総合型選抜、慶應SFCに5名合格!「自ら学び行動できる力」で人生を切り拓く―湘南学園中学校・高等学校

PR 取材:井沢秀(大学通信 取締役 情報調査・編集部部長)
総合型選抜、慶應SFCに5名合格!「自ら学び行動できる力」で人生を切り拓く―湘南学園中学校・高等学校

近年の大学受験で年々存在感を増している入試形態、それが総合型選抜です。大学入学者全体に占める総合型選抜の入学者の割合は4年連続で増加。文部科学省が昨年行った調査によると、総合型選抜の実施率は国立大学78.0%、公立大学43.6%、私立大学93.4%にも上っており、いまや大学全体の8割以上が総合型入試を導入しているのです。

一般選抜では学力が評価の主軸となりますが、総合型選抜では受験生が大学の求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合っているか、という点が重視されます。例えば「在学中に学業以外で取り組んだことやその成果」や「入学後にどんなことを学びたいかという意欲や目的」などを、書類選考や面接を通じて総合的に評価しているのです。

総合型選抜は今後もさらに広がっていくことが見込まれていて、そのことが中学選びにおいても影響を与えるようになってきました。知識や学力を十分につけることは言うまでもありませんが、そこに加えて新しい体験や探究の機会を提供し、子どもたちが主体的に学びを深めて成長できるよう教員が伴走するーーこれからはそんな環境づくりやファシリティ整備に力を入れている学校が注目されていきます。

その好例として、今回は神奈川県藤沢市にある湘南学園中学校・高等学校を取材しました。なんとこの学年は1学年から6名がSFCに合格。そのうち5名が総合型選抜で慶應義塾大学・湘南藤沢キャンパス(以下SFC)に合格し、4月に入学を予定しています。今回はそのうち3名(田中寛基さん・志澤舞さん・田辺奈々葉さん)が集まってくれました。

総合型選抜、慶應SFCに5名合格!「自ら学び行動できる力」で人生を切り拓く―湘南学園中学校・高等学校
写真=左から田辺さん 志澤さん 田中さん

・中学・高校時代に取り組んできたこと。
・総合型選抜に向けてどのような準備や対策を行ったのか。
・学校はそれらをどのようにサポートしてくれたのか。

中学受験をめざす子どもたちや保護者の方々には、学校選びや進路を選択するうえで参考になる示唆に富んだお話を伺いました。

生徒の主体性を信じて任せる、自由闊達な校風

ーまずは、皆さんが湘南学園を選んだ理由やきっかけをお聞かせいただけますか?

田中:僕が初めて湘南学園を訪れたのは学園祭でした。他校にはないアトラクションなどたくさん催しものがあって、「生徒にいろいろ自由にやらせてくれる学校だな」と興味を持ちました。入学したらパソコン部に入りたいと思い、その後で参加した学校説明会で担当の先生に聞いてみたら、「CGだけじゃなくてMMDや音楽制作など、何でも挑戦してみよう」とお話ししてくれました。生徒のやりたいことを尊重してくれる自由な校風、それが入学を決意した一番の理由です。

総合型選抜、慶應SFCに5名合格!「自ら学び行動できる力」で人生を切り拓く―湘南学園中学校・高等学校
写真=田中寛基さん

田辺:私が入学した理由は2つあって、ひとつは同じく生徒の主体性を大事にしてくれるところです。私もやっぱり学園祭を見て「ここはすべて生徒主導なんだな」という印象を受けました。行事も学習も、生徒が主体性をもって進めていけるところが魅力だと思います。

2つめの理由は、湘南学園がユネスコスクールに加盟していて、社会課題やSDGsに関する学習に力を入れている点です。私は小学校時代から環境問題に関心があったので、より環境分野の学びが深められると思いました。

もうひとつだけ付け加えると、私たちが受験する年に新しくESD入試が始まったんです。動画の提出や文章(論述・記述試験)で受けられる入試なのですが、それまでの自分たちの活動や取り組みをきちんと評価してくれるところに惹かれて受験しました。

志澤:私は先の二人とは違って小学1年生で転校してきたので、小・中・高で12年に渡り通っています。「海の学校」「山の学校」をはじめ泊りがけで行く楽しそうな行事がたくさんあり、それも大きな動機だったと思います。じつは住まいは少し遠い小田原市内なのですが、電車移動に慣れているのでフットワークが軽いのが自慢です(笑)。

ー御三方に共通しているのが、SFCに進学予定であること。そして総合型選抜で受験したこと。まずはどのように大学を選んだのか教えていただけますか?

