成長と社会での活躍の礎となる 自身への気づきに満ちた初年次教育─流通科学大学

PR 聞き手 松本陽一(大学通信) 文 松本守永(ウィルベリーズ)
成長と社会での活躍の礎となる 自身への気づきに満ちた初年次教育─流通科学大学

大学全入時代が本格化した今、大学で学ぶ意義や将来のキャリアについて考える場を設けることは、中等教育だけでなく大学でも重要なテーマになっている。そんななか、大学1年生が受講する初年次教育に力を注ぎ、充実した大学生活と納得の進路の実現を後押ししているのが流通科学大学だ。初年次教育の設計と運用に携わる田邉良祐准教授(商学部マーケティング学科)に話を聞いた。

―流通科学大学の初年次教育の特徴を教えてください。

本学では独自の教育プログラムとして、「夢の種プロジェクト」を展開しています。このプログラムは、夢の種を「探す」「育てる」「咲かせる」という3段階で構成されています。「探す」は、夢や目標を見つけるフェーズです。見つけた夢や目標の実現に向けて知識やスキルを身に付けたり、学内外で様々な経験を積むのが「育てる」のフェーズです。そして、キャリア教育と就職支援を連携させ、夢への第一歩を踏み出すのが「咲かせる」のフェーズです。このなかで初年次教育は、「探す」のフェーズにおける具体的な教育プログラムです。

学生が夢や目標を探すための中心的舞台になるのが、1年生全員が受講する「自己発見とキャリア開発」という授業です。同科目は前期に受講する8単位からなる「自己発見とキャリア開発A」と、後期に受講する2単位からなる「自己発見とキャリア開発B」で構成されています。

前期の「自己発見とキャリア開発A」は、自分自身への気づきが大きなポイントになっており、そのために様々な工夫がこらされた授業を行っています。例えば入学直後には、「コミュニケーションキャンプ」を実施。学部学科を横断し、さらに留学生も加わってクラスを編成し、チームビルディングやコミュニケーションワークに取り組みます。また、「OHBYカード」「人生すごろく 金の糸」といった、キャリアカウンセリングの場などで用いられるツールを活用したグループワークや個人ワークを行っています。さらに、学生同士が自分自身についてインタビューし合う「キャリアストーリーインタビュー」も行っています。これらの取り組みを通して学生は、それまでは気づいていなかった興味や得意なことに気づくことができます。そして、「なぜそれに興味があるのか、なぜそれが得意なのか」を考えることで、「興味を深掘りするには大学でどう学べばいいか、得意を伸ばすにはどのような大学生活を送ればいいか」まで考えることができます。自分自身について気づくことが、有意義な大学生活へとつながっていくのです。

このほかにも前期には、企業からの課題に取り組むことで職業への理解を深めたり、本学の自己発見とキャリア開発を担当する23人の教員から学ぶことで大学における学問への理解を深める授業を行っています。

後期の「自己発見とキャリア開発B」はアントレプレナーシップ教育であり、夢や目標を見つけたうえで具体的に何をするかを学ぶ科目です。ここで言うアントレプレナーシップ教育とは、必ずしも起業家の育成に限定したものではありません。起業家精神を醸成することで、豊かな人生を実現していこうというものです。本学には、「『ネアカ のびのび へこたれず』の精神をもった人材」「知識を知恵に転換することができる、論理的思考力を持った人材」など、5項目のディプロマポリシーが設けられています。これらは起業家精神に通じるものがあります。そこで、アントレプレナーシップ教育を通じて、本学が育成すべき人材に向けて歩み出してもらおうという狙いがあります。

―アントレプレナーシップ教育の中身について具体的に教えてください。

「既存の商品やサービスを10倍魅力的にする」という課題に取り組みます。題材となる既存商品・サービスは、SNS、語学学習、スキマバイト、宅配弁当、メンタルヘルスなど、学生にとっても身近であったり興味を持ちやすいものです。学期末には顧客ニーズを満たす最小限のプロダクトである「MVP(※)」を作り、クラスでプレゼンテーションをします。
※Minimum Viable Product(実用最小限の製品):完璧な状態の商品・サービスではなく、顧客が抱える課題を解決できる最低限の状態のこと。MVPを作ることで顧客からのフィードバックを得ることができ、商品・サービスの改良を効率的に進めることができる。

特色の1つは、学びの中に生成AIの活用を取り入れていることです。例えばMVP作りにあたってプロダクトのイメージ図が必要な場合、生成AIを使ってイラストを作成します。アイデアの素案を生成AIに出してもらい、それをもとにして学生たちが議論し、アイデアを具現化していくという使い方も考えられます。生成AIを活用できる人材の育成は、本学の全学的な教育目標になっています。そのための具体的な実践の場という役割も、本科目は担っているのです。

ちなみに生成AIは、留学生とのコミュニケーションを支援するツールとしても活用されています。これもまた、これからの社会を生きる若者にとって欠かすことのできない、生成AIの活用方法だと言えます。

―「自己発見とキャリア開発」を受講したことによる学生の成長について教えてください。

現在のプログラムは本年度からスタートしました。そのため、目に見える成長はこれから先に表れてくると期待しています。先生方からは「今年の1年生はいつもと何か違う」「同じことでも短時間で結果が出せるようになった」という声が寄せられています。プログラムの成果かどうかは検証が必要ですが、うれしい変化です。

―教材として「マイクエスチョン(My Question)」を導入したとうかがいました。

マイクエスチョンは教育と探求社が開発した教材で、問いを立てる力を養うことを目的として導入しました。「使い終わった○○の使い道は?」など30種類の問いが書かれたカードと、○○の部分に当てはまる40種類のテーマが書かれたカードからなります。これらを組み合わせるゲームを通して、自分が興味を持つ問いを見つけていくのです。そして、なぜその問いに興味を持ったかを考えます。これは自分への気づきです。そういった経験を繰り返すことで、問いを立てることのおもしろさに気づくこともできます。問いを立てる力を養うことは、アントレプレナーシップ教育にも通じています。「自己発見とキャリア開発」の授業で学生に学んでもらいたいことの多くを、この教材を通して学ぶことができるのです。

―高校での探究教育を進めるうえで、大学教育の視点からアドバイスできることがあれば教えてください。

アドバイスではないのですが、「自己発見とキャリア開発」の授業を高校生と一緒にやりたいと考えています。先ほどお話しした「既存の商品やサービスを10倍魅力的にする」という課題で取り組むテーマは、高校生にとっても身近なものです。きっと、楽しみながら取り組むことができるはずです。そして、大学生と同じように自分への気づきを得たり豊かな人生を送るための力を養うことができるはずです。

高校生にとって大学生とは、数年後の自分に他なりません。そういった人と一緒に活動することで、「自分もあんなふうになりたい」「あの人のようになるには、どんなことを学んだらいいんだろう。どんな高校時代を送ればいいんだろう」と考えられるはずです。これはまさにキャリア教育です。教材やノウハウなどは本学が用意するので、興味がある高校の先生方は、ぜひ声をかけてください。

―最後に、高校の先生方や受験生にメッセージをお願いします。

本学は、生徒さんをお預かりした限りはしっかりと育てます。その第一歩が初年次教育です。安心して生徒さんをお任せいただけたらと思います。本学にはたくさんの留学生が在籍しており、日常的に外国人と共に学び、共に活動するという経験を積むことができます。多文化共生を自然に体験できる環境なのです。それは今後の社会で暮らすうえで、間違いなく役に立つ経験だということを付け加えておきます。

成長と社会での活躍の礎となる 自身への気づきに満ちた初年次教育─流通科学大学