インターンシップを成功に導く方程式
斎藤幸江の就職ウォーミングアップ講座03

キャリア・就職 斎藤幸江
インターンシップを成功に導く方程式 斎藤幸江の就職ウォーミングアップ講座03

今や多くの学生が参加するようになったインターンシップ。有効に活用することで、その後の活動の進展具合が変わってくる。

【斎藤幸江の就職ウォーミングアップ講座】
01.混乱も予想される21年就活の歩き方
02.前向き人間になり就活力を養成する
03.インターンシップを成功に導く方程式
04【A】自己分析・自己理解編 ─ 日常生活に視点を置き自分の強みを探し出す
04【B】面接編 ─ 小さなミスを気にせず フランクな態度で臨め
04【C】応募書類作成編 ─ アピールすべき情報を効果的に盛り込もう
04【D】就活クリニック編 ─ こうすれば解決できる就活生の悩みに処方箋
04【E】待遇に関する基礎知識編 ─ 入社前に知っておこう労働時間と賃金の内訳

約8割の学生が参加する重要イベントに成長

今やインターンシップは就職活動の一環に組み込まれ、ある調査会社のデータでは、19年卒生で、3年生の2月以前に約8割の学生が参加したという。そもそもインターンシップは、就職活動を始める前に、実際に職場や仕事にふれることで、自分の適性を見極めたり、就職に向けた課題を見つけたりするのを目的にスタートした。

それがまったく失われたわけではないが、現在では選考の優先ルートへのチケットといった認識が、学生と採用側の双方に浸透してきている。しかし、採用選考に有利に働くこともあるからといって、とにかく数多くインターンに参加すれば、内定獲得のチャンスが広がるというものでもない。

今や新卒採用企業のおよそ8割が実施しているというインターンシップ。その有効活用に向けたポイントを紹介していく

STEP1. 応募から選考

志望度の高い企業の場合長期型を選択しよう

一口にインターンシップといっても様々だ。期間もワンデーと呼ばれる半日もしくは1日のものから、数週間にわたって実施されるものまである。

内容も、会社説明会とほとんど変わらないものもあれば、成果を求めて課題に取り組むものも設定されている。では、各社が開催する多種多彩なインターンシップのなかから、どれを選んだらいいのか。以下のケーススタディーを参考に決定していこう。

まずは志望度が非常に高い、あるいは興味・関心の強い業種や職種のインターンに対して。このケースでは、ワークなど実習参加型のインターン内容で、可能な限り長い期間のタイプを探して参加しよう。

その企業への志望意思があり、また知識をもっている場合、えてして既存のイメージや思い込みで、職場や仕事を捉えていることも少なくない。そんな事態を避けるため、じっくり時間をかけ、具体的に仕事をイメージできるプログラムに参加し、適性を把握するとともに、知識が正しかったかどうか確認していくのだ。これによりミスマッチも防げる。

たとえば、キミが住宅メーカーのA社が第一志望だったとする。ところがA社のインターンシップはワンデーしかない。どうすればいいか……。

そんなときには同業他社で長期のものを探そう。そして会社理解はA社のワンデーでこなし、仕事や業界に対する理解は、同業のB社でしっかり身につける。こんなふうに目的を分けて計画すると、より深い企業研究ができるようになる。

ちなみに、インターンシップは選考と切り離されているとはいっても、参加した学生の印象は、採用担当者に確実に残る。インターン実習時の評価を選考に上乗せしてもらうことは期待できなくても、互いに初対面ではないから、面接時により特徴を引き出す質問をしてもらえる可能性は高くなる。

本命企業では、時間をかけてこちらのことを見てもらい、採用側にしっかり人物像を伝えていくのも、インターンシップの重要な役割といっていい。

視野を広げていくために未知の業種にトライ

志望度の高い企業だけでなく、あえてほとんど知らない業種や職種にもチャレンジしよう。就職活動の鉄則だが、早い時期に志望を絞り込みすぎるのは極めて危険だからだ。そうしないと、本命の選考に漏れたときの方向転換が難しいし、志望した以外の企業を受けなくてはならなくなったとき、アピールで「なぜ、ここなのか」の理由づけが浅くなってしまう。