田中:僕はある俳優さんが好きで、その方の出身地であるミャンマーに興味を持つようになりました。そして自分で調べていくうちに、多民族国家であるミャンマー国内の民族対立や、軍事政権と抵抗勢力による政情不安、ロヒンギャの難民問題など、たくさんの社会課題を知ったのです。

そのことがきっかけで高校1年生のときに校内でミャンマーの支援団体を立ち上げて、募金活動を行うようになりました。また外部の在日ミャンマー人による支援団体にも参加していたので、宗教や民族の異なるミャンマー人の友達がたくさんできました。そこで大学では、多民族共生に関する研究をしたいと考えました。またそれを実現するためには教育や政治についても学ぶ必要があるので、調べていくうちに様々な分野を幅広く学べるSFCの総合政策学部にたどり着きました。東南アジア全体の研究もできますし、アラブ研究会があるのでイスラム教について学ぶことで、ロヒンギャ問題の考察にも役立ちます。いまはアラブ研究会と自分が立ち上げた支援プロジェクトでタッグを組んで、新しい活動に着手しているところです。

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写真=毎週土曜日15:00頃に有楽町駅前で募金活動を実施(写真は鎌倉駅 2024年末)


ー早くも大学内の団体とつながって新たな取り組みを始めているのですね。志澤さんはいかがですか?


志澤:私は中学のころからごみ問題に興味があり、調べていくうちにお菓子などの商品パッケージに関心を持つようになりました。あるとき小田原市の老舗企業で活躍するパッケージデザイナーの方とお話する機会があったのですが、「パッケージのデザインを通じて、地域の歴史や思いを伝えていきたい」という言葉に強く感銘を受けました。商品パッケージは地域の人に愛されるだけでなく、お土産やお取り寄せで全国に届くことで、「地域の看板」のような役割を果たしています。役割を終えた商品パッケージがそのまま捨てられてしまうのがもったいなくて、新たな「地域資源」としてポーチや小物として再生していこうと、アップサイクルのイベントを中学3年生のときにスタートして、それを3年間続けてきました。

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写真=志澤舞さん

地域の企業や行政の方など、さまざまな分野の専門家に協力をいただきながら取り組んできたこの活動は、「環境省グッドライフアワード2023」「全国高校生マイプロジェクトアワード」「おだわらカルチャーアワード」でそれぞれ賞をいただきました。もともと一般入試向けに勉強をしてきましたが、せっかくなので自分の自信のある分野で総合型選抜にも挑戦したいと思うようになったのです。前述のデザイナーの方がSFC出身で、活動を通じて出会ってきた人たちも地域を問わずSFC出身の方が多く、私も自然とSFCに進もうと考えるようになりました。活動は小田原や鎌倉を拠点にしていたので地理的にも馴染み深いですし、自然豊かな環境も自分に合っていると思います。

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写真=印刷ミスのパッケージを地元菓子企業からご提供いただき、多くの観光客と作り変えた。(写真は箱根でのイベント 2024年10月)

ー田辺さんはいかがでしょうか?

田辺:私はキャンパスの近所に住んでいるので、子どものころは七夕祭(SFCの学園祭のこと)に行くなどSFCは身近な楽しい場所、という存在でした。また小学校で通っていた塾で当時教えてくださったのが現役のSFCの学生で、プログラミングやAIなど自分の研究についてお話をよくされていて、それがとても興味深かった。そのことで「面白い研究をしている大学なんだな」と意識するようになりました。

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写真=田辺奈々葉さん

もともと環境問題に関心があって、高校時代はSFCの教授が主催するプロジェクトに参加して、鎌倉地域の資源問題やごみ問題に関わってきました。そこでのフィールドワークや情報収集をベースに研究を進めるという活動が非常に面白くて、自分も絶対にSFCで学びたいと思うようになりました。

実は当初親は国公立大学への進学を希望していたこともあり、国立大学も受験したんです。結果的に両方合格し悩んだ時期もありました。でも「やっぱり自分が本当にやりたいことができるのはSFCだ」と思い、親を説得してSFCに進学することにしました。

「自分たちが取り組んできた活動」で勝負したい

ーみなさんは総合型選抜を選択されましたが、どんな受験対策や準備を行ってきましたか?

