明治大学 わが国近代の黎明期を切り拓く市民育成に熱き思いを捧げた三人の青年法律家
世界へ ─「個」を強め、世界をつなぎ、未来へ ─
創立138年を迎え、進取の気性で「未来開拓力に優れた人材」を育成
明治大学の前身は今から138年前の1881(明治14)年1月17日、フランス法学を学んだ三人の青年法律家により創設された「明治法律学校」に遡る。
当時は日本中が新しい「国造り」をめぐり、激しい対立と抗争を繰り広げていた時期に当たる。旧来の封建制度を打破し、維新すなわち「こ(維)れあらた(新)なり」の気概のもと、近代国家への転換に踏み出したものの、具体的な施策、制度などは未だ十分には確立していなかった。
わが国の近代化のためには、官僚が中心となって「富国強兵」政策を遂行し、不平等条約改正などの政治課題を実現すべきとの動きがある一方で、国会を開設し、憲法を制定して近代化を実現すべきだとする自由民権運動も大きな広がりを見せていたのだ。
両者のそうした衝突がまさに激しさを増しつつあった中、司法省明法寮(後の法学校。東京大学法学部の前身の一つ)の同級生で、互いにきわめて親しい間柄にあった岸本辰雄と宮城浩蔵、矢代操が、有楽町・数寄屋橋の旧島原藩邸内に創設したのが「明治法律学校」だ。
「権利自由」「独立自治」を根幹に三人の青年が創立した大学
明治維新政府の第二世代に当たる岸本、宮城、矢代の三人は、わが国に未だ法体系が確立していなかった時代にフランスの近代法を導入し、近代化の道筋をつけたいと、非常に強い情熱を持って学校運営に取り組んだ。それが「権利自由」「独立自治」という明治大学の建学の精神につながっている。
三人はともに、フランスから招請された法学者ボアソナード博士から直接、フランス法学の薫陶を受け、岸本と宮城の二人はパリ大学に留学。最先端の文化と自由主義思想の洗礼を受けた。
フランスは、その国旗の「自由、平等、博愛」の三彩色に見られるように、主権在民の理念のもと、「個」の自由性を重んじるところに特徴がある。明治大学の「『個』を強くする大学」というメッセージの淵源も、ここに求めることができる。
同校は資金難に苦しみながらも、志願者は日に日に増加。1886年には神田駿河台に自前の校舎を新築し、移転する。明治期にあって特に教育水準の優れた「五大法律学校」の一つに数えられ、1903年には専門学校令により明治大学と改称。1920年の大学令および戦後の学制改革を経て今日に至っている。
現代はグローバル化が進み、多様な人々がさまざまな場所で出会う時代。宗教や思想、生活環境の相違を含む多様な価値観が存在する現代社会であるがゆえに、利害関係が交錯し、時には衝突や対立が生まれることもある。
しかしながら、われわれは、このような複雑な社会の中でも、協調して生きていかなければならない。そうしたときに、明治大学の三人の創設者が掲げた思想や、お互いの人権、多様性を認め合うという理念は、現代においてこそますます重要な意味を持つようになるだろう。
今日、約56万人を数える校友(卒業生)は、常にその時代の先端を切り拓く先導者として活躍。二人の総理大臣を筆頭に、政官財界をはじめ、学術、文芸、スポーツの世界に至るまで有為な人材を多数輩出し、確固たるネットワークを世界中に築き上げている。
大学改革によって、常に先端を走り続ける明治大学
今春、明治大学は一般入試の志願者数が3年連続で11万人を超えた。18歳人口が減少する中で、トップクラス(2010~13年度は日本一)を誇る人気ぶりだが、受験生や保護者、高校教員らに支持される要因に挙げられるのが、常に時代をリードする大学として取り組んでいる「ダイナミックな改革」だ。
現在、駿河台キャンパスのシンボルタワーでもあるリバティタワーが完成したのは、20世紀も押し詰まった1998年のこと。都心型キャンパス構想のもと建設された同棟は、高層校舎の先駆けであるとともに、IT化を見越して情報インフラを重視するという、先見性も兼ね備えた校舎である。ここから、アカデミーコモンやグローバルフロントの竣工など、駿河台キャンパスの再整備が急ピッチで進められていく。
2004年以降、新学部(情報コミュニケーション学部、国際日本学部)や法科大学院、専門職大学院の開設など、大規模な学部・大学院改革がスタートした。
