【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校

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【高校】科学的な探究活動を深めグローバルな視点を養う

-2025年度から高校のカリキュラムが一新され、これまでのスタンダードクラスとサイエンスクラスから、国際教養コース、リベラルアーツコース、サイエンスコースへと変わります。サイエンスコースを紹介するにあたり、まずは現在のサイエンスクラスについて、どのような特色があるのかを教えてください。

【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校
写真=サイエンス教育部 大西一成先生

大西:現在のサイエンスクラスは、中学校での探究学習であるチャレンジプログラムを経て、より探究を深めていくために2022年度に設置されました。「理数探究」の授業のなかで研究活動を行うほか、生徒たちは放課後も自身のテーマに基づいた探究活動を進めています。また、探究と並びグローバルな視点を養うことも大きな目的としています。探究活動をするうえで、日本だけでなく世界に目を向けることは非常に大切だからです。

【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校

【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校

-グローバルな視点を養うために、具体的にはどのような取り組みをしていますか?

大西:サイエンスクラスには英語での論文作成をテーマとした「科学英語」という授業があり、英語の論文の読み方や書き方を学び、最終的には研究内容を英語の論文として完成させます。高2の沖縄研修では、生徒たちは沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、ネイティブのオーディエンスを前に英語でポスター発表も行います。

サイエンスクラスの生徒は、理数や探究活動が好きな生徒の集まりなので、特に英語が得意というわけではありません。ですから、高1の段階では苦戦している生徒もいるようです。ただ、サイエンスクラスの生徒等の強みは、自分たちの探究活動の成果を伝えたいというモチベーションが高いことです。OISTでのポスター発表では、1回目の発表時にはタブレットを見ながら、用意した英文を読み上げることに精一杯で、オーディエンスと英語で受け答えを行うことに苦労していました。けれど、休憩時間になると生徒同士で「さっきの質問はどういう意味だったんだろう」「ここは英語でこう表現したらよさそう」というように話し合い、次の発表時には、文法的に多少の間違いがあってもきちんと相手に伝わる英語で、受け答えができるようになっているんです。

【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校
写真=OISTポスター発表

高度な研究よりも、高校生らしい視点とアイデアが生きる研究に意味がある

-サイエンスクラスの生徒たちはどのように探究活動に取り組んでいますか?

大西:さまざまな研究テーマに取り組む生徒がいますが、私がよいと思うのは自分の興味を活かした高校生らしいテーマです。後ほど、生徒自身に話してもらいますが、例えば化粧品や自然環境の保護に興味があり、環境あたえる負荷を減らした日焼け止めがつくれないかという発想は、私にはまったくないものなので、そうした研究テーマを思いつくことができるのは女子高校生の強みだと思います。

また、実験道具や実験試料を自分で工夫できることも大切だと思います。先行研究などで何百万円もするような高価な実験器具が使用されていても、本校の実験室にその設備がないことも多々あります。その場合、その実験の意味をきちんと理解していれば、代用方法を自分で考えることができます。どうしても代用が無理な場合には、大学や研究機関の設備を借りることになりますが、その場合も、生徒自身が協力依頼の交渉をします。

私が生徒に取り組んでほしいのは、高度な研究よりも高校生らしい視点やアイデアが生きた研究です。そうした活動を通して、サイエンスマインドが身に付くと思います。

正解のないことに向き合う姿勢を、サイエンスという手法で経験する

-これまでのサイエンスクラスから、サイエンスコースになることで、どのような点が変わりますか?

大西:より中学校の授業とのつながりを意識したカリキュラムになると思います。高校だけでなく中高で連携し、中学で基礎をしっかりと身につけ、高校での仮説・検証・考察のサイクルを何度も繰り返すことができるようにしていく予定です。

-大西先生が考える、サイエンスコースをはじめとする山脇学園の理数教育の意義について教えてください。

大西:この先の社会で生徒たちが直面することの一つに、人工知能(AI)の台頭があると思います。ヒトにしかできない仕事は何かということを考えた時に、自ら疑問を持ち、仮説を立て、検証するプロセスではないかと思います。つまり、0(ゼロ)を1にするのがヒトの仕事で、1を10にしたり100にしたりするための時間を短縮するのが、AIの仕事です。

生徒にはサイエンスコースでどんどんアイデアを出し、仮説を立てることに挑戦していってほしい。私は中1、中2で「サイエンティスト」という授業を担当しているのですが、そこでは課題に対して生徒たちが自由に試行錯誤します。例えば、「風船ロケットをまっすぐ飛ばす」という課題を与え、ざっくりと手順を説明したあとは、材料だけ準備して、生徒に自由にやってもらっています。正解不正解はありません。1回目の実験で目標地点まで届く生徒と届かない生徒がいますが、届かない生徒も失敗ではなく、2つの結果を比較し、気づいたことをもとに新たに挑戦していきます。

正解のないことに向かう姿勢をサイエンスという手法で経験すること。それが本学の理数教育の価値であり意義だと思います。

-最後に山脇学園のよさを教えてください。

大西:生徒を大事にしているところです。生徒にとって一番よい選択は何かということを常に意識しています。本校の先生から「去年やったから今年も同じでいい」というような言葉を聞いたことがありません。毎年授業内容を見直して、その年の生徒に合わせた内容や資料を用意しています。

