しめる本から手当たり次第に読んでみてください。読書習慣がつくと、知らず知らずのうちに知識が身につきます。これはのちのち公務員試験の教養試験の対策にも通じます。
そして、どんな職種でも必要になるのが体力です。特に警察官の場合は二次試験で体力検査が行われます。本学にはB’GYMというトレーニングルームがあり、女子学生も頻繁に活用しています。体を動かす習慣をそのまま維持できますので、今からでもぜひ運動を始めてみてください。
警察官は、一生の仕事として悔いはないと思うほどやりがいのある仕事だと思います。国民のために直接役に立てるこの仕事を、ぜひ多くの高校生に目指して欲しいです。
<お話を伺った先生>