学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科は、1学年50名の少人数体制のもと、ほとんどの学生がゼロからドイツ語学習をスタート。オーストリアやスイスを含むドイツ語圏の言語、歴史、文化、現代事情など、興味に応じて幅広い学びに挑戦でき、3年次からは「言語・情報」「文学・文化」「現代地域事情」の3コースに分かれて専門性を高めていく。各コースで学ぶ3名の3年生に、日々のモチベーションや学科の魅力をお聞きした。

左:髙橋煌生さん 神奈川県 私立鎌倉学園高等学校出身
中央:関 菜々海さん 千葉県習志野市立 習志野高等学校出身
右:阿南里奈さん 埼玉県立 和光国際高等学校出身
同じスタートラインから主体的にドイツ語を学習
―まずはこの学科を選んだ理由から教えてください。
関 私は高校時代の吹奏楽部でドイツの作曲家による楽曲を演奏したことがきっかけです。クラシック音楽の担い手が貴族から一般市民へと変化していったその過程に興味を持ちました。ただ、入学後はドイツ語の仕組みや構造を学ぶことに楽しさを感じるようになり、現在は「言語・情報コース」のゼミに所属しています。
髙橋 高校の世界史の授業でナチス時代に興味を持ったことがきっかけで、現在は「文学・文化コース」に所属しています。ナチス政府が前衛的な作品に「退廃芸術」のレッテルを貼ったことや、音楽などがプロパガンダとして使われた側面にも着目して、当時の人々の生活を紐解いていきたいと考えています。
阿南 私はオープンキャンパスで体験授業に参加し、ドイツ語だけではなく、現代ドイツの環境政策やジェンダー政策なども学べる点に魅力を感じました。現在は入学当初から決めていた「現代地域事情コース」に所属しています。
―ズバリ! ドイツ語は話せるようになりますか。
髙橋 最初は男性名詞や女性名詞、中性名詞といった複雑さも感じますが、話せるようになる環境は整っています。1年次にはネイティブの先生と日本人の先生の3名体制で、日本語での説明も交えた授業をしてくれた上で、2年次からはネイティブの先生による“オールジャーマン”の授業で鍛えられます。私の場合、高校までの英語学習は、どちらかというと受け身でしたが、大学でのドイツ語学習は自分が主体的に選んだ道ですので、積極的に取り組めています。
阿南 少人数での対話型授業で積極的に発言していけば、話す力は着実に培われます。また、先生方との距離が近いためフランクな関係を築けますし、授業中だけでなく、廊下で先生とすれ違う際にドイツ語で挨拶を交わすこともあります。言語習得に積極的な周囲の学生の存在も刺激になりますね。
関 ドイツ語は英語に比べて日常的に触れる外来語が少なく、初めて見る単語ばかりのため辞書は欠かせません。語彙の習得は大変ですが、英語と大きく異なる文の構造や発音に新鮮な気持ちで取り組めるのも魅力のひとつです。また、この学科では多くの学生が基礎からドイツ語を学び始めるので、同じスタートラインで気後れせずに頑張っていけます。私は「通訳・翻訳者養成演習」という授業をきっかけに、担当の先生の紹介でオーストリア大使館主催のワイン試飲会で通訳のアルバイトをしました。オーストリアワインの生産者と日本のバイヤーを結びつける仕事を通じて、ドイツ語学習のモチベーションが高まると同時に、日本語力の大切さも再認識できた貴重な経験となりました。
実社会で有用な考察力が磨かれる
―ゼミでの学習内容や関心のある研究テーマについて教えてください。
関 私の関心があるテーマは「音声学」です。第2言語としてドイツ語を学習する際に、ドイツ語特有の発音がどのように習得されていくのか、また母語によってどの発音が難しいかなどを調べています。舌や口の動かし方を理解することは、私自身の発音向上にも役立っています。
髙橋 私の根底にあるのは、歴史を知りたい、自分が知らない時代の文化や価値観を知りたいという気持ちです。ユダヤ人や反ナチスの作家が生んだ文学作品や美術作品、音楽作品などをナチス政府が弾圧していた中で、政府ではなくて当時を生きていた普通の人たちはどんな文化に触れていたのか、どう考えていたのか。オーストリアとの比較もしながら調べています。
阿南 私はドイツの社会システムに関心があります。例えば、ドイツが先進国だと言われる環境政策では、国民が環境を意識した行動をとらざるを得ないように、システムを構築している部分があります。このシステム作りの上手さは、日本も参考にできることがあると思います。あるいは、ジェンダーに関して、例えば公共のトイレや更衣室などで設けられている男女の区別は、ジェンダー意識を植え付けるという側面があります。つまり、社会システムには人々の意識を作り上げる力があるのだと思います。時には、これらが生み出す価値観を当たり前と捉えず、疑ってかかることも必要だと考えます。現代事情について、何がどうあるべきか、正解がない難しさがありますが、ゼミを通して批判的に物事を見つめ直す力や、着眼点を変えて多角的に考察する力を養っています。
新発見の連続で自分の引き出しが増えていく
―最後に、学科全体の魅力と今後の目標を聞かせてください。
髙橋 この学科は1学年50人という少人数で、知らない学生はいない関係性のもと、幅広いテーマを学べることが魅力です。今後は、まずは大学院に進んでゼミでの研究内容を深めたいと考えています。一方で、教育に携わる将来像を選択肢の一つとして考えており、現在は教職課程も履修中。ドイツ語教員の免許のほか、史学科の教職科目を履修することで、地理歴史の免許も取得したいと思っています。
阿南 多様な学びに挑戦できるこの学科は、たとえドイツ語圏に関する知識が少なくても、入学後に自分の引き出しを増やしたい方におすすめです。物事に対する新たな視点や価値観に気づくことができ、それが自分の可能性を広げてくれるようにも思います。だからこそ卒業後は、例えば広告業界などに進み、従来にはなかった視点での情報発信に携われる仕事ができればと思っています。
関 私は卒業までに、ドイツで1年間の長期留学を目標としています。この学科では、ドイツ語力を磨くだけでなく、ドイツ語圏の現代事情や歴史、文化についても理解を深めていくことができます。その過程では常に新しい発見の連続です。知的好奇心が旺盛で、新しい知識を得ることを楽しめる方には、ぜひこの学科に来ていただきたいですね。

<関連記事>PR
学習院大学教育学科
教員としてのバランス感覚が養われ“自分を信じる力”が培われる4年間
