2020年最新実就職率ランキング
写真=「卒業者数1000人以上」の実就職率ランキングトップの金沢工業大
近年の傾向を踏襲して、2020年卒の大学生の求人倍率も高止まり。リクルートワークス研究所調べの求人倍率は、19年卒を0.05ポイント下回る1.83倍だった。相変わらず大学生の売り手市場が続いており、リクルートキャリア就職みらい研究所が発表している「就職白書2020」によると、採用目標数を充足できた企業は45.7%に留まり、一般企業に内定した学生の内、52.8%が第一志望群の企業だった。
こうした状況を背景として、大学通信が医学部と歯学部の単科大学を除く全大学を対象に行っている就職状況調査によると、20年3月卒の大学生の平均実就職率は、前年並みの88.8%と高い(8月3日現在)。
では、個別大学の就職状況はどうなっているのか。「卒業者数1000人以上」と「卒業者数100人以上1000人未満」の大学に分けて見ていこう。
卒業者数1000人以上で4年連続トップの金沢工業大
「卒業者数1000人以上」の実就職率ランキングトップは4年連続の金沢工業大。高い就職力の要因として、大学通信が進路指導教諭を対象に行っているアンケート項目の一つ、「面倒見のいい大学」で10年以上トップを続けている面倒見の良さに加え、教育の中心に据えられた「プロジェクトデザイン教育」による人材育成力がある。「問題の発見→問題の明確化→アイデアの創出→アイデアの評価・選定→アイデアの具体化」という一連のプロセスをチームで行うことにより身につく、実社会で求められている能力が就職力として結実している。
工科系大学は就職に強く、2位と4位には、私立の工科系伝統校である大阪工業大と愛知工業大がそれぞれランクイン。その他にも、名古屋工業大(7位)、東京理科大(8位)、千葉工業大(9位)、電気通信大(10位)などがベスト10に入っている。研究などを通して、「前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力」といった、社会人基礎力が身につくことが就職力に結びついている。さらに、情報技術がどの業界でも不可欠となり、数学的な思考力を備えた理系人材が求められていることも挙げられよう。3位の福井大も定員規模が大きな工学部を持つ。同大は卒業生1000人以上で複数の学部を持つ国立大の中で、13年連続で実就職率ランキングトップだ。
ランキング5位の昭和女子大は、卒業生1000人以上の女子大の中で、10年連続トップ。高い就職実績を積み重ね活躍する卒業生が多いことから企業の信頼が厚く、就職力を支える一因となっている。女子大では、東京家政大(14位)と安田女子大(15位)がベスト20に入っている。
実就職率が低くなりがちな難関総合大
写真=卒業生数5000人以上の大規模大学でトップ常連の関西学院大
ランキング上位に難関総合大が少ない。その背景には、学生の進路の多様性がある。当ランキングは、起業や大学への進学、難関資格試験準備など、一般企業や公務員以外の進路を選択する学生の実績を反映しにくい。そのため、そうした学生が多い難関総合大が上位に入り難くなっているのだ。
難関大のグループごとの実就職率を見ておこう。旧七帝大でランクインしたのは115位の名古屋大のみ(東大は集計中)。それ以外の大学の実就職率は、東北大が86.7%、大阪大が84.7%、北海道大が84.5%、九州大が83.1%、京大が76.3%となっている。
早慶上智は、慶應義塾大が86.7%、上智大が85.0%、早稲田大が84.1%で、いずれもランキング圏外。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)のトップは法政大(56位)で、青山学院大(76位)、中央大(87位)、明治大(107位)と続き、立教大は86.1%だった。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)では、関西学院大(51位)がトップで、関西大(86位)、同志社大(116位)、立命館大(119位)が続く。関西学院大は、実就職率が上がりにくい、卒業生5000人以上の大規模大学の実就職率ランキングでトップの常連だ。
教員養成や医療系など、資格が取れる大学が上位に
写真=警察官に強く多くの公務員を輩出する日本文化大
ランキング上位には、就職に強い系統の学部を持つ大学が多い。3位の群馬パース大は、医療系の保健科学部からなる。5位は福祉系の関西福祉大、6位は薬学系の明治薬科大、7位の福岡県立大は社会福祉学科をもつ人間社会と看護の2学部で構成されている。
そうした中、4位の日本文化大は法のみの単科大学。法学系は比較的就職に弱い学部系統ながら、高い実就職率となっているのは、警察官に強く多くの公務員を輩出していることによる。
「卒業者数1000人以上」のランキング同様に工科系大学も多く、新潟工科大(13位)、福岡工業大(18位)、第一工業大(26位)、愛知工科大(27位)などがランクインしている。
「卒業者数1000人以上」と「卒業者数100人以上1000人未満」のランキングともに、各大学の実就職率は高止まり。現在就活中の21年卒の就活環境も企業の採用意欲は旺盛であり、同様の結果が見込まれていた。しかし、就活時期が新型コロナウイルス禍とバッティングしたことにより、状況は不透明に。21年卒の学生の就職状況が気になるところだ。