学習院大学文学部教育学科は、小学校教員の養成を軸とし、中高を含めた教員志望者のほとんどが教員採用試験に合格。一方で、一般企業での活躍を目指す学生向けにも充実した学習環境を提供しているため、異なる思いを持つ3名の2年生に、入学の動機や、入学後の学び、今後の目標などをお聞きした。
佐々光太さん
東京都 私立高輪高等学校出身
高校時代はウエイトリフティング部。現在も空き時間に西2号館のトレーニングルームで筋トレ中
髙見咲帆さん
神奈川県 神奈川県立横須賀高等学校出身
高校時代は野球部のマネージャー。大学では手話サークルに所属し、新たな対話スキルを習得中
原 将さん
東京都 東京都立小山台高等学校出身
高校時代は「都立の星」の野球部に所属。現在は体育会のフィールドホッケー部で精力的に活動中
教員としての資質は幅広い分野で役に立つ
―みなさんが教員を目指したきっかけからお聞かせください。
髙見 私は3人の弟たちと遊ぶ感覚で日常的に“子守り”をしてきて、学校では班長や学級委員になることもしばしば。友だちに勉強を教えることも好きでした。周りからは「先生に向いている」と言われ、私自身も自分の性分に合っていると思いましたし、ほかの将来像のイメージが湧くこともなく小学校教員を目指すようになりました。
佐々 私は高校時代になかなか成績が伸びなかった時期があったのですが、担任の先生が応援し続けてくれたことがきっかけです。とても嬉しくて、自分も教育の最前線に立つ教員になろうと決意しました。現在は国語・社会いずれかの中高の教員を目指しているのですが、教科別の指導スキルを修得するだけなく、子どもとの接し方をはじめ、教育を根本から学ぶために教育学科を選びました。
原 私の場合、現在は教員以外の将来像を考えています。入学当初は教員も選択肢に入っていましたが、教育学科では周囲とコミュニケーションを取りながら自分の考えを発信する機会が豊富。社会に出れば教員でなくても自分の意見をわかりやすく伝える力が重要ですし、教育学科の環境を生かして、多分野で発揮できる“伝える力”を伸ばしたいと思っています。
―入学後の印象や、成長を感じる点を教えてください。
髙見 教育学科では模擬授業のような実践的な学びのほか、特別支援が必要とされる背景や、一部の子どもが授業についていけない要因のほか、親との関係性を含めた問題行動の要因などを幅広く学んできました。その上で私は、自分なりの工夫を模索し、その一つが、わざと“とぼけるフリ”をして子どもたちに問いかけ、発言を引き出す方法です。子どもたちは「知ってる!」と意気揚々と発言してくれますので、さらに話したくなるように「褒める」ことも重視。引っ込み思案の子や、「介護等体験」で訪れた特別支援学級には自閉症の子もいましたが、こちらが身構えることなく真正面から向き合い、適宜“とぼけ”て話題を振って対話ができたことは自信になりました。
原 「介護等体験」などのプログラムや日々の授業は、小学校教員に必要なスキルの獲得が主な目的ですが、捉え方次第で学習指導という枠を越えた力が培われます。ある授業では、学生の模擬授業やプレゼンテーションに対して、ほかの学生が感想を述べ合う時間が設けられます。内容を自分なりに理解し、わかりやすく感想や意見を発信する中で、伝える力が鍛えられますし、私も模擬授業をとおして、必要な情報を伝えるために相手の反応を見極める眼力や対応力が養われてきた実感があります。
佐々 教育学科は対話を軸に置いており、多くの授業で個々の感想を周囲と共有する時間があります。だからこそ私が指導案や授業計画を練る際にも、まずは児童・生徒が一人でじっくりと考え、芯のある自分の意見をまとめる時間と、グループワークで周囲の意見に触れて考えを深める時間を大切にしています。グループワークだけでは周囲の影響を受けやすく、自分の考えを固めにくいからです。模擬授業では力不足を痛感する場面もありますが、特に国語では、これらの時間を設ける指導案づくりを意識しています。
少人数のホーム制で密にコミュニケーション
―学科内では日頃から対話が活発なのですか。
髙見 教育学科では1学年50人が「ホーム」という8つのグループに分かれます。私は青ホームですが、全学年の青ホームが交流し、下級生が上級生からアドバイスをもらう機会も多々あります。また、8ホーム対抗の運動会もあり、1・2・3年生が参加。学校行事の運営も教員の役割のため、企画力や実践力を養うために3年生が主体となって運営します。
佐々 そもそも少人数ですのでみんな仲が良く、仲間に対する理解度や解像度は高まるばかり。「自然体験実習」などにもホームの先輩がアシスタントとして参加し、課題や試験対策などの話を聞くだけではなく、純粋に親しくなっていけます。メンバー次第でホームのカラーが違ってくる点も面白いところです。
原 私は人見知りな性格でしたが、学年の壁を越えた多くの学生との交流によって、自己表現力を引き上げてもらった感覚があります。教科書には載っておらず、独学では学べないようなコミュニケーションスキルや自己表現力が培われていくことが、教育学科の魅力です。
髙見 他大学に通う友人の話を聞く限りでは、学習院の教育学科は異色。常に人とのつながりを感じながら学べるため、自分自身が小学校に戻ったような気持ちにさえなります。家庭科の調理実習や図工の版画などで懐かしい気持ちにもなりますし、楽しみながら学んでいけます。
安心感が大きいと将来へのワクワクも大きくなる
―今後の目標や受験生へのメッセージをお願いします。
佐々 小中高のどの段階でも、勉強ができる子もいれば苦手な子もいて、それぞれに悩みがあるはず。私は全員を等しく受け止められるだけの余裕を持ち、授業外のことにも気配りができる教員が目標です。
髙見 楽しく遊ぶことが中心だった幼稚園や保育園と違い、小学校では“学習”が始まります。私は、学ぶ楽しさを伝え、1年生から6年生へと大きく成長していく支えになりたいですし、中学校以降の学習にもスムーズに入っていける力を伸ばせる教員になりたいですね。
原 私は教員以外のどんなフィールドで自分の力を発揮できるのかは未知数。多少の不安は感じるものの、どんな道に進むにしても、誰にでも気軽に相談でき、先生方も親身に相談に乗ってくれる安心感があり、将来に向けたワクワク感の方が大きいです。3年次になるとゼミが始まり、学生や先生方とさらに親密な関係になり、深い話ができることも楽しみです。話し好きな学生、人見知りな学生、教員志望の学生、教員だけが目標ではない学生。こうした多様な学生が、壁を感じることなく充実した学生生活を送れることが、この教育学科の強みですね。