2026年度に新学部・学科開設予定!高校からの評価で「教育力」「研究力」私大トップ、AI時代に大学の未来像を切り拓く理工系私大の最高峰~東京理科大学
26年度に「デジタル人材」を育成する
学部・学科を新設
新しい価値を生み出す理工系人材を輩出
真に実力を身につけた学生を卒業させるという東京理科大学の教育方針は「実力主義」と呼ばれ、1881(明治14)年の開校時から大切にされてきた。欧米の先進諸国のキャッチアップが国家的要請だった明治期と異なり変化が激しく未来予測が難しい現代では、科学技術をベースに新しい価値を自ら創造する力こそが求められる「実力」だと考えている。
東京理科大学は2023年度、理工学部を創域理工学部に再編し、先進工学部に新しく2学科を加えた。そして2026年度には創域情報学部の新設、理学部第一部への科学コミュニケーション学科の新設が控えている。大胆な組織改編の根底にある「理工系人材」育成への熱い使命感を石川正俊学長が語る。
※新設学部学科は仮称・設置構想中(設置計画は予定であり、内容は変更となる場合があります)
- 1977年東京大学工学部計数工学科卒業。79年同大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。88年工学博士(東京大学)。専門はシステム情報学。通商産業省研究員、東京大学大学院教授、理事・副学長などを経て2022年より東京理科大学学長。東京大学名誉教授。2011年紫綬褒章、その他国内外にて多数受賞。
新しい「実力主義」を支える
「構想力、構成力、独創性」
東京理科大学の前身である東京物理学校は開校以来、1943年度までは入試を課さず、意欲ある者全員に門戸を開いてきた。半面、真に実力を身につけた者だけを社会に送り出す責任を全うする方針は堅持された。
いわば「アウトカム」を保証する確固とした姿勢は、伝統である“学生を鍛える教育”として今に受け継がれている。もっとも、その「実力主義」は時代とともに意味合いを変えている。AI(人工知能)が人間の能力の一部を代替する、あるいは追い越していく社会のあり方を、石川正俊学長は「科学技術主義」という新しい言葉で表現する。
「民主主義とか資本主義という言い方がありますが、今後は科学技術が社会の変革を牽引していくことになると確信しています。明治時代は欧米から導入した法律や経済の知識を学んだ一部の人たちが、この国を作り上げてきました。ところが今、知識は一瞬にして世界の共有財産になる時代です。知識を使い、科学技術をベースに新しい価値を生み出せなければ、国力が落ちていく。その大きな社会変革の流れを支える人材を大学は供給する必要があります。価値を生み出すのに必要な力とは何か。われわれは構想力、構成力、独創性の三つだと考えています。それらを新しい『実力主義』の中に埋め込み、はぐくんでいかなければなりません」
新しい価値を生み出す――言葉にするのは簡単だが、実行するとなると一筋縄ではいかない。新しい価値とは前もってそれが何か分からないから“新しい”のだ。この難問に挑んだのが、2023年度に行った理工学部の創域理工学部への再編と、先進工学部の2学科新設という思い切った組織改革だ。創域理工学部では例えばA分野とB分野で話をしていたらCという新しい考え方(領域)が飛び出てきた、といった“融合”の働きを刺激する。一方の先進工学部は「やりたいこと」を中心に多分野から人が集まってくる“統合”のアプローチによるイノベーション創出を目指す。どちらも多様な人や考え方が交わることで、これまでにない飛躍を促す作用が期待されている。
総合型選抜(女子)の効果で
女性入学者比率が約3割に
多様性を広げる試みとしては、2024年度入試(2024年4月入学)で新設された総合型選抜(女子)(1)も挙げられる。多くの大学で理工系学部・学科を中心に「女子枠」を設ける動きが広まっているが、東京理科大学ではあえてその言葉を使わないという。石川学長はこう力説する。
「われわれが『女子枠』と言わないのは、一定の成績を前提に加点主義で評価し、十分な力が認められた人だけを合格としているからです。女性ならではの視点を持ち、新しい事柄に取り組むなど、女性であることの価値を表現できたら加点します。総合型選抜(女子)と女子をカッコ書きしているのは、将来的にはカッコの中に外国人や地方出身者等、多様な視点や資質を持ち、加点できる人を含めた入試制度にしていきたいという意味を込めています」
