開校43年目を迎える西武学園文理中学校・高等学校の教育と今後の展望~マルケス ペドロ校長インタビュー

開校43年目を迎える西武学園文理中学校・高等学校の教育と今後の展望~マルケス  ペドロ校長インタビュー

近年の学校教育では、「生徒中心型教育」「PBL教育(Project Based Learning)」の重要性が高まっている。開校43年目を迎える西武学園文理中学校・高等学校はその最前線に立ち、生徒が主体的に学ぶことができる場を提供している。

2023年4月にはマルケス ペドロ氏が新校長として就任。教育のポイントとして、「デジタルシティズンシップ」「コミュニケーション能力」「国際能力」「全人的ライフスキル」の4つを掲げている。西武学園文理の教育と今後の展望について、改革を指揮するマルケス ペドロ新校長に話を聞いた。

―校長に就任されて、どのような教育を進めていきたいと考えていますか。

マルケス プロジェクトを基にした学習であるPBL教育を推進していきたいと考えています。近年の教育は、講義形式の知識伝達型教育から、探究学習を中心とする生徒中心型教育へと移行してきました。しかし、その生徒中心型教育にも限界があります。現在行われている探究学習は、現実社会のロールプレイングに過ぎず、リアリティが足りません。生徒のやる気を引き出すには、彼らがアクティブに社会と関わることが重要です。そこで本校は、外部の社会と学校が連携するPBL教育に力を入れていきたいと考えています。また、数字では測れない非認知能力を育てることができるのも、PBL教育の強みです。本校では、非認知能力の中でも、特にコミュニケーション能力を重視しています。一番のコミュニケーションの練習の場になるはずの学校で、一方的な知識伝達型の授業ばかりを行っていては、コミュニケーション能力は育ちません。PBL教育によって、認知能力のみならず、非認知能力も身につけていきたいと考えています。

―具体的には、どのようなPBL教育を実施していくのでしょうか。

マルケス PBL教育のプロジェクトとして、さまざまな取り組みを計画しています。

例えば、24年からはIT関連企業とのゲーム開発、ソフト開発のプロジェクトがスタートします。情報科の教員も関わりながら、プロジェクトを進めていく予定です。さらに、24年からデザイナーや企業、生徒が連携して、制服を0からデザインするプロジェクトが始動します。デザインの発案や材料の発注など、すべての会議に生徒が参加することで、経済や数学の勉強になります。また、企業の方々とのやり取りを通してコミュニケーション力も磨きます。

他にも、生徒が主体的に進めるPodcast番組を計画しています。Podcast番組は、視聴者参加型のインタビュー番組です。このプロジェクトでは、配信やインタビュー、ディベート、企画など、番組作りについて学びます。

また、メディアについて勉強するプロジェクトチーム「レインボーズ」も発足。本校の校舎を使ったテレビドラマの収録の際に、音の調整や場所の設営、エキストラとしての出演などを通してメディアに関するさまざまな知識を深めています。このプロジェクトも今後さらに強化していきます。

一方、本校は10月からスマホの使用を解禁しました。その際にもPBL教育の一環として探究学習プロジェクトを行いました。有志の生徒が、全生徒や教員、保護者を対象に調査し、みんなが納得できるスマホ使用のガイドラインを作りました。これをきっかけに、生徒たちは自分の手でこの学校を変えられることに気づき始めました。そこで24年4月から、学校をよりよくするための生徒発信のプロジェクトを始めたいと考えています。

このようにPBL教育によって気づきを得た生徒たちは、物事に主体的に取り組むようになっています。さらに、自分に自信が持てるようになり、自己肯定感にも結び付いています。

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―ほかにも進めていきたい教育はありますか?

マルケス 他の教育機関と積極的に連携していきたいと考えています。24年4月から起業家になりたい生徒を対象に、スタンフォード大学と連携した、オンラインの起業家育成講座を開始します。受講することで、スタンフォード大学の修了証を受け取ることができます。また、併設大学がある強みを生かし、大学生の授業を受講できる取り組みも計画しています。

加えて、2024年度には高校にグローバル総合クラスを開設します。このクラスではPBL型の授業が中心となり、生徒は一つ以上のプロジェクトに参加します。また、AIによる教科学習にも取り組んでいく予定です。AIは先入観や偏見などを持たず、的確で完璧なデータを出すことができる媒体です。重要性が高まっていますから、AIの使い方などを含めて教えていきます。そして、AIと共存し、AIにできないことができるクリエイティブな人材を育成していきます。そこで重要になるのが、教員の存在です。教育のプロとして、生徒に気づきを与えられる教員であることが大切です。生徒一人ひとりが主体的に学習できるように場を設定し、プロジェクトのコントロールやアドバイスをしながら、生徒と向き合っていきます。

―今後の改革のご予定はありますか?

マルケス 英語教育を根本的に変えていきたいと考えています。現在の日本の英語教育は、発音や語彙などを正しく身につけることを重視していますが、言葉に正解はありません。他の国では訛りがある英語を話す人も多く、そのことを恥ずかしいと思う人はほとんどいません。特に、周辺国では英語に対するハードルが日本よりも低いため、自分なりの英語を話しやすい環境があります。しかし多くの日本人は、正しい英語にこだわり、英語ができないと思い込んでいます。日本人らしい英語を作り、この現状を変えていくことが私の使命だと考えています。改革の一環として多様な国から留学生を受け入れ、さまざまな英語に触れることで、生徒が自分なりの英語を話せるようにしていきます。3年後には留学生が学校全体の2~3割を占める体制を作りたいと考えています。日本人も国際人であり地球人ですから、日本の良さを発信し、魅力を伝えることができる若者を育てていきます。

―受験生へのメッセージをお願いします。

マルケス 今の日本には自分が本当にやりたいことを見つけられない人が多くいます。そのような受験生はぜひ本校に入学して、自分の世界を見つけてほしいと思います。学校は失敗をしていい場所なので、失敗を恐れずに自分の進むべき道を自分で見つけてください。また、人を傷つけないのであれば、他人に自分の未来を左右される必要はありません。正解は自分にしかわかりませんから、自分を信じて、自分の手で未来が変えられることを学んでほしいと思います。

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