2025年度入試(25年4月入学)では、私立大学の一般選抜志願者数ランキングに注目すべき動きがあった。千葉工業大学が16万2005人の志願者を集め、初の日本一となったのだ。都心部に所在せず、しかも総合大学ではない理工系大学がここまでの志願者を集めるのは、異例のことだ。数多くの受験生に受け入れられている千葉工業大学の魅力について、入試担当を務める副学長の大川茂樹教授に聞いてみよう。
副学長(入試及び就職担当)
大川茂樹 教授
―25年度入試の一般選抜で、貴学は全国で最多の志願者数を集めました。多くの受験生を引き付けた要因は、どのようなところにあるのでしょうか。
志願者数日本一というのは我々も想定しておらず、この結果に驚いているところです。受験生に選ばれる大学となるために様々な取り組みをしているのですが、今回は大きく2つに分けて、学問領域の多様性と、入試制度の工夫についてご紹介いたしましょう。
まず本学は、1学年につき約2000人、総数では大学院生を含めると1万人を超える学生が所属しており、理工系大学としては規模が大きいという特徴をもっています。それだけ多くの学生が集まっているのですから、学びの領域にも多様性を持たせたいと考え、5学部17学科を用意しています。機械、電気、情報、建築、デザイン、経営など、理工系のほぼあらゆる領域をカバーしており、学びたい内容が明確に決まっている受験生はもちろん、分野を決めかねているような受験生でも受け入れられるような体制となっております。
また、本学部の5学部17学科はそれぞれが全く別の内容を学ぶのではなく、一部、似たような分野について、異なる角度からアプローチをする構成をとっています。様々な学び方を用意していますので、受験生にはその中から自分に合ったものを選んでほしいという思いがあります。
受験生目線に立った出願しやすい入試制度とは
―入試制度はどのような工夫をされているのですか。
受験生目線に立ち、極力負担の少なくなるような制度を設けています。例えば、複数の学部学科を併願する際、何度も入試を受けるのは受験生の負担が大きいですから、1回の受験で併願できるようにしています。その際、何学科併願しても検定料は変わりません。1つの方式で複数日受験をした場合は1日につき5000円の加算がありますが、最終的に本学に入学された場合は、その加算分については受験生へ返還をしております。
また、共通テスト利用入試の場合は本学で入試を行う手間がないわけですから、検定料は無料としています。こちらも何学科でも併願することが可能です。他にも、入試が行われる前日まで出願を受け付けていることや、様々な方法で評価する入試種別を、年内入試も含めれば10種以上用意していることなど、多様な受験生が各自の力を十分に発揮できるよう、制度を整えています。
注目される宇宙・半導体分野の学び
―25年度より工学部に開設した宇宙・半導体工学科も早速多くの志願者を集めています。
惑星探査研究センターという直轄組織を09年に開設したこともあり、元々学内に宇宙工学を専門とする教員が複数人おりました。加えて、近年は世界的に半導体の需要が高まっており、国内でも半導体について学んだ人材が不足しているという課題があります。この2つの領域を結び付けて、工学部内に元々あった機械電子創成工学科を改組する形で開設したのが宇宙・半導体工学科です。宇宙と半導体ともに注目度の高い分野ということもあって、初年度の入試は一定の成功を収めることができました。この先は、入学した学生を満足させるような学びを提供しつつ、学科の魅力をうまく発信していければと考えています。施設としては、宇宙系の実験スペースは学内に既にありますので、現在は本格的なクリーンルーム仕様の半導体実験室を作っている最中です。
―ほかの学部学科についてはいかがでしょうか。何かトピックがあれば教えてください。
24年度に、情報系の学部改編を行いました。情報科学部と社会システム科学部という2つの学部を、情報変革科学部、未来変革科学部という2つの新設学部に再編したのです。今年度は2年目に当たります。「変革」は学部名としては非常に珍しいものだと思いますが、本学の伊藤穰一学長がこのキーワードをとても大切にしており、2つの新設学部の名称にも入れることになりました。
理工系の分野では、絶えず変化が起きています。例えば、今現在私たちが当たり前に使用しているインターネットやスマートフォンは、40年前には存在していなかったものです。しかし、これらのものは何もないところから突然誕生したわけではなく、人々が想像すらしていなかったその当時から地道に研究を重ねていた人がいて、その成果として登場したものと言えます。同じように、今は誰も想像すらしていないが、何十年か後の未来を変えるような技術を、千葉工業大が作っていきたいという思いが、“変革”というキーワードに込められています。
―最後に、高等学校で進路指導に当たる先生方へのメッセージをお願いします。
先生方も体感しておられると思いますが、非常に変化の激しい時代になってきています。先の見通せない時代では、どうしても今までの情報を頼りに、“守り”に入るような選択を選びがちになってしまいます。そんな中でも、将来のある高校生たちにはぜひ、一歩前に踏み出して、10年後、20年後を予測して学ぶような“攻め”の選択をしていただきたいです。そのために、千葉工業大は絶好の進学先の1つとして、お薦めいたします。