総合型選抜(女子)は初年度、48人の募集に対して39人が受験し、25人が合格した。狭き門だが、一方で総合型選抜(女子)を設けた学科では、一般選抜でも女性の合格者数が増えるという波及効果が生まれた。「2024年度の入学者全体の女性比率も29%まで上がりました。女性の視点や価値観が大学には必要だというメッセージが伝わったのだと思います」(石川学長)
- (1) 総合型選抜(女子)
- 国や産業界から理工系人材育成を求められる中、特に女性の理工系分野への進学を積極的に支援することを目的に2024年度入試(2024年4月入学)で新設された。2025年度入試では工学部の全5学科、先進工学部の全5学科、創域理工学部の6学科(建築、先端化、電気電子情報工、経営システム工、機械航空宇宙工、社会基盤工)で各学科3人(計48人)を募集する。
情報系分野のさらなる強化
新しい学部・学科の新設へ
大学改革の取り組みはさらに続く。2025年度、薬学部が千葉県の野田キャンパスから東京都の葛飾キャンパスに移転する。葛飾キャンパスに拠点を置く工学部、先進工学部と研究交流を深め、世界的にニーズのある「薬工連携」を進めていく狙いがある。そして注目すべきは、社会変革を牽引していく科学技術の中でも、核心といえる情報科学技術を担う「デジタル人材」育成に向け、組織改編を伴った改革である。情報分野に関する教育研究の方向性について全体像を整理すると以下の四つのポイントがある。
①専門分野の強化(2026年度、創域情報学部を新設)
②研究成果を社会に伝達(2026年度、科学コミュニケーション学科を新設)
③理工系の他分野における情報技術の高度な応用
④人文社会系も含めた全学問分野の情報化底上げ
①の創域情報学部(2)は1993年の経営学部開設以来、33年ぶりとなる新学部である。情報系分野で全く新しい領域を切り拓く「専門人材」と、他分野と結びついて新たな価値を生み出す「融合人材」の登場が期待される。また②の理学部第一部に新たに置かれる科学コミュニケーション学科(3)は情報学をはじめ高度な科学を広く一般に伝える人材育成を目指す。
「AIを批判することは誰でもできますが、なぜ駄目なのかをAIの仕組みから説き起こせる人が日本にどれだけいるでしょうか。情報教育をする人材と、複雑化した科学技術の世界を情報スキルを使ってAIに負けない説明ができる人材が必要です」(石川学長)
そして、③は、電気工学、機械工学、数学、物理学、生物科学など既存の学問分野の情報化を進めていく取り組みで一番のボリュームゾーンになる。④は、対象者の専門分野を問わないデータサイエンス教育が位置付けられる。東京理科大学は学部から大学院まで一貫してデータサイエンスに係る知識・技術を学修できる「データサイエンス教育プログラム(4)」を開発・提供することで学生全員にリテラシー(教養)レベルの情報スキルを保証する。①の専門分野の強化により頂点を引き上げることで、④は情報学というピラミッドの裾野を広げていく目的がある。
- (2) 創域情報学部(仮称・設置構想中)
- 2026年4月、千葉・野田キャンパスに設置予定。情報理工学科のみの1学科体制を敷くのは、時代の変化に対応し、幅広い情報スキルを自由に学べるようにする狙いがある。情報技術のうち「コンピューティング」の側面では、CPU設計などの「コンピュータ科学コース」とAIやロボットなどを扱う「知能メディアコース」が、「データの分析・運用」の側面では、統計分析などの「データ科学コース」と、経営システムや環境などを扱う「社会システムコース」が開設される予定。新設に伴い、既存の創域理工学部情報計算科学科、経営システム工学科は2025年度入学者を最後に募集停止し、定員を新学部に移行。また、あわせて数理科学科、電気電子情報工学科の定員を変更。
- (3) 科学コミュニケーション学科(仮称・設置構想中)