2013年4月には、国際化、先端研究、社会連携の拠点として「中野キャンパス」がオープン。約1万6000平方㍍の敷地に国際日本学部が移転するとともに、明治大学の10番目の学部として「総合数理学部」が誕生した。
国際日本学部は、世界的なブームとなっているクール・ジャパンなど、日本の魅力をグローバルな視点から見つめ直し、世界に発信する学部。開設当初から「何を学ぶ学部だろう」と注目を集めたが、学部のコンセプトが高校生に浸透するに従い、実際に多くの学生が志願するようになった。同系統の学部が全国に広がる動きが出るなど、明治大学が先陣を切って定着させた学部である。
一方、総合数理学部はグローバルCOEに採択された先端数理科学インスティテュートの研究が教育に発展し、大学院、学部ができるという新たなサイクルの中で開設された。現象数理学という、数学の新しい応用分野を開拓する野心的な試みは、明治大学の独自色を強く打ち出した研究へとさらなる発展を遂げることになる。
海外大学間交流や留学を奨励 文科省「世界展開力強化事業」採択
グローバル人材の養成が喫緊の課題と目される中、2014年の文部科学省のスーパーグローバル大学等事業「スーパーグローバル大学創成支援」に、明治大学の構想「世界へ!MEIJI8000―学生の主体的学びを育み、未来開拓力に優れた人材を育成―」が採択された。
さらに、2016年9月には、文部科学省の平成28年度「大学の世界展開力強化事業~アジア諸国等との大学間交流の枠組み強化~」タイプB(ASEAN地域における大学間交流の推進)に、明治大学の構想「CLMVの持続可能な都市社会を支える共創的教育システムの創造」が採択された。
近年、CLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)諸国の経済成長は目覚ましいが、都市の過密と地方の過疎、地域的な経済的格差等の是正などが大きな課題となっている。
そのため、本構想では日本の高度経済成長期の経験を踏まえた「先進的なアジア型の将来都市構想」と、これを実現する「共創的教育システム」を創造。日本とCLMV諸国の学生が協働することで、国連が提示した「持続可能な開発目標」に沿って、各国・地域の都市化に適合したインフラ形成とその発展に寄与しうる人材の養成を目指す。
文科省「私立大学研究ブランディング事業」に先端数理科学インスティテュートの研究活動が採択
一方で、その卓越した研究力に目を転ずると、文部科学省が発表した2018年度の科学研究費助成事業の配分では、明治大学の交付金額は5億9576万円、採択件数は新規と継続分を合わせて284件で、多分野にわたり独創的・先駆的な研究を支援する環境が整っている。
また、多彩な重点領域に対して、世界水準の研究を推進する拠点を設置し、13に及ぶ研究施設・拠点では、海外の大学・研究機関とも連携している。
2016年、「数理科学する明治大学」というブランド力を打ち出すとともに、多種多様な学部・研究科を擁する明治大学ならではの研究を実践するプロジェクトが、文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に採択された。
事業テーマは「Math Everywhere:数理科学する明治大学―モデリングによる現象の解明―」。5年間で「生物・社会システムの形成と破綻」、「錯覚現象の解明と利用」、「金融危機の解明と予測」、「折紙工学の産業化」、「快適な介護空間の構築」の5つの課題に取り組む。
いずれも秩序や構造が自然にできあがる「自己組織化」という現象を共通概念に据え、数理科学の「モデリング」という手法で解明していく。先端数理科学インスティテュートを中心に、数理科学の研究を基軸とする新たな融合プロジェクトを発掘、推進し、わが国の数学・数理科学力をより一層強化し、世界の経済・社会の発展と科学技術の進展を図ることが目的だ。
こうした新しい教育、研究のかたちを構想する明治大学は、学生の「個」を強くする大学として、柔軟な発想と行動力で次代を切り拓く人材を育成。138年の時を経てもなお色褪せることなく、先取の気概が受け継がれている。