22年中学入試最終予測(後編)

中学・高校情報 情報編集部
22年中学入試最終予測(後編)

受験生増加で激戦継続 学校選びは多様化が進む

1月から本格的にスタートする首都圏の私立中入試。コロナ禍2年目の2022年入試も私立中高一貫校の人気は高く、学校選びも多様化しています。ここでは、22年入試予測と注目校、入試の際に気をつけたいことなどについてお伝えします。

学校の個性を見極めて子どもに合う学校を選択しよう

私立には学校独自の個性があります。6年後の大学進学を考え、大学合格実績で学校を判断する人もいますが、それは一つの尺度に過ぎません。多様な価値観で学校の個性を見極めて、子どもに合う学校を選択してほしいと思います。

例えば、女子美術大付には独創性やプレゼン能力などを養う美術系ならではの教育があります。美術系の学校で6年間学ぶことで、将来の職業選択の幅が狭まってしまうかもしれないと不安な保護者もいるかもしれませんが、最近は一般企業でも多様性が重視されており、同校の卒業生も多くが一般企業で活躍しています。何より楽しい雰囲気で過ごしやすい。このことも人気を集めている理由です。

今春、東京工業大の総合型選抜で現役合格者を出した足立学園も注目が集まっています。学校生活を楽しみながら、自己肯定感を高めていく教育があります。地下に300人収容できる大自習室があり、そこで自ら学ぶ姿勢も身につけられます。

22年に共学化・校名変更するサレジアン国際学園。男女別学が多いカトリック系の学校の中で、首都圏では珍しい共学校の誕生です。敷地内に教会があり、帰国生向けのクラスも設置されます。広尾学園開智日本橋学園かえつ有明などのように、帰国生が多く集まる学校は一般生にも人気になる傾向があります。帰国生から良い刺激を受けながら、英語力を伸ばしていける環境があるからです。また、帰国生の保護者のネットワークは強力なので、良い学校であればその噂は一気に広がっていきます。サレジアン国際学園も帰国生が集まるようになると、さらに変わっていくでしょう。千代田国際も募集を開始します。

インターナショナルスクールが敷地内にあり、グローバルな雰囲気がある文京学院大女子。近くにある広尾学園小石川の難度が上がった影響を受けて、注目が集まりそうです。

付属校の人気動向と進学校の高大連携教育

人気が堅調な大学付属校ですが、サピックスの模試の状況をみると、22年入試から募集人員が減る早稲田実業学校は志望者が減少傾向です。一方、慶應義塾湘南藤沢は一時期、募集人員が減ったことで敬遠されていましたが、人気が戻ってきています。また、21年から女子の受け入れが始まった芝浦工業大付も高人気です。

付属校の中で、全体的に志望者が増えているのが日本大系の付属校です。日本大には文系・理系合わせて多くの学部があり、幅広い進路を実現できるため、途中で進路希望が変わっても対応しやすい。また、子どもが勉強に熱心でないなら、高校受験で大学進学実績があまりよくない公立高に進むより、中学の段階で日大系の付属校に入学したほうがいいという保護者の判断もあるのでしょう。

大学の学びに早くから触れられることも、付属校の魅力の一つです。ただ、最近は高大連携を進めている進学校も増えています。特に女子校と共学校は高大連携教育に積極的です。例えば、吉祥女子では東京農工大学、東京外国語大学、東京学芸大学、国際基督教大学、順天堂大学と協定を結び、早くから文理の垣根を超えた学びとその奥深さに気づく機会を提供しています。


一方、一時期人気が高かった公立一貫校は敬遠傾向が見られ、国立大の付属校に人気がシフトしてきました。筑波大付お茶の水女子大付筑波大付駒場に加え、東京大付の志望者が増えています。東京大付は国立では珍しい中等教育学校で、難度もそれほど高くなく、教員の質も環境もいい学校です。

22年入試から都立の中高一貫校や国立大の付属校では、提出書類の報告書に外国語が加わりましたが、家庭科や体育などと同じ扱いなので、入試に影響はないでしょう。

コロナ禍で変わった入試広報と海外研修

コロナ禍で対面型の説明会・相談会が中止になる中、ウェブサイトを充実させたり、動画による説明会を行うなど、オンラインを積極的に活用する学校が増えました。オンラインによる説明会は、距離や時間を考えずに、気軽に参加できると好評です。また、大規模な説明会ではなく少人数制のミニ説明会を入試の直前まで実施する学校も目立ちます。ミニ説明会はアットホームで質問しやすい雰囲気があり、教育内容も伝わりやすい。参加者からは、大規模の説明会より学校のことをよく知ることができたという声もあります。

ただ、合同相談会などが減ったことで、学校を知る機会が減ったという意見もあります。いろんな学校の情報を集めるのが難しく、第3志望以下の学校は偏差値やイメージだけで学校を選んでしまう人も多かったようです。そうなると、幅広い世代に知られている伝統校は知名度がある分、志願者を集めやすい。跡見学園山脇学園実践女子学園などの伝統校人気の復活は、こうしたことも一因です。

一方、入試についてはほとんどの学校がこれまで通りのスタイルで実施していますが、帰国生向けの海外入試などではオンラインを導入した学校もあります。課題を事前にメールで送り、面談はZOOMなどで行うといったオンライン入試が広がることで、世界中のどこにいても入試を受けられるようになります。今後、帰国生入試はオンラインが主流になっていくかもしれません。


コロナ禍でも、私立校ではオンライン授業を導入するなど、教育の機会を生徒から奪うことなく柔軟に対応しました。中止になっている海外研修などについても、現地に行くことが難しくなった分、オンラインでの取り組みが広がっています。オンラインでも、世界の大学と交流でき、最先端の学問に触れられます。イートン校でのサマースクールなど、国際教育に力を入れている巣鴨は、現地に行かなくても海外を身近に感じられる取り組みを実施しました。

これまでは参加者の枠が制限されていた海外留学なども、オンラインによって、より多くの生徒が参加できるようになるかもしれません。ICTの活用が進むことで、コロナ後の海外研修はさらに充実したものになりそうです。

追試を行う学校も入試で注意したい点

さて、1月から本格的にスタートする私立中入試ですが、本番直前に体調を崩さないようにすることが何より大切です。ただ、入試直前に新型コロナウイルスなどに感染した受験生を対象に、追試を行う学校もあります。開成は2月23日に追試を実施。また、神奈川では聖光学院中央大横浜桐蔭学園など、多くの私立校が参加する共通の追試を2月21日に行います。栄光学園桐光学園などのように、共通の追試には参加せずに独自に追試を行う学校もあります。

ここまで、大手塾の模試の志望状況から22年入試を予測してきましたが、入試動向は入試直前に大きく変わる可能性があります。窓口出願が主流だった頃は、大半の受験生が願書受付開始直後に出願していましたが、今はほとんどの学校がWEB出願です。WEB出願の場合、多くの人が第一志望の学校を受験する1日入試以外は、合否をみてから出願を決めるので、出願の締切日に志願者が殺到することがあります。毎年、ギリギリまで出願を迷った挙句、締め切りに間に合わない人もいるようです。また、せっかく合格しても入学手続きをし忘れて、入学の権利を失ってしまう人もいるようですから、出願や入学手続きの際は、余裕を持って行動しましょう。