2011年と2021年の大学合格者数を比較 伸びている学校はここだ! 総合第1位は東京都市大付!慶應義塾大、明治大でトップなど複数の難関大学でランクイン。厚木、洗足学園、横浜翠嵐が続く
東大合格者を増やす中高一貫校 地方は医学部志向強し
入試環境が変わる中で伸びている学校はどこなのでしょうか。ここに掲載した表は、10年前と今年の大学合格者数を比べ、増加人数が多かった首都圏の学校のランキングです(ただし表2、表3は全国の高校を対象としています)。
表1 東大合格者が増えている学校 上位20校
それでは表1の東大合格者が増えている学校から見ていきましょう。ランキング上位23校中、13校が中高6カ年一貫教育の私立校となっています。
トップは41人増の横浜翠嵐です。神奈川の公立校は、以前は低迷が続いていましたが、05年の学区の撤廃や07年の学力向上進学重点校の指定、一貫校の設置など大きく改革が進められ、進学実績をアップさせてきています。同様に、東京も都立校を進学指導重点校に指定し、一貫校を作るなど教育改革を進めており、2位の日比谷、15位の都立武蔵など、着実に成果が出てきています。
3位は渋谷教育学園幕張です。1983年に創立され当初の進学実績はあまり目立ちませんでした。それが当時としては珍しいシラバス(授業計画)をはじめとする情報開示を積極的に行うなど保護者からの期待を集め、進学校としての評価を上げたことが短期間での実績アップにつながりました。
表2 2021年全国東大合格者ランキング
次に表2を見てください。今年の全国の東大合格者ランキングベスト20です。ここでも圧倒的に私立校が強く、表の23校中17校を占めています。6カ年一貫教育校でみると国立校を含めて18校になります。なかでもトップの開成をはじめ、2位の灘、3位の筑波大付駒場、4位の麻布、5位の聖光学院など、トップ5を男子校が独占しました。23校中14校が男子校です。また女子校でも桜蔭が7位に入っており、男女別学校の大学合格実績の高さがはっきりと分かります。
表2にランクインしている学校はいずれも進学校として名高く、毎年、大学入試で高い合格実績を残しています。しかし、すべての上位校が、10年前に比べて東大合格者数が目立って増加しているわけではありません。なぜ合格者数が伸びていないのでしょうか。
ひとつには、価値観の多様化により、東大にこだわらず、医学部や海外大学への進学を希望する受験生が増えていることがあります。なかでも上位校では医学部人気が高く、東大の理Ⅰや理Ⅱよりも国公立大医学部を目指す生徒が多いことも一つの要因です。
表3 国公立 医学部・医学科 現役合格者数ランキング
表3は国公立大医学部・医学科現役合格者ランキングです。表を見ますと、上位21校中17校が私立一貫校で、東大ランキングと同様に私立の強さが際立っています。
トップの東海は日本で毎年、もっとも多くの医師を輩出しているといっていいほど、医学部進学者がたくさんいます。2位の久留米大付設、3位の桜蔭は卒業生占有率(卒業生数に対する割合)がそれぞれ29.9%、20.1%と高く、医学部志向の強さがうかがえます。4位には洛南、5位には豊島岡女子学園とラ・サール、7位には札幌南に開成と、医学部に強い常連校が並んでいます。
表3の特徴として、上位21校のうち、首都圏の学校は桜蔭、豊島岡女子学園、開成、海城、渋谷教育学園幕張の5校にとどまり、国公立大医学部が首都圏以外の学校で人気が高いことが分かります。医学部は根強い人気があるにも関わらず、首都圏の学校で合格者数が伸びない理由には様々な要因があります。まず、首都圏では地元にある医学部より東大の人気が高くなっていることがあります。首都圏では国公立大医学部の定員枠が比較的小さい上、東大・理Ⅲや千葉大、東京医科歯科大など、難関大ばかりです。その一方で、慶應義塾大をはじめ、日本医科大や順天堂大など、有力な私立大医学部が数多くあり、わざわざ無理して地方の国公立大医学部に進学しなくていいことも大きな理由になっています。
さて、学校を取り巻く状況も注意深く見ていけば、合格者ランキングに反映されていることがお分かりいただけたでしょうか。ランキングの合格者数を見ているだけでは、伸びている学校は分かりにくいのです。