学習院大学茶道部は、1957年に前身となる茶道同好会が発足。1963年に茶道部へと昇格し、2027年には70周年を迎える伝統ある部活動です。現在は火曜日と水曜日の週2回の活動があり、部員数は仮引退をした4年生を除くと約30名。学園祭などでお茶会を開催するほか、「桜山会」というOB・OG会の活動も盛んであり、茶道部と「桜山会」の共催でのお茶会もあります。そんな茶道部の魅力を3年生の藤村さんと粂田さんにお聞きしました。

左:藤村 咲子さん(2025年度委員長)文学部日本語日本文学科 3年 東京都・私立実践学園高等学校出身
右:粂田 奈菜絵さん(2025年度 副委員長)法学部政治学科 3年 東京都・私立淑徳高等学校出身
お茶会に向けて日々お稽古
まずは、お二人が入部した理由からお聞かせください。

藤村:私は高校時代、茶道や華道、筝曲(琴)など、さまざまな日本文化に触れる部活動に所属していました。その中で、大学では茶道に絞って腕を磨こうと思い、入部を決めました。高校時代も現在も、茶道は型や作法の厳格さを感じますが、私はそこにやりがいを感じています。また、親が学費を出してくれるからこそ経験できることですので、入部したからにはしっかりとやり切ろうと思って活動しています。
粂田:私は中高でも茶道部に所属していて、純粋に好きだから入部しました。型がキレイにできたり、師範や師範代の先生に褒められると、やってきてよかったと思えます。
藤村:練習して上達すれば素直にうれしいし、「先生はこのことを言っていたんだ」と、後になって指導の意図や真意がわかることもあります。ただ、ある日突然覚醒して上手になるという感覚はないですね。
粂田:気づいたら先生が「上手になったね」と褒めてくださって、成長を自覚できることもあります。そうなるために大切なのは、やはり日々の練習の積み重ね。たとえ経験がなくても、向上心を持って地道にコツコツとお稽古に励もうと思える学生に向いていると思います。
藤村:経験は一切問わないため、入部時点で茶道未経験の学生は多いです。ただ、「大学で茶道がしたい」という強い思いを持って入部してくれる学生がほとんどです。だからこそみんなしっかりと上達していけるのだと思います。
では、入部後の流れを教えてください。

藤村:入部すると、まずは「割り稽古」から始めます。お茶会では、お客様にお茶をお出しする人を「亭主(ていしゅ)」と呼び、「亭主」がお茶を点(た)てることを「お点前(おてまえ)」といいます。この「お点前」の動作を細かく区切って練習するのが「割り稽古」です。その後、お茶会の流れのとおりに行うのが「通し稽古」です。
粂田:「割り稽古」でしっかりと「お点前」での動作の型を身につけることで、「通し稽古」のクオリティも上がります。それをチェックするのが上級生であり、毎週来てくださる師範代の先生です。お茶会前やお茶会当日には、師範の先生や、別の師範代の先生が来てくださることもあります。
藤村:「亭主」として「お点前」ができるようになってからは、「亭主」のサポート役である「半東(はんとう)」の動きも練習します。また、いろいろな茶道用語や茶道の精神などを学ぶ「学術ゼミ」も行っています。担当の学生がレジュメを作成して、みんなで勉強するんです。先生も体の動かし方や型の意図などを丁寧に説明してくださいますので、着実に知識が身について上達していけます。
その成果を披露するのがお茶会ですね。
藤村:1年生にとって、日頃からお稽古を重ねてきた成果を披露する最初の場となるのが、大学祭で行う秋季茶会です。ちなみに粂田さんは、先生から「お茶会に出していい」というお墨付きをもらうレベルでしたので、1年生のときから「亭主」をしていました。私はそのレベルには達していなかったのですが、「亭主」でなくても、お客様にお菓子などを運ぶ「お運び」という役割を任されることはあります。「お運び」でもお客様に歩き方や座り方を見られますので、初めてだと緊張しますが、「やりたいです!」と積極的に練習する後輩が多いですね。
粂田:そうやって役割分担をしてお茶会が終わると、お客様が学生に声をかけてくれます。「上手だったね」「美味しかったよ」「楽しかったよ」と言ってもらえるとうれしくて、次のお茶会に向けたモチベーションが高まるんです。
藤村:また、お茶会では茶券という手づくりのカードをお客様に渡すのですが、「学習院の茶券をいただくのが毎年楽しみ。今年も綺麗だね」と言ってくださるお客様もいて励みになります。これも次のお茶会に向けて頑張る原動力になります。お稽古に励むにしてもモチベーションが大切ですし、1年生に対しては入部の段階で「お茶会を開催するために日々お稽古をする部活動」であることを伝え、「1年生は秋季茶会を目標に」としつこいくらいに言い続けます。そのおかげで、自分の役割が「亭主」であれ「お運び」であれ受付係であれ、お客様に楽しんでもらいたいという意識をみんなが持ってくれていると感じます。

