2021年度入試状況から読み解く 私立高等学校2022年度入試予測

2021年度入試状況から読み解く 私立高等学校2022年度入試予測

首都圏の私立高校入試は、都県ごとに制度や受験事情などに違いがあります。各エリアの最新の「入試地図」をしっかり押さえて、私立で「成功」を収めるための対応策を的確に取りましょう。2021年度の結果分析を都県別に行い、来春2022年度の「動向」などもご紹介していきます。

東京都 大学付属校で受験者数ダウン 2022年度は「反動」起きるか

東京都内の私立高校は、受験のメインである一般入試を2月10日以降に行っています。一般入試の動向からみていきましょう。

近年(2018年以降)の一般入試では「付属校人気」に“勢い”が見られたのですが、2021年度は大学付属校の「受験者減少」が目立ちました。コロナ下の入試で他県など遠距離からの受験が減ったことも影響したといわれます。

早慶付属校では、早稲田大高等学院は受験者277人減少と急減。ただ合格者の絞り込みで倍率は2.6倍→2.3倍とあまり下がりませんでした。

早稲田大系属早稲田実業学校では男子枠は受験者91人減、女子枠は76人減。倍率はそれぞれ3.1倍→2.5倍、5.0倍→3.3倍に低下。しかし、2022年度には定員が男子枠で約30人減(80人→約50人)、女子枠は約10人減(40人→約30人)となるため、とくに男子枠は「難化」しそうです。

慶應義塾女子は受験者16人減でしたが、合格者を減らして倍率3.3倍→3.4倍と若干上昇。

MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政大)の付属校のなかで受験者減少が目立ったのは、明治大付中野(224人減)、中央大(196人減)、中央大杉並(176人減)、明治大付中野八王子(102人減)、中央大附(81人減)でした。

このなかで、明治大付中野八王子の倍率は5.6倍→4.1倍、中央大杉並は4.0倍→2.9倍と倍率が1ポイント以上ダウンしています。

一方、法政大は受験者増(89人増)となり倍率は2.8倍→3.7倍(繰り上げ合格を含む)に上昇。

ほかの付属校では、東洋大京北(281人減)、専修大附(199人減)、駒澤大(166人減)、日本大櫻丘(71人減)などで受験者が減少。一方、日本大豊山(110人増)ではかなり増えました。

2022年度には、多くの大学付属校で「反動」(受験者増)も予想されるので注意しましょう。

難関・上位レベルの進学校はどうでしょうか。倍率をみると、開成では2.8倍→2.6倍とやや下がり、桐朋も1.4倍→1.3倍と若干低下。城北は1.5倍→1.9倍に上昇。巣鴨では「3科」「5科」の選択制に変わり、倍率はそれぞれ1.6倍、1.4倍となりました。

豊島岡女子学園は2022年度から高校募集を停止し、完全中高一貫校となります。同校のこれまでの受験層は、「同じ試験日(2月11日)だった中央大、淑徳などに流れるのでは」とある受験関係者はみています。

さて、一般入試では「併願優遇」の枠を設ける都内私立が多数あります。都立志望者などが押さえ(すべり止め)の都内校を確保するには、この枠を利用するのが一般的な受験パターンです。

併願優遇とは、その高校を第2志望やそれ以下で受験するときの制度で、各校が定めた内申点の基準などを満たせば、入試前の段階でほぼ合格が決まるなどの優遇措置があります。2021年度は一般募集校182校のうち併願優遇は約145校が実施。

この実施校のなかでは、品川翔英(825人増)、青稜(583人増)、拓殖大第一(367人増)、朋優学院(303人増)などで一般受験者が急増しました。

品川翔英(旧・小野学園女子)は共学化、校名変更を行った2020年度に続き、さらに人気アップ。同校や、青稜では併願優遇を本番試験がない「書類選考」の形式に変更しました。

次に、推薦入試について述べましょう。2021年度に推薦を行ったのは、全体の9割以上の168校です。推薦の試験は1月22日以降に行われます。

都内私立では、単願推薦(第1志望)に加え、他校と併願できる推薦も行う高校がかなりあります(2021年度は約80校)。ただし、併願推薦は埼玉、千葉など都外の受験生のみが対象です。

