2011年と2021年の大学合格者数を比較 伸びている学校はここだ! 総合第1位は東京都市大付!慶應義塾大、明治大でトップなど複数の難関大学でランクイン。厚木、洗足学園、横浜翠嵐が続く
写真=東京都市大学付属中学校高等学校
学校選びで注目したいのが大学合格実績です。大学合格実績は学校の教育力を見極めるのに重要なデータです。ここで注意したいのは、今年の入試結果だけで判断しないということです。過去から近年にかけての動向を追うことによって、学校が伸びているのかどうかをチェックしましょう。ここでは、今年と10年前の大学合格実績を比べ、伸びている学校はどこかを探っていきます。
皆さんはどうやって志望校を決めているのでしょうか。楽しい学校生活を送るために、学校に求めるものは何でしょうか。将来やりたいことが勉強できる学校、部活動が盛んな学校、家から通いやすい学校、自分の成績に合った学校――いろいろな基準で学校を見ることが大切です。
ここではたくさんある基準の中から、大学合格実績に焦点を当て「伸びている学校」を見ていきましょう。合格実績の数字を追うだけでなく、自分の目指している進路とあわせて見てください。その学校の特色が、生徒を送り出す大学の傾向と関係していることも少なくありません。大学合格実績を知ることは、その学校のことをよく知るきっかけにもなります。国公立大に強いのか、理系の大学に合格者が多いのかなどでも学校の教育方針が明らかになります。
ただ、前年度の合格実績だけを見て手っ取り早く判断しては、誤った評価をしてしまう可能性もあります。例えば、東大合格者1人を出した学校があったとします。これが1年限りのものだった場合と、毎年コンスタントに東大合格者1人を輩出している場合とでは、学校の評価は大きく変わってきます。前者であれば、たまたま優秀な生徒が在籍していただけで、学校の指導による実績とは考えにくいこともあります。後者であれば「学校の教育力」が高いというのが自然な判断でしょう。教育力の低い学校で、毎年連続して東大合格者が出ることはあまり考えられないからです。このように、学校の合格実績を正確に知るためには、過去のデータも含めた形で見ていくことが重要です。
大学入試では就職を視野に入れた志望校選びが主流に
大学別合格実績を見ていく前に、近年の大学入試の傾向を見てみましょう。
近年では大学受験にも就職という要素が重要になってきています。女子の理系学部進出が顕著になってきていますが、これは手に職をつけることを意識している生徒が増えたことが影響しています。とりわけ女子のトップ層では医学部が人気です。薬学部は2006年から薬剤師国家試験受験資格を得るのに大学で6年間学ばなければならず、人気が急落しました。しかし、6年制になって初めての卒業生が出た2012年以降、就職は売り手市場となり、就職率100%の薬学部があるほど好調でした。その結果、志願者が大きく増えましたが、近年は国家試験の難化に伴い、就職率が低くなっていることから、私立大を中心に再び人気が下がっています。この他、人気が高いのが、看護やリハビリテーション系など医療系の学部・学科です。特に看護はいろいろな大学に設置され、人気が高くなっています。いずれも国家試験合格までは厳しい道のりですが、合格すれば就職は他学部に比べて有利です。ここ数年、経済や経営、商学、法学など、社会科学系の人気も高くなっていましたが、徐々に理系学部へのシフトが進んでいます。
国公立大、私立大ともにしっかりとした対策が必要
大学入試の受験生の志望動向では、やはり学費の安い国公立大が人気で、この傾向は首都圏以外の学校で特に強くなっています。
人気の高い国公立大ですが、21年度の一般選抜の志願者数は前年を1万3503人下回る42万9563人で、2年連続の減少となりました。志願倍率(志願者数÷募集定員)は4.4倍から4.3倍に下がっています。もっとも、国公立大人気が下がったというわけではありません。18歳人口の自然減や、翌年の入試改革を嫌い、20年度の受験生の安全志向が強まったことから、浪人生が減った影響が大きいようです。さらに、21年度から実施された大学入学共通テストの平均点が20年度の大学入試センター試験の平均点を上回ったことも、志願者が微減に留まった要因とみられています。
また、国立大の志願者減は、後期試験を廃止する大学が続出していることも大きな原因となっています。本来、国立大では前期と後期、2回の受験機会がありますが、近年、後期は縮小の一途をたどっています。東大は16年入試で後期を廃止して推薦入試(現:学校推薦型選抜)を実施、大阪大も、17年から後期を廃止して推薦入試とAO入試(現:総合型選抜)を実施しています。国立大が国の行政法人から国立大学法人に独立して入試も自由に行えるようになったこともあり、後期試験を廃止してコストダウンを図る狙いもあるようです。
前期と後期の2回受験できる大学が減り、国公立大の中でも難関大はさらに狭き門となっています。私立大受験と異なり、試験科目の多い国公立大入試では、学校の通常の授業でしっかりと基礎学力を身につけ、早くから進路を定めて入試対策を講じることが重要です。また、大学入学共通テストは、大学入試センター試験以上に思考力や判断力が問われる出題となっています。国公立大を目指している人は、国公立大受験に力を入れている学校選びも重要になってくるでしょう。受験を視野に入れたカリキュラムを組んだり、進路指導を徹底するなど、学校はさまざまなサポートを行っています。各校独自の取り組みに注目して、自分を伸ばしてくれそうな学校を探すことが大切です。
私立大入試では16年入試から、文部科学省が大規模大学の入学定員に対する入学者の超過率を厳格化させているため、合格者の絞り込みが進んで試験が難化してきました。しかし、21年の一般選抜では浪人生が大きく減り、さらに安全志向が広がって総合型・学校推薦型選抜にシフトする受験生が増えた結果、難関大から中堅上位大まで、志願者が軒並み減少しています。
国公立大・私立大を問わず、これからの大学入試は、単なる知識の暗記だけではなく、それらの知識を活用した「思考力・判断力・表現力」、さらに「主体性」が問われるようになります。こうした力が身につくのかどうかも、学校選びの大事な要素になるのです。