また、授業は先々のことを考えながらつくっています。たとえば中2の授業は、生徒が高校になった時、さらには社会に出た時のことまでを考えて、中2の段階で何をやっておくべきかということを、教員が常に熱心に議論しています。

ほかには、教員同士の連携のよさも挙げておきたいですね。一人の先生が問題を抱えることなく、学年や教科などで問題共有をしてチームで解決にあたります。もちろん、問題だけでなく授業づくりのアイデアなどの共有もよくやっていて、「高1の生物の授業でこんなことをやったんだけど、中2の数学の授業で使えるんじゃないですか?」と話を持っていくと、「今度やってみよう」というようなスピードで動ける。学年も教科もまたいで話ができるんです。教員として面白いですし、やりがいを感じる点ですね。

《高2生徒インタビュー》

【探究学習に力を入れている女子校1位】「知りたい」ことを自らの手で突き詰めていく山脇学園の探究学習―山脇学園中学校・高等学校
写真=右からMさん、Hさん(2名ともサイエンスクラス)、大西先生

-サイエンスクラスに進んだのはなぜですか?

H:遺伝子に興味を持ち、もっと深く知りたいと思ってサイエンスクラスに進みました。

M:もともと生き物が好きで、中3の科学研究チャレンジで取り組んだダンゴムシの記憶能力についての研究がおもしろかったので、高校でも続けたいと思いサイエンスクラスに進みました。

-サイエンスクラスで取り組んでいる研究について教えてください。

H:私はミャンマーで日焼け止めとして顔に塗られている「タナカ」という植物化粧品について、実際に日焼け止め効果があるのかを調べる研究をしました。もともと化粧品に興味があり、「タナカ」という植物化粧品について知った時に、従来の海洋生物に被害を与える成分の入った一部の日焼け止めに代わり、環境にやさしい日焼け止めとして使えるのではないかと思いついたことがきっかけです。

実験では紫外線を測定する必要がありましたが、紫外線測定器は高価で学校にはないことから、蓄光ビーズという紫外線を受けると取り入れて光るビーズに「タナカ」「市販の日焼け止め」「水」の3種類を塗って、「タナカ」の紫外線防止効果についての比較検証を行いました。この実験では、「タナカ」は紫外線を遮ることはなくむしろ集めてしまうという仮説とは逆の結果が出ました。

そこで、次は「タナカ」が紫外線を集める性質を光合成に利用して農薬の代わりにできるのではないかという発想から、新たな研究テーマを設定し、実験に取り組んでいく予定です。

M:私は植物に音を聴かせたときに生育にどのような影響が出るかという研究をしました。クラシックを聴かせて育てて野菜が売られていることを知り、調べると「栄養価が高くなる」等の効果がうたわれていますが、実際に栄養価が高くなっているのかはわかりませんでした。

そこで、脱脂綿の上にクレソンの種をまき、スピーカーで900ヘルツと18000ヘルツの音を聴かせて発芽の様子や茎の長さのちがいなどを調べました。音楽ではなく音にしたのは、植物に音楽を聴かせる研究はすでにあったことと、音楽は多くの要素が含まれていてどの要素が影響を与えるのかを判断することが難しいため、周波数のみで比較したいと考えたからです。

実験の結果、発芽率や生育などには差が見られませんでしたが、発芽した際の子葉のそり具合に差が出ることがわかりました。

なぜそり具合に差が出るのかを考えたところ、葉の裏の細胞が縮むなど変化しているのではないかという仮説にいたったため、次は電子顕微鏡で葉の表と裏の細胞を観察したいと思っています。ただ、学校には細胞が観察できるような精度の電子顕微鏡がないため、インターンでお世話になった東京農大の先生に協力を依頼しています。

-サイエンスクラスの魅力はどんなところですか? また、将来の目標や進路の希望があれば教えてください。

H:研究ができることが楽しくて仕方ないので、それが大きな魅力です。

また、ほかのクラスでは体験できないようなさまざまな授業もあります。たとえば、プレゼン講座では、人に聴いてもらえるようなプレゼンのやり方などを学ぶことができました。

私は理系の大学に進学するつもりですが、サイエンスクラスで研究に取り組むことで、大学の研究室でどんなことができるのかがある程度想像できるのもよい点だと思います。また、以前はなんとなく大学に行きたいという程度でしたが、今は、研究をするために大学に行きたいという明確な意思を持てるようになりました。

M:私もサイエンスクラスでしかできない体験がたくさんできることが一番の魅力だと思います。研究そのものもですが、外部で発表し、研究者の方からアドバイスをもらったり、同じ研究をしている仲間と話し合ったりできることがとてもいいと思います。コンテストなどの情報も先生が提供して後押ししてくれるので、チャレンジしやすい環境です。

H:私は将来、大学か企業の研究や開発の仕事に就きたいと考えているため、授業で女性研究者の方からリアルな話を聞けたのはとても参考になりました。今、研究活動をしていて本当に楽しいので、これからもずっと研究ができたらいいと思っています。

M:私は生物が好きなので、農学系の大学を中心に進路を考えています。職業についてはまだ詳しくは考えていませんが、人と自然をつなぐような仕事をやってみたいです。

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