親子ともに「よい受験」を終えるために必要なことは何か?〜実力派の地域密着塾に聞く、中高受験のノウハウと塾の役割〜(後編)

中学・高校情報 取材:松本 陽一 文:ライター 林 郁子
親子ともに「よい受験」を終えるために必要なことは何か?〜実力派の地域密着塾に聞く、中高受験のノウハウと塾の役割〜(後編)

近年、首都圏を中心に私立中学受験熱が高まっています。コロナ禍におけるオンライン授業の取り組みや、変化する大学入試への対応が評価されているからです。さらに高校受験でも、修学支援金の拡充が後押しし、私学人気が高まっています。そうした中、受験生個々に、志望校選択の適切なアドバイスをおこない、中学、高校受験で毎年着実な成果を上げているのが、千葉県八千代市にある学習塾、日米文化学院です。同塾の代表である柳田浩靖先生と、総務主任として子どもたちや保護者への受験対策にあたる柳田真衣先生に、入学後の成長をも見据えた「よい受験」とは何かをうかがいました。前後編の後編では、「よい受験」のために大切な、学校選びと塾選びについてお話を聞きました。

志望校選びは子どもの意思を大切にする

―志望校選びは、いつくらいから始めるのがよいのでしょうか。中学校受験、高校受験それぞれについて教えてください。

柳田(浩):今、中学受験準備は早期化しています。文化祭などに小学校1、2年生の子どもを連れて参加する保護者の方もいらっしゃいますが、親が行かせたい学校の刷り込みになってしまわないように気をつけたいですね。志望校選びはあまり早すぎても意味はありません。

柳田(真):これまでの経験から、生徒たちは5年生くらいになると、自然と自分の将来のことを考え始めるという印象です。「友達と同じ学校にいこうと思っていたけれど、自分はそれで本当にいいのかな」と見直す。特に女子はその傾向が強いですね。


柳田(浩):志望校選びの時期は、塾の方針によってもかなり異なると思います。当学院は比較的遅い方ですね。大まかな目標設定は、5年生の後半ですが、受験戦略も含めて確定するのは6年生の年明けになる子もいますね。それは、親が決めるのではなく、受験する本人の意思で決めなければいけないと考えているからです。「親が言ったから」で決めてはいけない。そのためには、できるだけ、本人がいろいろな中学校に足を運んで、直接学校を見る機会をつくるようにしてほしいですね。


それは高校受験でも同じです。高校受験でも、学校見学をして、自分で決めるようにする。時期としては、難関私立を受験するなら中学3年生の早い時期に決めておくのがベストでしょう。しかし、それ以外の場合は夏休み以降に第一志望を決めるケースも多いです。当学院も所属する千葉県学習塾協同組合主催のスクールフェアという相談会は例年10月に行っていますし、最後の三者面談まで考えて、納得のいく志望校選びをして欲しいです。


柳田(真):注意したいのは中学受験をする小学生男子ですね。保護者の方から「中学校見学のあと、感想を聞いても『別に』としか言ってくれない」なんてお話をよく聞きます。なかなか言葉にしてくれないんです。だから保護者の方には、学校見学の時は、「学校を見ることも大事だけれど、子どもさんの様子をしっかり見てください」と伝えます。口には出さなくても、内心で「いいな!」と思っていたり、興味を惹かれたりしているところを、見てほしいんです。あとは、「親の意見を押し付けない」。直接、「ここにしなさい」と言わなくても、親がマイナス意見を言うことで、子どもが自分の意見を言えなくなってしまうことがありますから、気をつけたいですね。


柳田(浩):親の立場としては、引き算で学校を選ぶのではなく、よい点をたくさん見つけて、そのうえで、トータルしてよい学校というものを見つけてほしいですね。中学、高校、だけでなく大学も含めた全ての志望校選びに言えることですが、「100%よい学校」というのはありません。何もかも思った通りにはいかないものです。だからこそ、加点主義で学校の良さを総合判断して選ぶことが大事なのです。