中堅校などは、単願、併願推薦とも各校の内申基準などを満たせば、中学校を通した12月の「入試相談」でほぼ合格が内定するところが大半です。秋以降の「個別相談会」で推薦や、併願優遇(一般)の合否を打診できる高校も多くなっています。

一方、一部の難関・上位校などの推薦は内申基準を出願条件としており、本番の学科試験、面接などで合否が争われ、2021年度も倍率2倍台〜5倍の「激戦」がみられました。

では、最後に、2022年度の変更点などを挙げておきましょう。星美学園(女子校)は共学化を行い、校名を「サレジアン国際学園」に変更します。

日本大第三は一般入試に併願優遇の制度を導入。日本大第二では一般、推薦の定員を各90人→各105人に増やします。また、東洋大京北は一般1、2回のうち、1回の定員を70人→100人へと拡大。一方、錦城は一般を1回から2回実施に変更、ただし2回(2月12日)では特進コースのみが対象です。

コースなどの変更では、朋優学院が最上位の国公立TGコースを新設。共立女子第二では英語コースを導入します。下北沢成徳はグローバルエデュケーション(GL)、ブロードエデュケーション(BR)の2コース制に改編。昭和第一学園では工学科を募集停止とし、普通科の総合進学コースが文理進学、探究の2クラス制に変わります。

神奈川県 「内申重視」の入試状況が定着 一般で「書類選考」が高人気に

神奈川県の私立高校では、推薦入試は1月22日以降、一般入試は2月10日以降に行われます。

私立第1志望ならば、まず推薦の受験を検討しましょう。2021年度は神奈川の私立56校のうち、50校が推薦入試を実施しています。

県内私立の推薦は単願(第1志望)のみで、本番では学科試験は行わず、面接、作文などが課されます。2021年度はコロナ対応もあって、一部の高校(5校)は書類審査のみとしました。

各高校の内申点の基準などを満たせば、中学校を通した12月の「入試相談」で合格が内定し、1月の本番は無競争(全員合格)という高校が例年、大多数になります。2021年度も、推薦で不合格が出たのは、慶應義塾(倍率は2.0倍)、白鵬女子(同1.2倍・全コースの合計)などわずかでした。

受験のメインである一般入試に移りましょう。

県内私立を押さえ(すべり止め)にするときは、一般入試の「書類選考」や「併願受験」の枠を利用するのが受験パターンの基本となっています。

「書類選考」とは、試験を行わない制度で、各高校の内申基準などを満たして12月の「入試相談」を経れば、合格が決まります(2022年度は制度に変更がでる可能性もあります)。法政大国際、法政大第二の場合は第1志望者のみが対象ですが、それ以外の実施校では公立など他校と「併願可」としています。

2021年度はコロナ下で試験での「密」を避けるため、新たに導入する動きが出て、併願可の書類選考は、県内の実施校が前年(2020年度)の29校から40校に増えました。この受験者は合計で約2万8000人で、前年(2020年)の約1万人から急に膨らんでいます。

すでに近年は「書類選考が受験の中心」という状況の学校や、一般を書類選考のみで募集する学校(湘南学院、捜真女学校など)もあります。

「併願受験」の制度も、各校の内申基準などを満たせば12月の「入試相談」でほぼ合格とされますが、2月の本番試験を受験しないといけません。2021年度は、県内校では書類選考への切り替えが目立ち、併願受験の実施校は約30校に(2020年度は約45校)。そのほか「単願受験」を併用する高校も多くあります。2021年度に併願、単願受験を利用したのは約1万1000人。「書類選考」へ受験生が流れて、前年(2020年度)の約3万1000人から急減となりました。

