大学学部学科選び入門
農学・水産学・獣医学 系統〜農、畜産、獣医、水産学部など〜
21世紀に入り、環境汚染や人口の増加による食料不足、エネルギーの枯渇など地球規模の課題が山積しています。こうした課題の解決に向け、生命・食料・環境に焦点を当てた最先端の研究が行われています。
食糧・環境・生命の実学を学ぶ
農学は人類が生きていくために必要なことを学ぶ実践的な学問です。食料・環境・生命に関する教育・研究が行われています。
大きく分けると、農作物の生産について専門的に学ぶ農学のほか、森林科学、水産学、畜産学、獣医学の5分野に分けられます。農学部を擁していても、これらの領域をすべて網羅している大学は多くありません。
農学分野には農作物の栽培技術を磨く農業生産科学、バイオテクノロジーや最新のサイエンスを学ぶ農芸化学、流通・経済活動を学ぶ農業経済学、農業を機械工学・土木工学の視点から学ぶ農業工学など、多彩な領域があります。なかでも土壌や肥料、農薬、環境修復など、農業生産の諸問題を化学の力で分析・解明する農芸化学は、バイオサイエンスとバイオテクノロジーへと発展し、理学系統の学問と同様、遺伝子操作や植物の品種改良など生命科学系の学びへと進化しています。
カリキュラムは実験や実習が多く、学内外の実習用の農場などでは、農作物の栽培をはじめ、農業機械の使い方などについて実体験を通して学べます。
森林科学は、森林の役割や利用法を科学的な視点から考えていく学問です。森林には木材を生産する以外にも、地球環境に作用する大きな機能があります。この分野では豊かな森林資源を持続的かつ計画的に利用していくためにはどうすればいいかを4年間を通して考えていきます。
自然科学と社会科学の幅広い分野を総合的・複合的に学ぶとともに、森林の適正な享受と環境保全の両方の視点を養います。広大な演習林を持つ大学では野外実習や調査、フィールドワークの機会が豊富です。
また、森林が持つ多様な生態系と環境の関わりを生物学的に追究していくために、生命・環境・資源・国際などの関連分野と連携した最先端の研究が進められています。
畜産学は、動物を科学的に追究し、食の安心・安全を支えていく学問です。クローン技術や新たな飼料資源の開発など、学びのフィールドが広がるにつれて、生命科学系の学問との関わりが強くなっています。
牛、豚、鶏、羊、馬などの飼育や生殖のメカニズム、畜産物の生産技術について幅広く学べるカリキュラムが整っています。また牛乳や卵、肉、加工品といった畜産食品、皮革製品や毛織物、医薬品の生産など、多様な分野で生かせる知識が身につけられます。酪農体験や牛の分娩体験など、家畜と接する実習が多いのもこの分野の大きな特徴です。
一方、獣医学科は医学部、歯学部と同じ6年制課程で学びます。獣医師養成に特化したカリキュラムが特徴です。
獣医師は人間の生活や暮らしに密着した伴侶動物(ペット)や産業動物、野生動物などに関する高度な知識・技術を持つ専門家です。各動物の疾病の診断・治療・予防などの動物医療に携わります。動物と人との関係が多様化する中、人間と動物に共通する伝染病の研究をはじめ、生命科学、医学、薬学、生化学などの境界領域も担います。獣医学科では動物に関わる分野について多角的に学べます。各大学には附属の動物病院や臨床実習施設が付設され、実験・実習を数多く実施しています。講義で学んだ理論を実践力へと結びつけていきます。
また、6年制の獣医学科のほか、動物の看護や福祉などについて学べる4年制の学科もあります。
水産学はいまだに未知の領域が多い水生生物や環境について多面的に考えていく学問です。水域の食糧生産に関わる分野から、水域生態系の評価・保護・改善・修復・共生といった環境保全分野まで、幅広く学べます。
生命科学や生態学、生理学、養殖学、育種学、遺伝子操作、環境学など、化学や生物学を基盤とする多彩な科目により教養を深め、多面的な視点を養います。この分野は国際性の高い分野で、国際的な視野を養う科目も充実しています。
実験や演習を重視している点も大きな特徴です。実習船で漁業実習や海洋観測、潜水調査、人工衛生から送られてくるデータを用いた海域の環境解析、有機物・無機物のデータ収集といった作業を体験します。
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