一人一人の生徒に合った学校を見極めるのも塾の力

―親子で直接足を運ぶ「志望校選びが」重要とはいっても、学校の数は非常にたくさんあります。まず候補となる学校はどのように選べばよいのでしょうか。やはり偏差値が基準になるのでしょうか。

柳田(真):偏差値も学校選びの基準にはなりますが、それだけでは不十分です。私たちとしては、学校選びにはぜひ塾のアドバイスを活かしてほしいと思いますね。当学院の場合は、地域で長年培ってきた実績とデータがあります。さらに、毎日、生徒や保護者と接する中で、データのように数値化はされないけれど、「この子に合う学校はここだな」というように感じ取れるものがあります。偏差値にこだわらず、生徒に合う学校を、積極的におすすめできるのが当学院の大きな強みですね。現に、当学院の生徒は、第一志望の学校よりも偏差値が上の学校に受かったとしても、行きたい学校を優先する子が多いですね。


柳田(浩):当学院は、中学校受験を終えた後も、引き続き大学受験まで通ってくれる生徒が多くいますし、それ以外の生徒もよく遊びに来てくれますから、それぞれの中学に入学した生徒が、楽しく過ごしているのかどうかを実際に接して理解しています。

もちろん、県内県外の学校説明会にもできるだけ足を運びますし、校長の話などを直接聞く機会もたくさんありますから、保護者の方よりも多くの情報を持っています。
私自身は中学校受験を経験したのですが、当時から受験マニアといえるくらい熱心に各中学校について調べていました。今も、変わらず、生徒に合った学校を見つけることに尽力しています。


―勉強を教えるだけではなく、ソムリエのように多くの学校の中から生徒それぞれに合った学校を見つけ出すことも塾の力の一つだということですね。


柳田(浩):中学受験にしても高校受験にしても、合格して終わりではありません。大切なのはむしろ入学後です。生徒がその学校でいかに充実して過ごせるか、成長できるかということまで考えて、志望校選びをサポートし、その学校に合格できるように戦略立てて導くことが、本当の意味での「よい受験」だと思います。少なくとも、私たちは、そう考えて、いつも生徒や保護者に真剣に向き合っています。

「よい受験」は、子どもに合った塾選びから始まる

―お話を聞いていると、塾によって受験の取り組み方もさまざまなように感じました。


柳田(真):当学院は、少人数ですから、塾と生徒、保護者のコミュニケーションが非常に密だと思います。信頼関係を築くことで、生徒さんに合う学校をおすすめしたり、第一志望に合格するための受験戦略を立てやすくなったりします。多くの場合、保護者の方には信頼して任せていただくことができますが、先にお話したように、都内受験を勧めても保護者の方が「県内の志望校だけでいいのでは」と二の足を踏まれる時があります。そうした時も、データや事例をもとに、根気よく言葉を尽くして説明します。大手の塾の場合なら、そこまで踏み込まないと思いますが、せっかくなら「よい受験」をしてもらいたいという気持ちで、やっています。


柳田(浩):塾によって受験や教育方針は多種多様です。勉強方法についても、私たちは「勉強はできないことをできるようにすること」という考え方で、テストのミスを恥ずかしがるのではなく、生徒が安心してミスできる環境づくりを大切にしています。ミスしたことを認め、自分でできるようにすることが勉強です。だから、最終的には「自学自習」が大切なのです。生徒が自ら学んでいけるように、当学院では授業だけでなく自習のサポートにも力を入れ、自習室も完備しています。

最後に、塾選びは学校選びと同じです。塾の教育方針やスタッフとの相性がお子さんと合う合わないということもあります。ご家庭ごとに、受験に対する方針もさまざまですし、塾に求めるものも異なるでしょう。ネームバリューや口コミだけにとらわれず、きちんと判断していただきたいです。今回のインタビューがお役に立てば幸いです。




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親子ともに「よい受験」を終えるために必要なことは何か?〜実力派の地域密着塾に聞く、中高受験のノウハウと塾の役割〜(後編)

左:柳田浩靖先生 右:柳田真衣先生