創価大学は1971年の開学以来、平和に貢献する「世界市民」の育成を掲げ、グローバル教育に強く、人間教育に尽力する大学として歩んできた。この理念と伝統を基盤としつつ、社会に新たな価値を生み出し続けるためのグランドデザイン※を策定し、SDGsの達成や多様性のあるキャンパスの構築も進めている。そして、2026年4月には学部改組や新学科開設を予定しており、未来に向けてさらなる一歩を踏み出す。
今年度から新たに就任した鈴木美華学長に、創価大学の教育と今後のビジョンについてお話をうかがった。
※:「Soka University Grand Design 2021-2030」https://www.soka.ac.jp/sgd2030/
―鈴木学長はご自身も創価大学で学ばれ、弁護士としての実務を経験されるとともに、法科大学院や法学部で教授を務めてこられました。さまざまな立場から見た、「創価大学の人間教育」について教えてください。
本学は、開学時から創立者池田大作先生が示された「学生第一」の理念のもと、人間教育に力を入れており、人と人との絆がとても強い大学です。学生同士は仲が良く、先輩は積極的に後輩のサポートをしています。学生と教員や職員との距離も近く、隔たりのない関係を築いていますし、卒業生も在学生のために惜しみない支援をしてくれます。それは、学生をはじめとする本学の関係者の多くが、他者のために尽くすことを自分の喜びとしているからだと思います。
たとえば、キャリアサポートでは、学生が1、2年生や、就職活動中の3年生への個別相談などに熱心に取り組んでくれているのですが、それらはすべてボランティアです。アルバイト代を支給すべきか学生に尋ねたこともあるのですが、「ボランティアで行動するところに価値がある」と言われました。「自分が先輩からしてもらったことを後輩にもしてあげたい」と話す学生もいました。自分が受けた恩を次の世代に還元していく伝統が成り立っているのだと思います。
私は学生時代に本学の卒業生である弁護士の方の講義を受けたことが弁護士を志すきっかけになりましたし、司法試験合格までにたくさんの支えをいただきました。また、ゼミの先生が素晴らしい人格者の方で、多くのことを学ばせていただきました。学生の皆さんにも、ともに学ぶ仲間や導いてくれる先輩や教職員と出会い、また後輩と出会い、人間として大きく成長していただければと思います。
―学長としてどのような取り組みに力を入れていかれるのでしょうか。
建学の精神である「人間教育の最高学府たれ」「新しき大文化建設の揺籃たれ」「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」を基礎に、まずは2021年に2030年までの中長期計画として策定したグランドデザインの施策を進めていきたいと思っています。
私が初の女性学長ということで、ダイバーシティやインクルージョンに期待する声もいただいています。現在、ダイバーシティ・インクルージョン推進センターを中心に、留学生をふくめた学生や教職員の誰もが安心して学び、働くことができる環境づくりに取り組んでいますが、そうした活動をさらにバックアップしていきたいです。最初にお話しした通り、人と人との絆の深さが本学の大きな魅力ですから、コミュニティに入りづらい学生の後押しができればいいですね。
社会課題の解決に挑む新たな学部・学科を開設
―2026年度に予定されている、学部改組と学科新設について教えてください。
2026年4月から、経済学部と経営学部を統合した経済経営学部ビジネス学科を新設、理工学部にグリーンテクノロジー学科と生命理工学科を新設します。いずれも変化の激しい社会の動きを見据え、これからの世の中で必要とされる知識やスキルを提供していくことが目的です。
経済経営学部ビジネス学科では、理論と実践を相互に学びながら専門性を磨く教育を展開します。ワークショップなどを通して、人間主義を軸とした新しいリーダーシップ力やチームビルディング力を養成します。
理工学部のグリーンテクノロジー学科は、世界が直面している環境問題の解決のために、文理融合の学びに取り組みます。また企業との連携、海外の大学との共同研究で、社会実装を目指します。
生命理工学科は、生命科学分野を中心に理論と応用を融合させ、技術の発展と心の豊かさを調和させたヒューマン・ウェルビーイング社会の実現を目指します。
―26年度には学科の名称変更も予定されていますね。
学びの内容をよりわかりやすくすることを主な目的として、法学部法律学科を法律政治学科へ、教育学部教育学科を心理・教育学科へ変更予定です。
法学部の学部長をしていた際に、オープンキャンパスにいらした高校生の方から「法学部は弁護士になる勉強をするのですか」といった質問をよく受けました。法律は政策や政治と深い関わりがあり、本学では政治・政策関連の科目も多いのですが、法律学科という名称では法律のみという印象が強くなります。心理・教育学科も同様です。本学では教育に欠かせない心理学もしっかりと学べるため、そうした点を明確に伝えるための名称変更です。
新たに設置する3学科とともに、さまざまな分野に興味関心を抱く高校生の皆さんが、学びたい内容にアクセスしやすくなれば嬉しいですね。
―最後に高校生に向けてのメッセージをお願いします。
学生生活は、人生においてとても貴重な時間です。それぞれの興味関心のある学びに加えて、「こんなことを頑張りました」「こんな挑戦をしました」「こんな友達ができました」と誇れるものを掴んでほしいと思います。皆さんが楽しく充実した4年間を過ごすための教育環境や支援体制、そして何よりすばらしい仲間が待っています。