2018年3月卒 大学別実就職率ランキング
企業の人手不足感は強く、大学生の売り手市場が続いている。現在の大学生の就活に悲壮感はなく、旺盛な企業の採用意欲のもと余裕さえあるようだ。複数企業の内定を持っていることが普通となり、以前は選ぶ側だった大企業も含め、多くの企業は学生から選ばれる立場になり、強気な就活を行う学生が増えている。
好調な就活状況は実就職率にも現れており、大学通信が医学科と歯学科の単科大学を除く全大学を対象に行った就職アンケートによると、18年卒の学生の平均実就職率は88.4%で、売り手市場だった前年を0.8ポイント上回っている。08年秋のリーマン・ショック以降、最も就職率が低かった10年と比較すると、14ポイントアップだ。企業の採用意欲の高さから第一志望群の企業から内定をもらう学生が多く、就職先に対する満足度も高い。
就職に強い伝統ある工科系大学
個別大学の状況を「大学別実就職ランキング」で検証してみよう。まず、卒業者数1000人以上のグループでは、1位が金沢工業大で2位が福井大という昨年と同じ順位だった。教育・研究力に加え就職支援が手厚い金沢工業大は、大企業が少ない石川県にありながら日本各地の大企業の就職者が多いことが特徴だ。福井大は、この規模の複数学部を持つ国立大学の中で11年連続のトップ。
ランキングの上位の大学を俯瞰すると、伝統のある工科系大学が多いことに気づく。各大学の歴史を遡ると、3位の愛知工業大は1912年(大正元年)に創設した名古屋電気講習所、4位の大阪工業大は1922年(大正11年)創設の関西工学専修学校、6位の名古屋工業大は1900年(明治38年)創設の名古屋高等工業学校、7位の工学院大は1888年(明治21年)設立の工手学校に起源を発する。
長い歴史の中でエンジニアを養成してきた伝統は現在の学生の就活を後押しする。各大学の就職先を見ると、大企業に強く、就職率だけではなく、就職先の質も伴っていることが分かる。
このように就職に強い工科系大学に囲まれて5位に入っているのは昭和女子大。前年の実就職率を1ポイント上回り、8位から順位を上げた。このカテゴリーの女子大の中で8年連続トップであり、就職先も有名企業が中心となっている。
資格が取得できる学部がメインで実就職率が高い大学には、8位の日本福祉大や家政学部や看護学部、子ども学部などで構成される13位の東京家政大、23位の東京福祉大、29位の国際医療福祉大などがある。
卒業者数が100人以上1000人未満の大学のランキングを見ると、1位は3年連続で実就職率が100%の大阪総合保育大。2位以下は医療系単科大学の群馬パース大、3位は奈良県立医科大、4位は工科系の単科大学の富山県立大、5位は京都薬科大となり、教員養成、医療、工科系という、就職に強い学部系統の単科大学が並んだ。6位以降は、藤田保健衛生大、日本赤十字豊田看護大、自治医科大、日本保健医療大、明治薬科大と医療系大学が並ぶ。
売り手市場になり就活のハードルが下がる?
卒業生が100人以上1000人未満のランキングでは全大学の実就職率が90%を超えている。卒業者が1000人以上の大学はそこまで多くはないが、実就職率90%超の大学は92校に上る。このように、大学の実就職率が高くなる背景には、企業側の事情もある。かつての厳選採用の時代は、採用基準を満たしていても落とされることがあったが、今は、採用基準ぎりぎりの学生でも採らないことには採用充足できない。採用基準を緩めているわけではないが、ボーダーライン上の学生が受かりやすくなっているのだ。
難関大に注目すると、旧七帝大(東大、京大、北海道大、東北大、名古屋大、大阪大、九州大)に東京工業大と一橋大、神戸大を加えた難関10国立大の内、ランクインしたのは、49位の名古屋大と117位の神戸大のみ。この2大学に続くのは、大阪大(85.2%)、東北大(84.2%)、北海道大(82.4%)九州大(81.3%)、京大(78%)、東大(67.8%)の順だった。一橋大は、卒業生が100人以上1000人未満のカテゴリーで60位だ。
私立大では、早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)で、東京理科大は12位と上位だが、早稲田大(86%)と慶應義塾大(85.8%)、上智大(83.1%)の3校はランク外。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は、実就職率が高い順に、61位の青山学院大、87位の中央大、89位の法政大、100位の明治大となり、立教大(86.2%)はランク外。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は、46位の関西学院、96位の関西大、106位の立命館大の順で、同志社大(86.3%)がランク外となった。
難関大の中でも上位120校に入らない大学があるが、東大と京大以外は80%を超えており、相対的な順位が低いということ。実就職率の算出にあたり、起業や資格試験準備、文系学部から医学部など他の専門分野の大学を目指すといった多様な学生は未就職者に算入される。そのため、このような学生が多い難関大は、実就職率ランキングの上位に入り難くなっているのだ。