大学受験 入門講座
2020大学入試はこうして行われる!

入試

AO入試は93年まで1校しか実施していなかった。90年に慶應義塾大学が始めた方式だ。それが近年、実施校が急増し、17年は国公私立大あわせて554校が実施した。2001年以降増えており、まさに「21世紀型の選抜」といっていいだろう。AOとはアドミッションズ・オフィスの略で、アメリカの大学で行われている一般的な選抜方式である。

AO入試は入学を希望する受験生と大学が面接を通して、お互いに納得して入学する、させるという方式。推薦入試での高等学校長の推薦や出願の基準である高校在学中の成績基準などは設けられていないのが普通だ。

ただ、高校でのクラブ活動、ボランティアなどの社会活動の取り組みなどが求められる。自己推薦に似ているが、入試の中心は複数回実施する面接。なかには小論文や学科試験を課す大学もある。

面接では「高校時代、何をしてきたか」「この大学・学部を選んだ理由は」「大学に入学したら、何をしたいか」などを聞かれるのが一般的だ。自分をさらけ出す選抜になるため、自分をどうアピールできるかが合否の分かれ目になる。

ただ、推薦やAOの選抜では科目負担が軽いため、学生の学力低下の一因との指摘がある。そのため、調査書の提出を求めたり、国公立大ではセンター試験の成績が必要な大学が増えている。

16年には東京大学が推薦入試を、京都大学が推薦・AO入試などで選抜する特色入試を、それぞれ初めて実施して大きな話題になった。学力試験だけでは計れない、卓越した能力を持つ多様な生徒を獲得するのがねらいだ。

さらに17年は大阪大学が後期日程を廃止して「世界適塾入試」という推薦・AO入試を導入して注目を集めた。東北大学では18年、医学部保健学科、薬学部、工学部、農学部で一般入試の募集人員を減らし、AO入試を増員したが、19年入試では文学部、法学部、理学部、医学部医学科でも同様の改革を行った。私立大だけでなく国立大でも推薦入試やAO入試の比重が高まっている。

一般入試は国公立大と私立大では大きく異なる。国立大の入試では、同じ大学で前期と後期2回入試を行うのが一般的だ。多くは前期のほうが募集人員が多く、後期は少なくなっている。

前期で合格し入学手続きをとると、後期を受験していても合否判定から除外される。19年で見ると前期は2月25日から始まり、合格発表は3月10日までに終わる。後期は3月12日から入試が始まる。前期の入学手続き締切日は3月15日だ。

出願は1月22日〜1月31日までに統一されており、前期の結果を見てから後期に出願することはできない。後期は前期の敗者復活戦の入試になり、最初の出願時には大変な倍率になるが、実際の受験者数は少なくなることが多く、学部・学科によっては競争率が1倍台のところも出てくる。

最後まで諦めないで粘ることが大切だ。さらに、最近では後期を廃止する大学も増えている。東京大学は前期のみになったし、学部や学科によって前期をやめる大学も増えている。そうなると、その大学を受験するチャンスは1回だけとなる。

一方、公立大は国立大と同じ入試システムだが、前後期の他に中期を設けている。これは3月8日から始まる入試で、大学によって中期を実施する大学と実施しない大学がある。

国公立大の合否判定はセンター試験の成績と、大学で行う独自の2次試験の得点の合計で行われるのが一般的。しかもセンター試験の重みが高い大学、学部のほうが多く、センター試験の出来、不出来が合否を左右する場合が多くなっている。

ただ、国立大でも難関大では大学独自の試験の重みのほうが高くなっている。東京大学ではセンター試験110点満点に対して2次が440点満点の計550点で合否判定する。例えば、東京大学・文科Ⅰ類の18年の合格最低点は354.9778点だ。

英語のリスニング(50点満点)を除いた900点満点のセンター試験の成績を110点に圧縮するため、端数が出てくるわけだ。センター試験の問題の配点が2点の場合、これを落とすか正解するかで0.2444点変わるから、この差で不合格になる場合も出てくる。

また、東京大学は学科類で実施するが、その他の大学でも学部ごとにセンター試験の成績で2段階選抜を行うケースがある。2次試験の受験者を募集人員の5倍などに制限している大学があり、センター試験の成績だけで門前払いにされてしまうことがある。

前述の通り、私立大は同じ大学、同じ学部でも複数回入試が行われており、何度受けてもかまわない。複数の合格校の中から、入学する大学・学部が決められる。

私立大では近年、入試の多様化が進んだ。受験生を多角的に評価しようという狙いで、数多くの方式が実施されるようになっている。「地方試験」を実施する大学も多い。これは大学所在地と異なる地方に試験場を設け、わざわざ大学まで受験に行かなくてもいいようにするものだ。

これ以外にも「試験日自由選択制」がある。これは例えば、3日間同じ学部で試験を実施し、他大学との併願のことを考え、都合のよい日に受験すればいいようにしたもの。どうしてもそこに入りたければ、3日間連続して受けていい大学もある。合格発表は1回で、偏差値法を使って判定し、問題の難易で差がつかないように工夫されている。また、センター試験の成績だけで合否が決まる「センター利用入試」や、センター試験の成績と大学での試験の成績を合計して合否判定する「センター併用方式」などもある。

さらに最近増えているのが「全学部統一日程試験」だ。同志社大学、立教大学、明治大学、法政大学、青山学院大学など多くの大学が実施している。これまで学部ごとに行われていた入試を、1日で全学部(文系全学部のみなどの場合もある)の入試を実施するという方式のことだ。今まで難関大では受験機会が少なかったが、これにより受験機会が増え、人気を集めている。

また、英語の外部試験を利用した入試も増えている。15年に上智大学がTEAP(アカデミック英語能力判定試験)利用入試という英語の外部試験を利用した全学部型の入試を実施して志願者を増やした。16年には東京理科大学、青山学院大学、立教大学、法政大学、立命館大学、関西学院大学などが、17年には早稲田大学や中央大学、明治大学などが同様の入試を実施するなど、急速に広がっている。

多様化しているのは入試だけではない。キャンパスの新設や移転なども積極的に行われている。

首都圏では、17年に東洋大学が東京・北区に赤羽台キャンパスを新設し、情報連携学部、国際学部、国際観光学部を新設した。また19年は、桜美林大学が東京・新宿区に新宿キャンパスを開設し、町田キャンパスからビジネスマネジメント学群などを移転した。

西日本では、17年に大阪工業大学が大阪都心の大阪市北区に梅田キャンパスを開設し、ロボティクス&デザイン工学部を新設した。18年には常葉大学が、静岡市に学生数4000人規模の静岡草薙キャンパスを新設し、静岡瀬名キャンパスの教育学部と外国語学部、富士キャンパスの経営学部、社会環境学部、保育学部などを一斉に移転するという大規模な再配置を行った。

いずれも利便性の高い場所にキャンパスを新設し、教育資源を集中させることで、学生の学びやすさや、学部間の連携の向上を図っている。

このような学部・学科の移転、都心キャンパスの新設など、ダイナミックな大学改革は今後も続くとみられる。

■入試トピックス③
国公立大入試
19年のセンター試験の平均点は、文系・理系ともに平均点がアップ、特に文系の上がり幅が大きかったようだ。これにより人文・社会系の志願倍率(志願者数÷募集人員)は前年の4.9倍から5.1倍に上がった。理工系は4.4倍、農・水産系は4.1倍で前年と変わらなかった。
受験生の安全志向と地元志向が根強く、公立大の志願者が増えている一方、国立大の志願者は減少を続けている。
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