田辺:私はもともと好奇心が旺盛で、受験のためというより興味本位でプロジェクトに参加して取り組んでいるうちに、「いつのまにか受験に使える材料になっていた」という感じです。

また中高を通じて委員会にもたくさん参加してきましたが、プロジェクトでも委員会でも「参加する目的と意味を明確にする」ことを意識しました。探究した事柄や行動した結果が、どう研究につながってくるのか明確になると思います。そして日々の活動から学んだことを、毎日しっかりメモしていました。自分が感じたことをリアルタイムで記録したことで、大学の志望理由書だけでなくいろんな資料作成にも役立てることができました。そうやって自分を振り返る習慣は大学受験にも活きましたし、普段の生活にも活かされていると感じます。

ー総合型選抜ではどんなところが評価されたのだと思いますか?

田辺:私はデジタルアプリケーションや3Dプリンターに関する研究を行っていたので、目新しさという点で興味を持ってもらえたのかもしれません。SFCは総合型選抜の難関校と言われているので、じつは少し身構えていた時期もありました。でも人の資料を参考にするのではなく、あくまで自分の活動を自分なりのことばで伝えられたことが評価されたのかな、と考えています。

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写真=FAB QUESTで最優秀賞をとった「みえるん」(鎌倉市民会館 2024年3月)


ー志澤さんが総合型選抜に挑戦したのは、ご自身の活動がさまざまな賞を獲ったことがきっかけになったのでしたね?


志澤:私のパッケージの活動は先ほどお話した通り、企業や行政やメディアを巻き込んで動き回っていたので、それをどうアウトプットして伝えるか、という点で非常に苦労しました。そこで論文に目を付けて毎日学校に残って1、2本を読み、気づいたり感じたことをメモして、わからないことは図に起こして理解していく、という作業を続けていました。

ーいきなり毎日複数の論文を読む生活は、なかなか大変だったのではないでしょうか?

志澤:そうですね。もともと読書はそこまで好きではありませんでしたが、論文はどんな分野に関するものでも何かしら学びがあって、だんだん読むのが面白くなってきたんです。そこからつかんだコツや学びを活かしながら志望理由書を書き起こしていきました。合格基準がわからないので書いていて不安になることもありましたが、「この準備も含めて私の研究の一環だ」と考えるようになりました。これまでは自分の活動が企業からどう見られているかを意識してきましたが、アカデミックの世界ではどんな価値があるのか確認するうえで、とてもいい機会になったと思います。

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ー田中さんも早くから総合型選抜を意識していましたか?

田中:いえ、SFCに行こうと決めたのが高校3年生の6月ごろで、それまではひたすら募金活動に打ち込んでいたんです。決めた時期としては遅いほうだったので、そこから僕もいろんな論文を読み込んで準備し始めました。

先ほどお話した通り僕には在日ミャンマー人の友だちがたくさんいて、それぞれの民族や宗教もさまざまです。それが自分の強みでもあると思ったので、出願書類ではいろんな属性のミャンマー人にインタビューを行って、彼らの思想や主張にどんな違いがあるのかを調べてみました。そして論文で読んだルワンダの政策を裏付けとして引用しながら、自分なりの解決策を提案しました。

ー受験の準備や対策を行ってきて、何か得たものや新たな発見はありましたか?

田中:面白かったのが、在日のミャンマー人同士はみんな「自分たちは民族間で対立していないし、仲がいい」と話していたことです。でもミャンマーで現地取材を行ったジャーナリストの方に聞いてみると、「いやいや、現地では対立していた」と言うんです。僕はこの意見の相違は、教育の差によって生じているのではないかと思います。というのも、僕の友人のミャンマー人は仕事や留学等の目的で来日しているので、きちんと教育を受けてきた高学歴な人が多く、実際に他民族であっても仲良く交流しています。でもミャンマー国内はそういう方たちばかりではないので、実際に対立が起きている。だからこそ教育面を改善することで、ミャンマーは多民族共生に向かっていけるのではないか、と結論づけていきました。

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「この学校でよかった」と思える先生の存在

ーみなさんがそれぞれ取り組んできた活動や受験対策において、学校や先生はどのようにサポートしてくれましたか? また、その際に印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

田辺:先ほど自分の研究テーマである3Dプリンターとデジタルアプリケーションについて触れましたが、湘南学園にはメディアセンターという施設があって、そこに3Dプリンターやレーザーカッターなど他の学校では見かけないような機材が揃っています。学校ではこのような最新機材を扱う技術を習得できましたし、そのお陰で自分の研究を進めることができたので、環境面で本当に恵まれていたと思います。

