千葉大と一橋大が標準額2割増の授業料値上げ
20年度から国の「高等教育無償化」制度始まる

教育 小松 栄美
千葉大と一橋大が標準額2割増の授業料値上げ 20年度から国の「高等教育無償化」制度始まる

大学の授業料(年額)は、国立大が53.6万円(標準額)、私立大が90.0万円(平均額、17年度文部科学省データ)だ。さらに入学金、施設費、実習費などの納付金や教材費がかかり、大学進学にはお金の準備も欠かせない。

国立大の標準額は、各大学で特別の事情がある場合に2割増まで認められている。これまで標準額を上回ることはなかったが、昨年、初めて東京工業大と東京藝術大が授業料を値上げした。20年度は千葉大と一橋大も上限いっぱいの20%値上げを決めた。

親子4人家族で長子が大学生の世帯では、教育費が家計の全消費支出の27%を占めるという(総務省の14年全国消費実態調査)。先月から消費税率も引き上げられ、経済面から大学進学に不安を抱えている生徒は少なくないはずだ。

 

千葉大と一橋大が標準額2割増の授業料値上げ 20年度から国の「高等教育無償化」制度始まる

入学前予約型給費奨学金「おゝ明治奨学金」を新たに導入する明治大学=写真


受験生の経済的な不安を少しでも軽減するために、各大学では、返還不要の給付型奨学金制度の整備に力を入れている。ここ数年で広がった入学前予約型給付奨学金は、申請書や所得証明書、高校の成績などにより採用候補者の選考を事前に行い、採用されると、入試に合格して入学手続を終えることで給付される。20年度は、明治大が新たに導入する(申請は11月15日まで)。予約型奨学金は「首都圏以外の受験生対象」とする大学が多い中、明治大の新制度は世帯収入の基準を別に設け、首都圏出身者も対象となる。また、入試の成績上位者を特待生とする制度を設けている大学も多い。合格発表と同時に特待生採用が通知されるものだ。入学手続時にはまとまったお金が必要となるが、奨学金を受給できることが確実ならば、安心して入学できる。こうした制度は、私立大を中心に多数の大学が設けている。

今、大学生の約3人に1人が、国の奨学金事業であるJASSO(日本学生支援機構)の貸与奨学金を利用している。17年の利用者数は96万人、卒業時の平均貸与額は無利子の第1種が241万円、有利子の第2種が343万円だ。大学卒業後はこれを15~20年程度かけて返還することになる。負担感は否めない。

17年に始まったJASSOの給付型奨学金制度は、20年度から、これまでの住民税非課税世帯に加え、年収約380万円の世帯まで対象が広がる。給付金を学生生活費として使えるように、入学金や授業料を減免する制度も創設され、「高等教育無償化」がスタートする。国では、低所得世帯の高等教育進学率が全世帯平均まで上昇した場合、これらの所要額を約7600億円と試算し、消費税率引き上げによる財源を活用するとしている。