前身の「学林」から数えると430年を超える歴史を誇る駒澤大学は、仏教の教えと禅の精神を建学の理念に掲げ、7学部17学科を擁する総合大学へと発展。村松哲文学長のもと、智慧・慈悲・縁起の3つを柱に、文理融合型の人材を育成している。
変化の激しい現代にあって、駒澤大学では個々の学生が社会を照らす人材として活躍できるようさまざまなキャリアサポートを低学年時から実践しており、社会で活躍する25万人を超える卒業生との絆を生かして、学生一人ひとりのキャリアデザインをバックアップしている。現場の最前線に立つキャリアセンターの佐藤貴之就職課長と駒形友也氏に伺った。

右:佐藤貴之(キャリアセンター 就職課長)
左:駒形友也(キャリアセンター 係長)
一人ひとりの面談を重視 予約なしでいつでも対応
―駒澤大学では、キャリア支援をどのような方針のもとで行っているのか。特に建学の理念がキャリア形成支援にどのように生かされているかをお聞かせください。
佐藤 企業の採用担当者からは、駒大生の特徴として素直さや真面目さを挙げていただくことが多いです。本学は開学以来、釈尊の教えに基づいた「智慧と慈悲」の探求と実践に努めてきました。建学の理念は「仏教の教えと禅の精神」です。そういった大学の雰囲気やカリキュラムが自然な形で学生に吸収されていき、社会や企業の評価になっていると思います。建学の理念を表現する言葉として「行学一如」があります。実践を目指す「行」と真理探究の「学」は一体であるという意味ですが、それが就職活動にも生かされていると思います。
駒形 そういった本学の特徴を消さないような支援が大事だと思っています。特に一人ひとりとの面談を重視しており、職員それぞれが「今」の学生との対話から個々に応じた支援方法を模索し続けています。そして、学生自身が納得する就職先を選択できるように支援することを目標にしています。
―キャリアセンターでは、現在どのような体制で学生サポートに臨まれていますか。貴学ならではのキャリアサポートの特徴を含めお聞かせください。
駒形 一番の特徴は、個別面談は予約制ではなく、平日の受付時間内であればいつでも対応する体制を整えているということです。さらに一つのキャンパスに全学生が集まっているということで、学部横断型のイベント実施が可能ですし、教員との連携がとりやすいというメリットもあります。
佐藤 業界知識の豊富なスタッフが常駐しており、学生の夏季休暇、春季休暇中も利用可能です。キャリア支援に必要なキャリアコンサルタントの資格を取得している者もいます。ITの急速な進化と普及により対面で相談にくる学生は減少傾向にありますが、昨年実績でも8000件に迫る相談件数がありました。また昨年は求人件数が1万4822件、本学に来校して合同企業説明会に参加した企業は年間234社に上っています。この合同企業説明会は、駒大生の採用を希望する企業がキャンパスに来校して行うもので、業界の採用担当者と直接話すことができる貴重な機会です。
昨今、多くの大学が就職支援プログラムをウェブもしくはオンラインに切り替えていますが、本学は対面重視で行っています。フェイストゥーフェイスでのリアルな時間を大切にしているためです。
また、資料室には、キャリアセンター内で自由に閲覧できる豊富に取り揃えた最新資料に加え、オンライン面接用の個室ブースも設置しています。
駒形 キャリア支援のためのさまざまなプログラムを用意しています。就職ガイダンスは3年生を対象に年4回にわたり実施し、採用コンサルタントや就職活動を終えた4年生がそれぞれの時期に合わせたテーマについて語ります。就活集中セミナーは、年間を通して自己分析の方法やエントリーシートの書き方などの基礎的なレクチャーから面接での心構え、グループディスカッションへの取り組み方といった実践的な講座を用意して、就職活動中にぶつかる疑問や悩みを解決します。また、Uターン就職など地方就職へのサポートや、公務員試験、教員志望者に向けた資格講座などの充実を図っています。
佐藤 本学ならではの仕組みとして就職支援システム「駒キャリ」も特筆しておかなければなりません。学外からでもアクセスできるシステムで、大学に届く求人やインターンシップ情報の検索、先輩たちの就職活動体験報告の閲覧などが可能です。また、本学を卒業し、さまざまな分野で活躍する先輩たちの生の声を在校生に届ける取材企画「襷」もあります。在学生自身が卒業生にインタビューし、多様な働き方のロールモデルを提示します。随時、本学ホームページに掲載されます。
「襷」情報はこちらから https://www.komazawa-u.ac.jp/campuslife/career/tasuki/
低学年時からのさまざまな就職支援プログラムを実施
―学生の就職活動が年々早期化しています。低学年次からのキャリア支援にはどのように取り組んでいますか。
駒形 本学では早い時期から将来の進路を考えられるよう、1、2年生から将来の就職活動に役立つさまざまな支援プログラムを実施しています。4月初旬に新入生オリエンテーションを開催し、キャリアセンターの活用方法などを案内します。そして、低学年から自分自身と向き合い、将来について考える機会が持てるよう「キャリアデザイン講座」を主に1、2年生を対象に実施しています。昨年は「就職と資格」「就活と未来」など4回にわたって開催しました。主に2年生を対象とした「キャリアガイダンス」では本格化する就職活動を前に就職活動の現状を伝えます。さらに、1、2年生から参加できるインターンシップも展開しています。
―キャリア支援を通じ、印象に残っている学生のエピソードや、卒業生を見て在学中のキャリアサポートが生きていると感じられたことをお教えください。
駒形 1年次からキャリアセンターのイベントに参加し、多様な価値観に触れることで自分の進む道に結び付けている学生の姿を見た時や、結果が出ずに悩みながら相談に来た学生が、最終的に自分の納得する就職先を見つけて報告に来てくれた時は、この仕事に対する達成感を感じます。また、卒業生が在学生のためのイベントに快く協力してくれる際に、キャリアサポートを通じた繋がりが生きていることを実感します。
―キャリアセンターが今後目指すものや、進路選択を控える高校生、高校の先生方に向けてのメッセージをお願いします。
駒形 キャリアデザインと就職とは別の観点だと理解していますが、これらに関して多岐にわたるプログラムを用意しており、学生が自分の納得できる進路選択をサポートできる体制を整えています。それをお伝えしたいですね。
佐藤 普段の生活の中から自分は何をしてきたのか、自分の適性や強みは何かを考えてほしいと思います。就活のためのテクニックやいわゆる「ガクチカ」を書くための手段として何か特別なことを行うのではなく、自分が心から熱中できることをとことんやり、その中から将来に活かせることを見い出してほしいということを強調したいですね。また、2024年度からリベラルアーツ・プログラム「駒澤教養パスポート」がスタートし、IT化が急速に進む中で、技術力だけでなく多角的な視点を持った文理融合人材の育成を目指しています。キャリアセンターでもそれと関連し、「論理的思考力」をキーワードとして、それを伸ばせるようなシステムづくりを進めたいと思っています。
