【大学選び入門】驚きや発見と出合える!?
大学の先生たちの研究を調べてみよう–明治大学

大学選び入門 ライター 松本 守永
【大学選び入門】驚きや発見と出合える!? 大学の先生たちの研究を調べてみよう–明治大学

数ある大学・学部の中から、自分に合った進路の選び方を考えるシリーズ「高校生への大学選び入門」。今回お話をうかがったのは、「就職に力を入れている大学」ランキングで12年連続1位の明治大学で就職キャリア支援に取り組む、倉吉俊一郎さんです。就職とは、言ってみれば大学生活の集大成のようなもの。多くの学生の成長ぶりを間近に見てきた倉吉さんの視点から、大学選び・学部選びをアドバイスしてもらいます。

お話をうかがった人
倉吉俊一郎さん
明治大学 就職キャリア支援センター

興味・得意から進路を考えよう

就職キャリア支援の仕事では、学生と個別に話す機会がたくさんあります。その中で私たち職員が、「悔しい」と感じるときがあります。それは、漠然とした思いで本学へ入学した学生と出会ったときです。具体的には、「第一志望の大学に行けなかったから」「名前が知られているから」「偏差値で選んだから」などの動機があげられます。

もちろんこれらの学生も、在学中に夢中になることを見つけ、充実した日々を過ごすケースは少なくありません。しかし、入学時点で「明治大学でこんな勉強がしたい。こんな学生生活を送りたい」という思いを持っている人とは、スタートでの差がついてしまうことは避けられません。

そこで高校生のみなさんには、「夢・目標を持とう」「大学・学部に入った自分をイメージしよう」とお伝えしたいです。

夢・目標を持つと、それを実現するためには何が必要かを考えることができます。資格や免許が必要なら、取得に向けた勉強ができる大学・学部へ進むという進路選びにつながるでしょう。具体的な職業などは決まっていないものの、「人の役に立ちたい」「ビジネスで世の中を良くしていきたい」などといった、分野に限定されないような夢・目標を持っている人もいるでしょう。その場合は、大学のホームページなどで学部の情報や、先生の研究内容を調べてみましょう。「政治経済学部」などのように学部名こそ同じでも、大学ごとに強みや特色はさまざまです。さらに、先生方は多種多様な研究に取り組んでいます。その中には、あなたが「おもしろい!」「この先生に習いたい!一緒に研究がしたい!」と思えるものもあるはずです。そういった学びや研究が行われている場所こそが、あなたにマッチした大学・学部である可能性が高いのです。

ここで問題になるかもしれないのが、受験科目や文理の選択です。もしかすると、興味を持った大学・学部は、みなさんの苦手な科目を受験科目に定めているかもしれません。「技術分野が好きだけど、数学は苦手だから文系にしようか」と考えている人もいるでしょう。でも、そこで少し立ち止まってください。そして、「好きだけど苦手だから諦める」ではなく、「好きだから、苦手だけど頑張る」というふうに視点を変えみてください。これが、興味・得意から将来を考えるという方法です。「好き」は大きなエネルギーです。きっと、苦手を克服していくことができるはずです。そして、「やりたい勉強ができる」という、充実した大学生活へとつながるはずです。

身近な「好き」も、大学での学びと結びついている

「将来の夢や目標が見つからないから、進路もうまく選べない」という悩みを持っている人もいるでしょう。その場合は、勉強や進路のことからはいったん離れて、あなたにとって身近なもののなかで好きなものや興味のあるものを考えてみてください。

例えばゲームが好きだとしましょう。あなたが日々楽しんでいるゲームは、どうやって生み出されているのでしょう?どんな人たちが携わっているのでしょう?どんな技術が使われているのでしょう?そういったことを考えてみるのです。同じことは、好きな食べ物やよく利用するサービス、音楽やファッションなど、あらゆる分野で考えることができます。そして、大学の先生たちは、そういったことを実際に研究しているのです。あなたが「なぜ?」「不思議だな?」と思ったことは、大学での学びや研究と結びついています。そのつながりがある場所は、あなたにとってマッチする大学・学部だと考えることもできます。

部活動や趣味などあなたがいま取り組んでいることを、精一杯やりきることも、実は進路選びにつながっています。精一杯やると、「もっとできるようになりたい」「なぜできないんだ」など、いろいろな思いが浮かんできます。「自分はこんなことが好きだったんだ」という、予想していなかった気づきと出合えることもあります。それらの思い・気づきを追究できる場所として、大学・学部を選ぶのです。

ここまでは主に大学での学びとあなたの興味とのマッチングについて考えてきましたが、マッチさせるのは、必ずしも学びだけでなくてもかまいません。「このサークルに入りたいから入学しました」「大学祭が楽しみで入学しました」といった、課外活動や学校行事でも構わないのです。入学後の自分の姿がイメージできるというのは、大学選びにおいても非常に重要な点です。

PBLは学びのゴールではなく出発点

社会ではいま、多様で複雑な問題に取り組んで解決を図る「課題解決力」に期待が高まっています。。課題を見つけたり解決策を考えたり、そのためにたくさんの人と議論したり自分の意見を伝えたりという、さまざまな力の集合体でもある課題解決力は、教科書から知識を得るだけでは養えません。そこで、教室を飛び出し、地域住民や自治体、企業と連携して取り組む「課題解決型学習(PBL)」が活発に行われるようになっています。高校生のみなさんも取り組んだことがあるかもしれません。

本学でももちろん、活発にPBLに取り組んでいます。その中でも特徴的といえるのが、就職キャリア支援センターが主導して、全学部の学生を対象として行っているプログラムです。2021年度はTwitter Japanと連携し、『Twitterに実装すべき新機能を提案せよ』というテーマで社長にプレゼンテーションを実施しました。現在(株)小学館とは、縦スクロール漫画の企画制作に学生が挑戦するという取り組みを行っています。これらのプログラムに共通しているのは、1・2年生という大学時代の早い段階で行っていることと、企業側から容赦なくダメ出しをされるという点です。

就職活動では、「学生時代に最も力を入れたことは?」という質問をよくされます。この問いに対して「PBLです」と答えるケースも少なからずあるのですが、わたしたちは、それは違うと考えています。むしろ、PBLはスタートなのです。PBLで社員さんから厳しい指摘を受けることで、自分に足りない知識や能力が明確になります。それを受けて、PBLが終わった後の大学での学びや、日常の過ごし方を変えていくことができます。このプログラムの中で経営学部の学生が、講義を通して学んだフレームワークを用いて分析をし、資料にまとめたのですが「アイデアは良かったけど、プレゼンテーションがわかりにくかった」と指摘された学生がいました。この学生は、PBL後に「プレゼン力を鍛える」という明確な目標ができました。これが「PBLはスタート」と意味であり、学生時代の早い段階でPBLを行っている理由です。

ここで紹介したのはあくまでの本学の例ですが、大学ごとに多種多様なPBLが行われています。それらを調べてみて「この学びにチャレンジしたい」と考えることも、大学・学部選びのひとつ方法でもあります。その際には、プログラムそのものに加えて、プログラム前後の学びのつながりまで見てみるといいでしょう。企業や自治体との連携という点では、インターンシップも同様に、大学ごとの個性が現れています。インターンシップは「キャリア」「就職」といった名称の部署が行っていることが多いです。大学・学部選びの際には、それらの部署が発信している情報もぜひチェックしてみてください。