学年を越えた一体感の強さが伝わってきますね。
藤村:上達すればするほど、さらに楽しさを感じられると思うので、後輩には頑張ってほしいという一心です。上級生といっても、先生ほど茶道に通じているわけでもなく、アドバイスできる内容が限られているのは確かですが、持てる知識はすべて後輩のために授けたいと思っています。
粂田:私も自分が思ったことは率直に伝えます。また、普段から先生がよくチェックされているポイントや、注意点や改善すべき点として話してくださる内容を覚えておいて、「ここの動きは先生がいつも見ているよ」「この前、〇〇って先生が言っていたよ」と後輩にアドバイスを送ることもあります。先生は一人ひとりのレベルに応じて的確に指導してくださいますが、学生が自分たちで底上げできる部分は底上げしておきたいんです。
藤村:上達すれば先生は見てわかってくれますし、そこからさらに上達するためのアドバイスをしてくださいます。例えば、より細かい指先の動きなど。だからこそ、まずは基礎的な部分をマスターしてほしいですし、そのために私たち上級生も最大限サポートしたいと思っています。

茶道で育まれる力が人生を豊かにする
部の運営体制についても教えてください。

粂田:茶道部では、学生が予算管理や渉外、大学との事務連絡などを行います。そこが、顧問の先生がいろいろと手配してくれる中高との大きな違いだと思います。茶道の腕前を磨くこととは別で、”仕事っぽさ”も感じますが、それをこなせるようになることも、将来につながる大きな成果だと思います。ただ、コロナ禍で活動休止が長期化した影響もあって、運営ノウハウがうまく引き継がれていないと感じる部分もありますので、現在はコロナ禍前の体制に戻すための再建段階にあります。
藤村:私と粂田さんは茶道部の第68期なのですが、もうすぐ70周年を迎える部の伝統を守り、継承していく使命感もあります。だからこそ、コロナ禍で途絶えたものを復活させたいですし、特に減ってしまったお茶会の開催数を元に戻したいと思っています。
粂田:一方、新たな流れとして、2026年4月に学習院女子大学が学習院大学に統合されます。そこで私が任されているのが、この裏千家茶道部を守っていくための統合対応です。女子大にも裏千家茶道部があるため、大学茶道部との統合の話し合いを進めています。
こうした茶道部での経験は、部活動以外にも役立っていますか?

藤村:私は文学部の日本語日本文学科なのですが、茶道の知識が身についたことで、日本文化を学ぶ授業や、学芸員の資格取得に向けた授業などで、内容をスムーズに理解しやすいメリットが生まれていると感じます。直接的なところでは、レポート課題で茶道に使う釜をテーマにしたこともあります。また、就職活動で自己PRや”ガクチカ”を書く際にも、茶道部での経験が何よりの題材になります。お茶会で「お点前」をするためにお稽古を重ねていく継続性や精神力もそうですし、「お茶会でお客様に楽しんでもらいたい」という、言うなれば企業における顧客第一主義のような意識の高さをアピールできればと思っています。
粂田:部の運営面を考えてみれば、茶道部の活動との向き合い方は、社会に出てからの仕事に対する向き合い方と大きくは変わらないと思います。お茶会の開催でも、企業でのプロジェクトでも、一つの物事に対していかに自分が頑張れるか、貢献できるかが大切なはずです。学生時代に茶道部の活動に精一杯力を注ぐことで、社会人になってからも同じように頑張れる人材になれるのかなと思っています。
藤村:その点、企業のような厳格さはないかもしれませんが、茶道部も一つの組織として明確に役割分担を定めています。個々が組織の一員としての自覚と責任感を持ち、自分の役割を果たそうとする意識は高いと思います。あとは、茶道で培った所作や敬語の使い方、お客様への接し方が、部活動以外の場面で褒められることも少なくありません。茶道の精神として、他者に対する思いやりや尊敬の念の大切さが掲げられていますので、お茶会での接客だけでなく、日々誰かと接する際にも丁寧でありたいと思えるんです。このように、茶道部なら日常生活でも卒業後の社会人生活でも、人生のさまざまなシーンで役立つ力が養われるように思います。
粂田:将来につながる収穫でいうと、私が秘書検定の準1級に合格できたことも、茶道部で磨いた所作が活かされたのだと思います。2次選考が実技試験で、専門のスクールに通わなければ難しいといわれているのですが、私としては自然に振る舞うことでクリアできましたので、茶道部に感謝ですね。
最後に、委員長の藤村さんから”締めの言葉”をお願いします。

藤村:まず、私がここまで続けこられた理由として、粂田さんの存在が大きいです。粂田さんが活動日以外にも部室で黙々と練習する姿を見て、私も頑張ろうと思えたんです。また、2人しかいない3年生を支えてくれている後輩のみんなにも「いつもありがとう」「みんなのおかげで助かってるよ」と伝えたいですね。学習院の茶道部は、茶道という日本の伝統を受け継ぎながら、学生が支え合いながら活動していく伝統も受け継いできていると思います。ぜひ新入生にもその一員になってほしいですし、部員同士で頼り頼られながら充実した4年間を過ごしてもらいたいです。新歓期間にはお茶とお菓子を用意してお待ちしていますので、まずは部の雰囲気を知ってもらいたいですね。