- 東京・神楽坂キャンパスの理学部第一部に2026年4月開設予定。「情報・データサイエンス」「STEM/STEAM」「サイエンスコミュニケーション」「教育工学・学習科学」など現代社会に必要となる知識・能力と、東京理科大学が今まで培ってきた理数教科に関する深い専門知識をバランス良く組み合わせながら、高度な「科学」を広く一般に「伝える」能力とともに、情報技術の活用、科学的な見方や考え方、デジタル社会に主体的に対応できる能力に加え、他者と協調し、学び、教えるというコミュニケーション能力の涵養を目指す。
- (4) データサイエンス教育プログラム
- 在籍するキャンパス・学部学科・研究科専攻にかかわらず、データサイエンスに関する知識・技術を学修できる「データサイエンス教育プログラム」を実施している。4つのレベル(リテラシー・応用基礎・専門基礎・専門レベル)で構成されており、それぞれの修了要件を満たすことで、レベル毎にオープンバッジという獲得した知識やスキルを証明する国際技術標準規格のデジタル証明書が獲得できる。
変化する時代に対応できる
あらゆるキャリアがここに
2期にわたる学部・学科改編の背景には、これからは社会全体に「理系的資質」が求められる時代になるという認識がある。文系と理系の垣根を超えた文理融合の学びが注目されているが、石川学長は「昨今では、金融業界等でも理工系人材の需要が高まっています。どのような業種の企業であってもシステム的思考ができ、数理モデルを動かせる人が必要な時代です。科学技術を知っている人がリーダーシップを取り意思決定を行う」と話し、過去の常識が通用しない未来を生きる高校生に向けて、石川学長はこう呼びかける。
「科学技術を知らない人が作り上げた世界とは違う世界がもう出来上がっています。その変化に合わせたキャリア設計を考えて大学を選んでほしい。理工系分野のさまざまなキャリアにつながる道をすべて持ち合わせているのが東京理科大学です。あなたが考えているキャリアは理科大であれば実現することができます」。
確かなスキルを身に付けて
AIに負けない自分を作る
東京理科大学は、高校の進路指導教諭が評価する大学ランキングで「教育力」と「研究力」が私立大学1位(下図参照)、また「実就職率」は全国1位である(卒業生数4,000人以上の大規模大学)。伝統の実力主義が生んだ結果といえるが、学習支援も時代に合わせてアップデートしている。1年次の学習面のスタートアップを力強くサポートするため、専門研修を受けた2年次以上の学生が「学習相談室」に常駐し、基礎科目である数学、物理、化学についてアドバイスをする。教わる側はもちろん教える側にとっても大きく伸びる学び合いの場である。
▼2024年度「教育力が高い大学」ランキング(調査:大学通信)
(※は東京医科歯科大学と東京工業大学の合計、以下同)
順位 | 設置 | 大学名 | 所在地 | ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 国 | 東京大学 | 東京 | 843 |
2 | 国 | 東北大学 | 宮城 | 780 |
3 | 国 | 京都大学 | 京都 | 497 |
4 | 私 | 東京理科大学 | 東京 | 187 |
5 | 国 | 大阪大学 | 大阪 | 171 |
6 | 公 | 国際教養大学 | 秋田 | 164 |
7 | 国 | 九州大学 | 福岡 | 155 |
8 | 国 | 東京科学大学※ | 東京 | 138 |
9 | 私 | 早稲田大学 | 東京 | 125 |
10 | 国 | 名古屋大学 | 愛知 | 122 |
▼2024年度「研究力が高い大学」ランキング(同)
順位 | 設置 | 大学名 | 所在地 | ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 国 | 東京大学 | 東京 | 1,363 |
2 | 国 | 京都大学 | 京都 | 1,041 |
3 | 国 | 東北大学 | 宮城 | 912 |
4 | 国 | 東京科学大学※ | 東京 | 359 |
5 | 国 | 大阪大学 | 大阪 | 280 |
6 | 国 | 名古屋大学 | 愛知 | 160 |
7 | 国 | 筑波大学 | 茨城 | 141 |
8 | 国 | 九州大学 | 福岡 | 136 |
9 | 私 | 東京理科大学 | 東京 | 95 |
10 | 国 | 北海道大学 | 北海道 | 73 |