中高受験のエキスパート

安田理先生が選ぶ
首都圏でおすすめの学校は?

私立中高受験のエキスパート。
安田教育研究所代表の安田理先生に注目の学校を聞いた。

安田理氏に聞く 今注目の学校

「不易」と「流行」の%で学校の〝姿勢〟がわかる!?

安田理氏に聞く 今注目の学校

安田教育研究所代表
安田 理
東京都出身。早稲田大学卒業。
大手出版社にて雑誌の編集長を務めたあと、
2002年安田教育研究所を設立。

50校以上の高校の校長に会っている

毎年、50校以上の校長と対談ないし取材でお会いしている。そうしたとき校長の口からよく出る言葉に「不易と流行」がある。
「不易」は建学の精神だったり、一般的ないつの時代でも大切なことだったり、本質的な学びだったりする。「流行」は時代の変化だったり、教育環境の変化だったり、保護者のニーズの変化だったりする。
「不易」の部分と「流行」の部分、どちらの話が多いかというと、概してだが、伝統校の校長の話は「不易」のほうの比重が高く、伸びている学校の校長の話は「流行」についての話が多い。

「流行」のほうがインパクトが大きい

今年、ある合同相談会で、10校の校長の話を講堂の同じ席で聴き続けた。同じ状態で聴き続けたので学校の違いがより鮮明にわかった。
多くの学校の校長は「わが校はこういう学校です」という学校の教育の特色、学校生活の様子など一通り現状を紹介した。受付で参加校10校の学校案内が入った袋が配られていたので「〇〇ページにありますように……」など、文字通り学校紹介に徹していた学校もあった。
そうした中、「生徒が巣立つ次の時代のことを考え、△△の取り組みをしています」と語った学校があった。
私からすると、「学校紹介」は「不易」であり、「次の時代に向けた施策」は「流行」だと思う。
講堂の座席を埋め尽くしていた保護者の反応も「流行」を語った学校のほうが拍手が大きかったように感じられた。
保護者は、わが子が、これから巣立っていく不確実な時代を生き抜いていけるのか不安に思い、心配しているのであるから「流行」の%を高めたほうがいいのではないだろうか。

自分の話ばかりする男はモテない

もう退職されているベテランの広報担当の先生にこんなことを言われたことがある。
「自分のことばかり話す男はモテないですよね。合同相談会というと、先生たちは口角泡を飛ばして学校の宣伝に躍起となりますが、聴いているほうはその10分の1が入ればいいほうで、ほとんどの内容は記憶に残りません」
確かに友人関係でもいつも自慢話ばかりするタイプはだんだんと声がかからなくなる。私も先生方と話すときは〝お役に立ちたい〟という気持ちから、つい話を聴くよりもしゃべりすぎるきらいがある。気を付けなければならない。
2学期の後半、受験生活の疲れがたまっている11月、12月に保護者の声を聴くと、「抱えている不安についてお話ししたところ、在校生の例を挙げて『子どもってそういうことはよくあります』とお話ししてくれて救われました」「ストレスフルな生活でまいっていた心に寄り添うようなお話でとても癒されました」「ご自分のお子さんの受験生活のときの経験をお話ししてくださり、自分の苦しさをわかってくれているんだと感じられました」……といったたぐいのことをしばしば耳にする。
学校のことを正確にしっかり理解してもらうことはもちろん大事だが、相手のこと、相手の状況を考えることも大切だ。人の話を十分に聴くことは、語る以上に信頼を得ることにつながる。

『輸入品』でなく『内製品』を

保護者に学校選びについても話を聴くことがある。「○○についての話がよかったです」「お母さん、それ、どこの学校ですか?」「あっ、どこだったかしら?たくさん見て歩いたのでわからなくなっちゃった」…ということがしばしば起こる。
「探究」「グローバル教育」「キャリア教育」「STEAM教育」「ICT教育」……学校案内、HPでの解説も校名を変えればどこにも通用するものが多い。
学校としてのこれまでの経験の蓄積、生徒との日々のやり取りからの成果…そうした部分が感じられないのだ。『輸入品』の印象で、学校の内側から生まれた『内製品』ではないから、記憶に残らないのだろう。
上記の用語を使うにしても、「わが校の生徒のレベルに合わせて何をどう体系化して行っているか」を詰めて、それを感じさせるように表現していただきたい。
それと、右記のようなレッドオーシャン(競争が激しい市場)の「○○教育」だけではなく、ブルーオーシャン(競争相手の少ない、いない市場)の「わが校ならではの精神性」を表現してほしい。
それがあってはじめて数字(偏差値、大学合格実績)で選ばれる不安定な学校選択の世界から抜け出せるのだから。