一方、併願可の書類選考や併願受験を一部の上位校では行っていません。慶應義塾、日本女子大附、桐光学園、法政大国際、法政大第二などです。

上位校の一般入試の状況をみてみましょう。2021年度に倍率が高かったのは、法政大第二の「学科試験」(男子枠4.1倍・女子枠3.2倍)、中央大附横浜のB方式(3.6倍)、山手学院のオープンA(3.5倍)、日本大のオープン(A2.6倍、B3.4倍)、法政大国際の「学科試験」(3.0倍)、「思考力入試」(2.5倍)、日本女子大附(2.5倍)、桐蔭学園のA方式(2.4倍)など。このなかで、日本女子大附は「専願」制度を新設し、受験者が103人増となり倍率は前年(2020年度)の1.2倍から相当に上がりました。

県内最上位の慶應義塾では受験者124人減で、倍率は2.6倍→2.2倍に低下。2022年度はこの反動(受験者増)に注意しましょう。

さて、一般の「オープン入試」を利用するパターンもあります。先の併願制度の実施校では、内申を使わず本番のテストで合否を決める枠がオープン入試と総称されています。2021年度は、この実施校は33校に。“内申本位”の併願制度で確保した学校より「『上』を狙いたい」といった場合はオープン入試でチャレンジするのもよいでしょう。

では、2022年度の変更点にふれておきましょう。

関東学院は2022年度に限り高校募集を休止します。光明学園相模原では一般の書類選考(併願のみ)を新たに総合コースにも導入。

アレセイア湘南はこれまでの3コースから特進、探求の2コースに改編します。藤沢翔陵では普通科を文理融合探究、得意分野探究の2コースに変更。湘南学院では、サイエンス(特進理数)、アドバンス(特進)、アビリティ(進学)、リベラルアーツ(総合)の4コースに変わります。

埼玉県 「1月併願」メインの受験地図 個別相談で合否の見通し得て

埼玉県の私立高校入試は1月22日以降に実施されます。例年、「初日」(1月22日)からの数日間に、県内私立の大半が併願入試(併願推薦)を2、3回行っており、この1月の併願入試が受験のヤマ場というのが埼玉私立の「入試地図」です。

1月の併願入試とは、3月の公立・合格発表まで他校との併願が自由で、さらに、本番前の「個別相談会」で合格がほぼ判明する“優遇”があります。このため、とても利用しやすく、毎年、受験生は1月併願の枠に集中しています。

2021年度も、県内私立の総応募者数のうち、1月併願入試が約75%と大半を占め、単願入試(単願推薦)は約17%、一般入試は約8%でした。

この1月併願で押さえ(すべり止め)の県内校をしっかり確保。そのうえで、公立やさらにレベルの高い私立にチャレンジという受験パターンが埼玉では「定番」になっているのです。

県内私立47校のうち、1月併願の制度がないのは、難関校(慶應義塾志木、早稲田大本庄高等学院、立教新座)や、音楽系高校(東邦音楽大附東邦大第二、武蔵野音楽大附)など少数です。

1月併願入試、または単願入試を受験するときは各私立で夏〜秋以降に開催される「個別相談会」に必ず出席しましょう。この場で、模試の結果や内申点(通知表のコピー)などを提示すると、私立側が併願、単願入試の合格の可能性を話してくれます。その手ごたえが今ひとつの場合でも、模試や2学期の通知表で成績が上がったら、また個別相談に行ってみるとよいでしょう。

2021年度に、併願、単願入試など全体の受験者がかなり増加したのは、西武台(563人増)、春日部共栄(462人増)、花咲徳栄(289人増)、細田学園(266人増)、正智深谷(213人増)、星野・共学部(209人増)などでした。

一方、難関校では「個別相談型」ではない推薦入試(第1志望)、一般入試を実施しています。

2021年度の一般の状況をみてみましょう。早稲田大本庄高等学院の男子枠は受験者が327人減と急減、女子枠では74人減。倍率はそれぞれ3.4倍→2.4倍、4.0倍→3.2倍にダウン。2022年度は、とくに男子枠で反動(受験者増)が起きそうです。

慶應義塾志木は受験者166人減で倍率3.5倍→3.1倍に低下。立教新座でも受験者は206人減、倍率2.3倍→2.0倍と下向きました。コロナ下の入試であり、これら難関校は他の都県などからの受験が減ったともいわれます。