そんな事態に備え、夏や秋など早期に開催されるインターンでは、それまでまったく知らなかった企業にも思い切って飛び込んでみよう。きっと視野拡大のきっかけになるはずだ。

その場合、業務や仕事内容がわからなくても、面白そうな内容だとか、知り合いになりたい学生に出会えそうだとか、小さな興味の延長で探すのもいい。なお、未知の業種や職種のインターンにトライするときには、短期型のものをオススメする。いったん受けて興味が深まれば、その後に長期のものを探して参加すればいい。そんな二段構えで臨むのがベストだ。

さらに、自分が「考えてから動くタイプ」なのか、「動いてから考えるタイプ」なのかで、インターンの内容を選ぶ。前者なら説明会形式のものが適しているし、後者なら参加型のものが興味をもちやすい。

興味がまったくなくても得られる成果は多い

それでも、知らない、あるいはまったく興味がない企業のインターンシップを、なぜ受ける必要があるのかと考える読者もいるだろう。そんなことをしていたら、遠回りではないか――と。

最初から志望先を絞り込みすぎ、後々苦戦を余儀なくされる学生を毎年数多く見てきた。その立場からいって、当初から志望先に固執するのには、とうてい賛成できない。

最終的にはある程度志望を絞るのだが、その際「なぜ、ここなのか」に対する答えは、「なぜ、ほかではダメなのか」を突き詰めないと見えてこない。そのためにはほかを知る必要があるし、選考で「幅広く見た結果、ここしかなかった」という入社意思の表明が、選考通過の決め手になることもある。インターンだけでなく、早い時期に視野を拡げておくのは、重要な戦略といえるのだ。

応募先を探すツールとしては、就職情報サイトやインターンシップサイトなどネット関連のほかに、大学に直接送られてくる情報もある。単位認定される授業科目だけでなく、地域の経営者協会との連携や大学指定の募集などだ。学内ネットやキャリアセンターで情報は公開されるので、こちらもチェックしよう。

参加する意欲を強く示し選考をクリアする

人気の高いインターンシップでは、選考が実施される。最初の関門になるのが応募書類の作成だ。自分のことを客観的に相手に伝えるのは難しく、たいていの学生は初めてのエントリーシートや履歴書に戸惑い、3日間くらい費やしている。書類提出が必要なインターン実習をねらっている学生は、早めに準備しよう。

可能ならば、先輩たちが提出した過去の応募書類を事前に入手して、書くべき内容を早期に整理しておく。また、キャリアセンターなどで、内容を事前にチェックしてもらうとよい。

なお、採用選考とはちがって、特に条件がなければ、その企業や仕事についての充分な知識がなくても構わない。背伸びせずに、現状で抱いている興味や期待を素直に書いていくことが評価につながる。

参加への期待や志望動機を記入する欄には、相手の企業に対するものよりも、実習への興味を書くこと。インターンシップを通じて具体的に何を学び、どう生かしていきたいのかを説明し、キミの意欲を見せよう。

また、インターンシップは、様々な部署の多くの社員の協力で成り立っていることを知ろう。 彼らの誠意に応え、物事をしっかり吸収しようとする学生は、きっと現場で歓迎されるだろう。

STEP2. 参加から振り返り

漠然と参加してはダメ 明確な目的をもとう

インターンシップで得たいことや、得られそうなものを次に書き出してみた。

挙げた各項目に対し、自分は今どんなイメージをもっているか。そして、どんな部分を確かめたいのか――。これを参考に目標を設定し、期待をまとめておくと、有意義なインターンシップを経験できるだろう。

