一般的に女子大学は「面倒見が良くサポートが手厚い」と評価されるが、支援の手厚さというのは意外と比較が難しい。だが白百合女子大学では、「相談利用実績の割合」や「キャリア支援スタッフ一人あたりの担当学生数」などデータで語れるきめ細かな就職支援体制を構築している。キャリア支援課長の大葉勇一さんにお話をうかがった。
2タイプの支援を絶妙なバランスで展開
キャリア支援課長 大葉勇一さん
―白百合女子大学では、就職支援でどのような取り組みをされていますか?
本学では大学側から学生に働きかける「プッシュ型」、学生が主体的に我々を活用する「プル型」、2つのアプローチを組み合わせた支援を展開しています。就職支援は学生の年次や適性により一人ひとり必要とするものが異なります。学生のニーズに合わせて個別に最適化した支援を提供していくのが本学の特徴です。プッシュ型支援の代表的な取り組みは、3年次の春・秋に行う個別オリエンテーションです。2回実施するのは採用活動の早期化・採用方法の多様化の中で夏のインターンシップが一般化したためです。学生の多くが就業体験を通じて成長し、職業観に多少なりとも変化が生じます。春と秋に面談することで学生の小さな変化をいち早くキャッチし、さらなる就職支援につなげていけるのです。その他にも本学では全学生を対象に「ライフ・リテラシー」「キャリア研究」という必修科目を設置し、自己理解や社会に対する基礎知識を育みながら将来のキャリアビジョンを考えるきっかけをつくっています。
―後者のプル型支援にはどのようなものがあるのでしょうか?
典型的な取り組みとして、就職ガイダンスや学内企業説明会を開催しています。学生が入学直後から参加したくなるような雰囲気づくりを心がけており、既に1年生の6割以上が参加してくれました。ここでは学生の視野を広げるために、幅広い業界で活躍するOGや人事担当者にお話をうかがっています。かつて本学卒業生の就職先は、金融・保険業がかなりの割合を占めていましたが、近年は卸売・小売業、IT系等進む業界や職種も多様化しています。学生に早くから幅広い業界に目を向けてもらうとともに、保護者向けにも昨今の就職事情を認識してもらうためのガイダンスを実施し、参加を呼びかけています。
そしてプル型支援の中核を担うのが、キャリアカウンセラーとの個別面談です。学生は在籍する13名のスタッフから目的やタイプに応じて自分でカウンセラーを指名し、継続して何度でもアドバイスを受けられます。面談では就職に対する考えを整理したり活動をどう進めるかという初期の悩みから、書類添削・面接対策など実践的なことまで、幅広い相談に乗ってくれます。スタッフ一人あたりの担当学生数が約27名と非常に手厚い配置になっているため、一人ひとりの主体性や成長の度合いに合わせたサポートが展開可能です。学生の面談利用率は80%という高水準であるのも、本学のきめ細かな対応が支持されている結果と受け止めています。
Wアドヴァイザーが進路実現をサポート
―今年から文学部でWアドヴァイザー制度が始まりました。改めて概要を教えてください。
これまでも教員はアドヴァイザーとして履修指導を常時行っていました。この春からは、さらにキャリア支援課のスタッフがキャリアアドヴァイザー(CA)として入学直後からつくことで、学生一人に2名のアドヴァイザーが伴走し、より手厚い支援を行っています。具体的にはキャリアアドヴァイザーは自身のコンピンテシーに関する理解と成長を促すため、ジェネリックスキルを測定するPROGテストを活用した個別面談を実施します。コンピテンシーは学生自身が意識して行動することで伸ばすことができますから、具体的にどのような行動が必要となるかアドバイスするのです。一方、アカデミックアドヴァイザー(AA)である教員は学習面の不安に寄り添ってサポートするだけでなく、リテラシーを高めると同時に、学生のキャリアビジョンに合わせて進路が広がるよう履修指導等も行います。2人のアドヴァイザーはお互い情報を共有するシステムを活用しながら直接の意見交換も定期的に実施します。
PROGテストは3年次前期に再度実施するので、学生自身の立ち位置や変化を可視化できます。自分の数値を認識しながら課題となる部分も意識して学生生活を送ることで、思い込みを排除した適性の把握や成長にもつながるはずです。
―この制度を文学部に導入した背景を教えてください。
文学部というと直結する職業のイメージが薄く、「学びとキャリアが接続していない」と思われがちです。ところが文学部は学びの幅が非常に広く、汎用性も高い。学生は学びながらそのことに気づきますが、最初のうちは実際のキャリアとどう結び付けるかサポートが必要になることもあるんですね。文学部では「領域横断型チャレンジ履修」として20の自由選択プログラムが設置されました。Wアドヴァイザーが連携する支援体制があることで、学びが分散しないようアドバイスしたり、キャリアビジョンと紐づけて「こんな学びの組み合わせもあるよ」と提案したりすることも可能になるのです。両アドヴァイザーが1年次からサポートすることで、最終的に学生一人ひとりがより納得する形で進路が決定できるよう期待しています。
選んだカウンセラーと好きなだけ相談できる!
Y・Hさん
文学部 国語国文学科 4年生
(神奈川県 私立S高校出身)
3年生のとき、就職ガイダンスに参加したことをきっかけに大学のキャリア支援を活用するようになりました。キャリア支援課にはいろんなカウンセラーの方が在籍していて、自分の好きな先生をWebで選んで予約できます。最初はいろんな先生と面談してみて、話しやすくて相性のいい先生を見つけることができました。私は自己分析が苦手だったのですが、その先生が分析を手伝ってくださり、どこが自分の強みなのか一緒に考えてくださいました。それを元にエントリーシートを改善してからは、どこに出しても通るようになりましたね。ある企業の面接の前日にも、その会社が出ている新聞記事を見つけて連絡してくださったりと、最後まで非常に手厚くサポートしていただきました。面接は時間も枠も十分に用意されているので、好きなときに何でも相談できる場所として、いまも頻繁に利用させていただいてます。