私は推薦の塾に通っていなかったので、受験対策では先生方に本当に手厚く支援していただきました。ほぼ毎日誰かしらの先生が志望理由書の添削、勉強の質問、面接の練習に対応してくださいました。どの先生もすごく忙しいはずですし、他にも添削や質問をする人はたくさんいるのに、すごく優しく最後までサポートしていただいて。

私は先生のサポートがなければこの受験を乗り越えられなかったと思いますし、本当に湘南学園に来てよかったと思うのは先生の存在です。

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志澤:私も志望理由書を担任とか教科を問わず、いろんな先生に添削していただき何度も書き直しを続けました。印象に残ったのは、面接の練習でこんなことがありました。私は「商品パッケージを活用して社会に協働の場を作りたい」という理念を志望理由書に書いていたのですが、それを読んだ担当の先生は「僕も同じような理念を持っていて、自分は教育を通じて社会の協働の場を作りたいんだ」と語ってくれたんです。ただ教える・教わるという関係ではなく、「これから一緒に社会を作っていく1人のひと」として、先生は私を対等に扱ってくださったことが、とてもうれしかったです。

田中:僕が立ち上げたミャンマーを支援するプロジェクトは、当時の担任だった物理の先生に相談して始めました。もしかしたら社会の先生に頼むべきだったかもしれませんが、その先生は担当教科が物理でもミャンマーやロヒンギャ問題などの国際情勢にも通じていて、プロジェクトもすごくサポートしてくれました。例えば募金活動を学校の制服で行う際は、必ず先生が同行しなければならないんです。自分としてはちょっと申し訳なくて躊躇していたのですが、先生は「いいよ。一緒に行こう」と当たり前のように受け入れてくれました。ときには「あの大学の教授は知り合いだから、一緒に参加してみない?」と企画を持ち込んでくれることもありました。そのうちアフリカ支援を進めたい先生が新たな企画を主導してくれたりと、先生も僕たちのプロジェクトでいろんな活動を楽しんでくれていたりして。のちのち高校生になってから、「ああ、すごく自分に合った学校に行けたんだな」と強く実感しました。

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写真=3人の担任である新倉覚先生(国語科)と一緒に

ーみなさんそれぞれが湘南学園で熱中できることを見つけて、それを先生方が手厚くサポートしてきた様子が伝わりました。最後に、この記事を読む中学受験を控えた子どもたちに向けて、湘南学園の紹介メッセージをお願いします。

志澤:ESDのツアー、丹沢山の植樹活動、地域や行政の人のお話を聞かせてもらったりなど、湘南学園はいろんな体験やイベントの入口が豊富に用意されている学校だと思います。学校生活のなかでその何かの入口を見つけてもいいし、学外で入口を見つけたとしても、それをサポートしたりヒントになるものをいろいろくれる学校でもあります。ぜひたくさんの刺激を受けながら、やりたいことを見つけてほしいと思います。

田辺:湘南学園は、やりたいことを存分にできる場所です。また、自分のやりたいことを周りの人に伝えることで、たくさんの人が集まって一生懸命助けになってくれます。自分のやりたいことや意見を自由に発信できる学校や環境ってそこまで多くないと思うのですが、湘南学園なら誰でも声を上げられるので、ぜひ入学していろんな意見を発信してみてほしいです。

田中:僕はこれまで入試のお手伝いをしたりオープンキャンパスの運営に携わってきたので、湘南学園がどんな学校か質問されると「やりたいことがある人は絶対楽しめる学校だし、やりたいことを見つけることもできる学校です」と伝えてきました。僕は入学当初は映画が好きで映画関係の仕事を目指していましたが、ある社会科の授業で考えさせられることがあり、国際課題に向き合うことになりました。その後は前述のとおり物理の先生の協力でプロジェクトを立ち上げ、活動をサポートしてきてもらいました。どの先生も自分たちのやりたいことを自由にやらせてくれて、しっかり必要なサポートをしてくれる。やりたいこと、挑戦したいことはどんどん学校や先生に持ち込んで、存分に楽しんでほしいと思います。

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PROFILE:井沢 秀(いざわ しげる)
大学通信 情報調査・編集部部長。1964年神奈川県生まれ。明治大学卒業後、大学通信入社。全国紙~経済誌まで大学や教育に関する記事を多く執筆、精力的に発信を続けている。