人気高まる私立小の平成最後の入試は志願者増

教育 大学通信 安田 賢治
人気高まる私立小の平成最後の入試は志願者増

小学校受験熱が高まってきている。少子化の中で志願者が年々増えているのだ。有名大学付属小だけでなく、私立中進学に力を入れる小学校も人気になってきているという。新設校もある今年度の小学校入試はどうだったのか。

文部科学省の学校基本調査によると、2018年の全国の私立小学校1年生は1万3203人で、2017年より1.3%増加した。全体の小学1年生の児童数は、前年より1.8%減少しているのだから、私立小進学者が増えていることは明らかだ。

東京の小学校入試は11月1日から始まる。小学校受験の専門サイト「お受験じょうほう」を運営するバレクセルによると、昨年比が判明している首都圏。近畿圏の主要61校の志願者数を合計すると、昨年比1112人、6%も増えている。バレクセルの野倉学社長がこう話す。

「私立小の人気が高まっているのは、景気回復によって富裕層が増えていることがあります。それに加えて、一人っ子の家庭が増え、教育にお金をかけることができるようになった層が、小学校受験を目指しています。この新しい層では、かつての小学校受験というと、慶應、早稲田、学習院、青山学院などの大学付属小受験がセオリーでしたが、今は昔ほどの人気ではなく、自分の価値観で志望校を選ぶ傾向が強くなってきており、学校選びが多様化しているのが特徴です」

小学校受験の人気アップの理由は、それだけではない。私立小の新設が相次いでいることも影響している。昨年の私立小は全国で231校だが、10年前と比べると25校増えた。この間、人気私立大が小学校を積極的に新設してきた。慶應義塾大が横浜初等部、関西では関西大と関西学院大に初等部が新設された。この他でも、京大や医学部への進学に強い洛南が小学校を新設した。

平成最後に開校した東農大稲花小が人気

今年は東京農業大稲花小が大学の世田谷キャンパスのそばに新設される。初年度入試の志願者は男女あわせて865人で、倍率も男女とも10倍を超える人気だ。野倉さんは「東京農業大が新設したということで、新しい教育への期待もありますが、併設の東京農大第一中が東京の共学私立中ではトップクラスで、中学への進学にも魅力ということもあります」と言う。

他でもアフタースクールが充実していることも、私立小人気の理由だ。アフタースクールとは、放課後、子どもを学校が預かり、個性を伸ばすプログラムを受けさせるものだ。これによって下校時間が遅くなり、保護者が子どもを学校に迎えに行くことへの無理がなくなる。共働きの家庭でも通わせられることから人気が高い。

今年度の小学校入試では、志願者が増えた学校が目立った。注目されるのが、青山学院大学の系属校となった浦和ルーテル学院小だろう。第3回を除いているものの、もう昨年の倍以上の志願者数だ。今年度の小学校入学者から、高校を卒業する2031年に青山学院大に優先進学できるようになったことで人気となった。

大学付属小の人気は以前ほどではないというが、それでも成蹊小、成城学園初等学校、日本女子大付豊明小など、根強い人気の学校も少なくない。小学校教育の評価が高いことが理由とみられる。なかでも成城学園初等学校は、学園全体として理数教育、英語教育に力を入れる方針のもと、初等学校では基礎、基本を身につける教育を展開していくという。

進学に優位な難関中高併設の小学校も人気

大学付属小に代わって、人気になってきているのが難関中併設の小学校だ。難関の中学受験を避け、小学校から入学するという考えが広まっているのだ。その典型が暁星だという。中学入試の人気校で、小学校のあるところは少なくない。昔からあるところだけでなく、近年では京都の洛南、埼玉の進学校の開智、栄東などのさとえ学園、西武学園文理なども小学校を新設した。

他にも中学受験に実績を残している小学校も人気だ。宝仙学園、目黒星美学園、東京都市大付、洗足学園など。公立小では一切中学受験の面倒を見てくれないが、私立小は熱心なこともあって人気が高い。特に小学校は共学だが、併設の中学校が女子校の場合など、男子は必ず他の中学に進学することになる。その時にはやはり国公私の一貫校を受験する。そのため、中学受験の面倒をしっかり見ているようだ。昨年の洗足学園小の中学受験の実績を見ると、筑波大付駒場2人、開成、慶應義塾中等部、聖光学院各4人、桜蔭3人、女子学院1人、豊島岡女子学園6人などだ。難関有名中に多数の合格者を送り出している。小学校は共学だが、併設の中高は女子校だ。女子は私立中受験に失敗しても、洗足学園中に進学できることも大きな魅力だ。

近畿圏は首都圏と異なり少数激戦の入試

一方、近畿圏はどうか。倍率を見ると、ほとんどが1倍台で、首都圏よりも低く入りやすいようだ。追手門学院小の井上恵二校長に話を聞いた。

「少子化の影響で志願者は増えていませんが、昔から関西の私立小は少数激戦の入試で、倍率が高くなることはなかったですね。追手門学院小は中学受験がメインで、公立小との差別化を図っています。5年生から教科担当制をとり、専門性をもって中学受験に対応しています。主体性を育むことにも力を入れ、グローバル教育は開学の130年前から行い、ICT教育も取り入れ、3年生以上にはタブレットを持たせ、調べ学習などに活用しています。人格形成も大切な時期ですから、人から認められるような人になってほしいと思います」

2020年から学習指導要領が変わり、小学1年生からプログラミングの授業が始まる。5、6年生では英語が外国語科として、算数や国語と同じ教科になる。教育内容の変化に柔軟に、しかもすばやく対応してきたのが私立小だ。学費の問題はあるが、小学校受験も視野に入れてはどうだろうか。