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インターンシップの流れ

インターンシップで得られるもの
企業の情報
●何をやっているのか。
●誰が顧客なのか。
●どんな仕事があるのか。
●会社の理念、雰囲気といった企業文化はどうか。
●自分が興味をもっている点について、実情を知る。自分自身の理解
●何に興味を抱くのか。あるいは、もてないのか。
●何に快・不快を感じるのか。
(例:見守ってくれる雰囲気がいい。会話がない職場は苦手だ)
●他の学生と比較した特徴。
(性格だけでなく、就職に対する考え方や活動内容なども)
●好き、あるいは得意な作業。
●他者からの評価、アドバイス。
その他
●友人、知人について。
(同じものに興味をもった学生は、意外なほど共通点が多く、友人になりやすい)

これらを意識して参加し、その日の終わりに何がわかったのか、どんなことに気づいたのかをノートに整理しよう。 コメントや感想として残したものを後で見直すと、自分がどんな仕事や職業に適性があり、逆にないのかが見えてくる。

インターンシップ参加で守るべきマナーとは

最後まで参加意欲を維持することが、最低限のマナーだ。とはいえ、「このインターンの内容には、全然、興味をもてない」、また「ほかの学生が優秀すぎて、とてもついていけない」などのネガティブな感情を抱くこともあるだろう。しかし、そこで投げやりになるのはよくない。他の学生に悪い影響を与えるし、自分にとってもマイナスになるからだ。

こうした場合、自分に合わない状況や内容の分析をしてみるといい。いったいどの部分に興味がもてないのか。そしてそれはなぜか。また、他の学生のどの点を自分より優秀だと感じているか――などを細かく観察し、説明できるようにする。

すると、自己理解が深まるし、客観視したことで、参加を継続する意欲が喚起されもする。また、冷静に自分自身や周囲を眺めることで、単なる自分の思い込みや誤解だったことに気づけることも少なくない。

それでも続けることに苦痛を感じたら、理由を話して参加辞退を申し出よう。お互い実りがない時間を共有するのはムダでもあるし、もしかしたら、受入側が参加意欲を取りもどすアドバイスをくれるかもしれない。

さて、自己分析などで自分の強みを把握できている場合は、それを実習でどう生かせるかを考えて行動するといい。強みが「いつもまわりに気を配って行動する」のであれば、他の参加者をよく観察し、そこで自分が何をすればいいかを考えて主体的に動こう。

インターンシップでは、他の学生や社員からフィードバックをもらえることが多い。意識した行動が周囲から評価されれば自信になるし、逆の場合は、強みを見直すきっかけにもなる。

終了後に成果を振り返る それを就活に反映

インターンシップに参加した後は、そこで何を得たり、どんな気づきがあったりしたのかを必ず総まとめしよう。

先に挙げた〈インターンシップで得られるもの〉をベースにして、参加時のコメントや感想などを加味して分析すると、成果がつかみやすくなる。

可能なら、同じインターンに参加した他の参加学生と感想などを交換するとよい。新たな視点で見直せたり、自分の気づきを確認できたりして、成果を膨らませることができる。

参加したからといって、相手先の仕事内容や職場のすべてを把握できるわけではない。今後、より理解を深めるには、何を知りたいのか、どうやれば情報を獲得できるのかなどを考えて、その後の計画を立てよう。

多角的な視点から「理解したい」という興味を育て、自分の吸収力を最大限にすることが、インターンシップの価値を上げる。そうした参加姿勢が、採用側に強い印象として残ることを意識しながら、インターンシップに参加していこう。

インターンシップを成功に導く方程式 斎藤幸江の就職ウォーミングアップ講座03
斎藤幸江(さいとう ゆきえ)

就職・採用アナリスト。就職情報会社勤務後に独立。現在は、キャリア教育、就職支援、採用・育成支援をテーマに、大学などで授業科目・セミナーの講師、カウンセリングを手がける。雑誌への寄稿にも積極的で著書多数。近著に『キャリアデザインの教科書』(共著 労働調査会発行)。国家資格キャリアコンサルタント。