2022年度の変更点を挙げておきましょう。

栄東では3回の入試のうち、特待生選抜(1月25日)を3科または5科の選択制に変更、最上位の特待S合格はこの特待生選抜のみで出されます。

コースなどの変更では、淑徳与野は希望進路別の類型制を新たにT類、SS類、SA類、R類(単願のみ)、MS類(単願のみ)として募集します。

山村学園は、特別選抜SA、特別進学EL、総合進学GLの3コース制に改編。聖望学園では1年次を特進、進学の2コースに改め、両コースとも選抜、一般の2クラス制とし、2年次以降は3コース制に移行します。

千葉県 前期の定員比率が98%に!「前期勝負」で合格の確保を

千葉県の私立高校入試は「前期・後期選抜」の枠組みです。試験は、前期では1月17日以降、後期は2月15日以降に行われます。

2021年度に県公立入試が「1回化」され日程も変わったことに対応し、後期は2020年度まで(2月5日以降)より10日遅く設定されています。

ただ、千葉の私立入試は「前期勝負」の状況であり、県公立の「1回化」や後期が遅くなったことで後期の“需要”はさらに少なくなりました。

2021年度は、新たに12校が後期の枠を廃止(千葉聖心、不二女子、和洋国府台女子、植草学園大附、光英VERITAS、専修大松戸、千葉商科大付、千葉日本大第一、東海大付市原望洋、東京学館、東京学館船橋、日本大習志野)。一方、東葉は後期の募集を再開。県内私立53校のうち、後期の枠がない、前期のみの高校は37校に増えました。

とくに上位レベルの高校では、後期の実施校がほぼなくなったことに注意しましょう。

後期を実施した高校でも、大半は前期に定員が大幅に偏っています。後期の定員を若干名としたところも(4校)。県内私立の全体では、前期の定員比率が98%(2020年度は96%)に上がり、後期はわずか2%(同4%)となりました。

受験生の側も、同様に前期へ集中しています。2021年度は、県内私立の総応募者数のうち、前期が占める割合は約99%(途中集計値・2020年度は約97%)にのぼりました。

このように、県内私立は「前期決戦」の入試状況ですから、そのなかで「前期で合格を勝ち取る」ことが一般的な受験作戦です。

さて、中堅レベルの高校などは、前期の推薦(単願、併願)が受験の中心で、とくに併願推薦(第2志望以下)に多くの受験生が集まっています。

単願推薦(第1志望)、併願推薦は、ともに各校の内申点の基準などを満たせば、中学校を通した12月の「入試相談」でほぼ合格とされるところが中堅校などは大半になっています。

推薦のほか、前期の日程で一般の試験も行う高校が多くなっており、推薦の内申基準に届かないときは、その学校を前期の一般(単願・併願)で狙うのもよいでしょう。

前期の併願推薦で押さえ校(すべり止め)を確保して、公立や私立上位校にチャレンジという受験パターンは広く普及しています。

一方、一部の上位レベルの高校では「テスト勝負」の一般のみを実施という形です。

おもな難関・上位校の2021年度の動向をみてみましょう。県内最上位の渋谷教育学園幕張の「学力枠」では受験者はわずかに増加(9人増)、合格者の増員により倍率は2.5倍→2.4倍と若干下がりました。市川の一般は受験者減(83人減)などで倍率1.8倍→1.5倍に低下。昭和学院秀英(前期)でも、受験者減(27人減)などで倍率は2.2倍→1.9倍とやや下がっています。

なお茨城県では、江戸川学園取手は一般を1月に2回実施。倍率は、医科コースが1回3.0倍、2回2.5倍。東大コースが1回3.0倍、2回2.6倍。難関大コースでは他コースからのスライド合格を含めると1・2回ともに1.2倍でした。

2022年度に千葉私立では、市川が一般(帰国生を含む)の定員を85人→90人に増やします(推薦の定員は35人→30人に削減)。千葉日本大第一では特進クラスに限り、新たに併願推薦を導入します。

敬愛学園は特別進学、進学の2コース制に変わり、特別進学コース内に選抜クラスを設けます。市原中央では芸術コースを募集停止に。その一方、木更津総合が美術コースを新設します。