札幌学院大学は「学の自由」「独創的研鑽」「個性の尊重」を建学の精神として1946年に開校し、4学部7学科を擁する文系総合大学へと発展。2021年には、江別キャンパスに次ぐ新札幌キャンパスの開設や新学部設立といった節目の年となり、創立時の理念を現代版にアレンジするリブランディングが行われた。北海道内では「サツガク」の愛称で親しまれている札幌学院大学の進化について、菅原秀二学長にお話をうかがった。
菅原秀二 学長
北海道大学大学院文学研究科(西洋史学専攻)博士課程単位取得。1989年4月札幌学院大学人文学部(英語英米文学科)講師として着任。人文学部教授を経て現職に至る。この間、2度にわたりイギリス(レスター大学およびロンドン大学)に留学している。
社会と連携しながら学びを深める新キャンパス
―リブランディングの内容をお聞かせください。
本学におけるリブランディングでは、本学の理念である「自律」「人権」「共生」「協働」を発展させて、時代に合わせたブランディングの見直しを行いました。こうして生まれたのが、本学をひと言で表現する「One life, Many answers」というタグラインであり、いわば本学のキャッチコピーです。「人生は一度きりだが多くの可能性があり、答えは一つではなく無数にあるため、挑戦を繰り返して答えを見つけよう」というメッセージです。人生を真剣に考え、試行錯誤をする、多様な学生をサポートする教職員全員の思い、そして、〝面倒見の良い大学〟の姿を現代的に表現したものといえます。
―新たな取り組みの具体例はありますか。
本学では、教養科目「地域貢献」において、毎年、地域課題を学生目線で解決する取り組みを行っています。今年度は、大和リース株式会社北海道支店と連携し、この科目の受講生がBiVi新さっぽろの飲食店のプロモーション動画の制作をしたり、厚別区の夏祭りにキッチンカーを出したりして、イベントの盛り上げに貢献しました。2023年7月に発足した、本学と札幌市厚別区、北星学園大学、地域団体による「学生まちづくり促進ネットワーク」(通称:学まちネット)への2024年度の本学の参加人数は95名にのぼり、地域の夏まつりやこども食堂ボランティア等に参加しています。
他にも、一般社団法人新さっぽろエリアマネジメントとの連携事業として、心理学部の教員と4つの学生サークルが「新さっぽろ健康フェス」に参加し、「脳トレ」、「お笑いコント」、「防災講和」、「アクティブリンク清掃活動」を行いました。
一方、江別キャンパスでは、「えべつ健康フェスタ」に心理学部の教員と心理系サークルが参加し、市民向けに「脳トレ」企画を行ったほか、江別市のまちづくりをテーマとした「えべつ未来づくりコンペティション」に学生を派遣し、特別賞を受賞しています。
江別キャンパスのコラボレーションセンターの活動では、使用済みコンタクトレンズケースの回収事業「アイシティecoプロジェクト」に対して、感謝状が授与されたほか、「利尻島「地域創生フィールドワーク」」事業が実施されました。
経済、政治、福祉、文化など多角的に地域を捉える目を養う
―これまでにも地域連携活動の実績はあると思います。
例えば、学生のアントレプレナー教育の一環として「学生ビジネスプランコンテスト」を2024年2月22日に開催し、本学を含む道内の大学等から11チームが出場しました。ここで提案されたビジネスプランを実現化する取り組みとして、コーセー化粧品と連携し、「若者向けの化粧イベント」を8月23日に開催し、100名を超える来場者がありました。
江別キャンパスでは、江別市を含む8市町の地域活性化と学生の地元定着等を目的として2019年に組織された「学生地域定着推進広域連携協議会」主催のボランティア(通称:ジモガク)に、2024年度は延べ数224名の本学学生が参加しています。
本学は2019年、日本で二番目となる「フェアトレード大学」に認定されて以降、学生たちが熱心に活動しています。また、2024年10月7日に文化庁の「高等教育機関における日本遺産サポーター登録制度」により、本学が北海道初の「日本遺産サポーター大学」に登録されました。これは、根室市・標津町・別海町・羅臼町の1市3町が日本遺産「『鮭の聖地』の物語〜根室海峡1万年の道程〜」として日本遺産に認定されている中で、本学経済学科の教員と学生が中心となり、2018年度以降、この地域における調査・研究を継続している取り組みが評価された結果です。
地域連携では、経済の活性化や文化振興、さらには政策的な側面など多様な切り口がありますが、共通しているのは幅広い視点で地域の価値を把握し、その上でその地域に貢献しようという意識であり、このような様々な活動を通じてこの意識が学生に定着しつつある実感があります。
―その他、貴学の特徴となる活動についてお聞かせください。
地域との「共生」「協働」とともに、本学の特徴は学生同士の「共生」「協働」を推進させていることです。この活動は「ピアサポート」と名付けています。例えば、障がいのある学生へのサポートをする「アクセシビリティ・学生スタッフ」や留学生のサポートをする「グローバルチューター」、オープンキャンパスで高校生のサポートをする学生スタッフ、大学の広報を学生目線で発信する「学生広報スタッフLINK」などがそれにあたります。また、そのうちの一部は公的補助の対象となる学内ワークスタディとして実施しています。学生が大学内で様々な活動に従事し、学生同士あるいは高校生などをサポートすることは、本学の理念や教育目標を具体化する活動であるといえると思います。
―菅原学長の「地域貢献」に懸ける思いもお聞かせください。
私自身は、人文学部英語英米文学科でながく「イギリスの歴史・文化・社会の研究」と題するゼミを主催してきました。その際に、ゼミの学生をイギリスに連れていき、実際にイギリスを体験してもらうことを実践してきました。「地域貢献」というのとは、違うかもしれませんが、実際に現地に足を運ぶ大切さは十分に理解しているつもりです。本学はこのような体験を多くの学生にしてもらえるような授業を提供していくのはもちろん、授業以外でもその機会を積極的に提供していこうと考えています。
熱中する気持ちが学ぶ意欲へとつながっていく
―近年の入試状況や就職状況を教えてください。
2025年度入試で特徴的だったのは、学科間で定員充足率に不均衡が生じたことです。私の仕事としては、各学科の魅力をアピールし、この不均衡を解消することであると考えています。
また、就職状況については、ここ5年間は90〜95%の間で推移しています。特に2024年度は、2月に開催した「業界・企業研究会」には4年生だけではなく3年生及び2年生が全体の40%を占め、就職活動の早期化が進んでいることを実感させられました。この意味で就職支援の充実を1年生から図っていくことが重要な課題となると考えます。この問題はキャリア科目の再編やキャリア支援課職員とキャリアアドバイザーや各教員とのコラボなどで対応していくことになります。本学の就職支援の満足度は97%であり、その体制については、充実していると自負しています。
最後に、受験生のみなさんには、大学で何か「熱中できること」を見つけてくれるよう期待しています。それは学問に限らず、趣味でも構いません。熱中する気持ちは、いつか学ぶ意欲へとつながっていくものです。好きなことに熱中できること自体が、学びの芽となるのです。