小規模だが評価できる大学全国第2位! 武蔵大学の新たな取り組み ―文理融合教育を強化し、豊かな教養と実践力を備えたグローバル市民を育成―
入学から4年間、全学生が「ゼミナール」をはじめとした少人数教育で学ぶことで知られる武蔵大学。旧制高校時代から続く伝統の少人数制教育は、建学の理念の一つ「自ら調べ自ら考える力ある人物」を育む場として受け継がれ、「ゼミの武蔵」の名は誰もが知るところだろう。近年はグローバル教育にも力を入れており、学園創立100周年を迎えた2022年には国際教養学部が開設され、4学部体制としての新たなスタートを切った。
また、大学通信が全国進学校の進路指導教諭に実施した調査で、今年も複数の項目にランクインしている。
武蔵大学がランクインした項目
◎小規模だが評価できる大学 全国2位
◎面倒見が良い大学 全国3位
◎入学後、生徒を伸ばしてくれる大学 全国私大3位
◎教育力が高い大学 全国私大7位
◎グローバル教育に力を入れている大学 全国私大11位
◎就職に力を入れている大学 全国私大15位
2022年4月、国際教養学部が始動
国際教養学部は、1学科2専攻。経済学部と人文学部で長年実績のあったプログラムをベースに、リベラルアーツ&サイエンス教育を軸にした総合的な学びと、英語で行う授業で専門領域を究める学びを提供する。日本国内で世界水準の学びを実現するため、同学部には海外大学での学位取得者をはじめ国内外から多様な分野に精通する教員が集結。外国出身教員の割合は63.6%に上る。また、入学定員と教員の比率が5:1と、双方向の対話を重視する少人数教育を徹底。専任教員による専攻科目の授業担当比率も90.8%であるため質問がしやすく、小規模ならではの教員との距離の近さや面倒見の良さも相まって、学生が安心して学びに没頭できる環境が整えられている。
経済経営学専攻は、武蔵大学の学位と並行してロンドン大学の学位取得をめざすパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)を設置。日本にいながら世界水準の経済・経営学の知見を身につけ、高い英語力と教養、統計分析の手法を兼ね備えたグローバルに活躍できる人材を育成する。PDPでのロンドン大学の学位取得者は、1期生が2名、2期生が4名。3期生が10名、そして今年も4期生10名と、確実に実績を挙げている。新学部への移設によってPDPにチャレンジできる学生数も増え、今後もさらなる増加が期待されている。一方、グローバルスタディーズ専攻は、国境を超えて人や情報が行き交う現代の状況を見据え、国際関係、コミュニケーション、文化の側面から学際的な学びを深める。カリキュラムの大部分を英語で行うことで、学生は高度な語学力、異文化理解力を身につけることができる。そして、留学や異文化体験を通じて地球規模の課題と向き合うグローバルリーダーの育成をめざす。
今年就任した高橋徳行学長は、同学部の学生についてこう語る。
「国際教養学部の学生には意欲の高さが窺えますし、高い目標を持つ仲間が集い、切磋琢磨する熱意を感じています。実際、新11号館に設置した『ラーニングコモンズ』などで、授業がない日も勉強に励む光景が見られます。大学としては、日曜日は施設を開放しない選択肢もありましたが、学生のために開放することにしました。学生たちの熱意が大学を動かしたのです」
全学的にグローバル教育を拡大
既存の3学部においても、グローバル教育を強化していく。まず、経済学部では2つのグローバル科目が今年スタートした。「海外インターンシップ」は、アジアを中心とした各国の現地企業でマーケティング活動などを実践する就業体験プログラム。低学年を主な対象とし、語学力に不安がある学生も参加できる内容だ。また、「グローバル企業研究」は、グローバルに展開する企業の協力を得て、顧客ニーズの把握や戦略策定といった企業の課題に取り組む。
人文学部では、アジアの言語や文化を専門的に学びながらも英語の学習意欲が高い学生や、欧米を研究しながら中国語などにも関心が高い学生が、それぞれの外国語の総合的な運用能力を高める「グローバル・チャレンジ」、地域別のローカルな学びに加えて、より俯瞰的かつグローバルな視点から物事を捉える力を養う「グローバル・ヒューマニティーズ」という2つのプログラムを新設。社会学部ではすでに5年間の実績をもつ「グローバル・データサイエンスコース」を強化。時代が求めるデータサイエンス・スキルとともに、グローバルなコミュニケーション力を身につけた人材を育成する。
こうしたグローバル教育に関するさまざまな取り組みは、進路指導教諭のランキングでも年々評価が上がっており、「グローバル教育に力を入れている大学」で全国私大11位にランクイン。今年9月にはウクライナから3名の留学生も受け入れ、今後はアジア圏の協定校や留学生を増やすなど、欧米のみならずアジアにも目を向け、多様な地域で活躍できる学生を育てていく方針だ。
※印は国立、無印は公立、◎印は私立を表す。2022年10月26日現在のデータ。回答数は624校。
文理融合教育を強化、3つの副専攻がスタート
さらに、今年4月には「リベラルアーツ&サイエンス教育センター」が設立された。これは、同大の第四次中期計画での基幹事業の拠点でもある。同センターがめざすのは、学生が文理融合的なスキルを獲得すること。全学生が履修できる理系科目を充実させるほか、学生の幅広い興味に応えるため、経済学や社会学、歴史学などの基礎を学ぶ科目について、全学生が履修しやすい環境を整えていくという。高橋学長はこう語る。
「社会の課題解決には、所属学科で『専門知』を高めつつ、専門知を集結させて課題解決に導くための『総合知』を形成することが必要です。文理融合的な分野を横断する総合知は、他者と意見を交換し、刺激し合うことによって育まれます。今後は、伝統のゼミやグローバル教育に加えて、リベラルアーツ&サイエンス教育センターを中心とした、学びの新機軸を打ち出していきます」
その第一弾が、今年スタートした3つの「副専攻」だ。起業をめざして経営の実践力を養う「アントレプレナーシップ副専攻」、グローバル化が進む経済と企業のあり方を英語で考究する「エコノミクス&マネジメント副専攻」、グローバルリーダーにふさわしい知見と高度な英語運用能力を磨く「グローバルスタディーズ副専攻」を開設。全学部の学生が履修でき、副専攻ごとに指定された「コア科目」と「関連科目」を学び、合計16単位修得が必須。単位修得者は履修証明書を取得できる。今後、現代社会の諸課題に直結するテーマを扱う副専攻など、さらなる展開も予定されている。
少人数教育の伝統を生かした学生支援
ゼミを筆頭に、学生一人ひとりと真摯に向き合う少人数教育は、武蔵大学のアイデンティティーと言えるものだろう。学生の満足度も高い同大の教育力は、キャリア支援においても大いに発揮されている。キャリア支援センターには、キャリアカウンセラーの有資格者など経験豊富な職員が10名以上常駐している。低学年次からキャリア科目などで学生の職業観を高め、就職活動が本格化する3年次には全員に面談を実施。学生が自らの進路について主体的に考え、決定できるよう導いていく。さらに、さまざまな業界で活躍する卒業生や、内定を得た4年生より就職活動を学ぶプログラム「武蔵しごと塾」を実施し、交流会や本番さながらの模擬面接などを通して、就職活動における表現力を養う。また、グローバル教育の充実にともない、海外企業や外資系企業などへの就職希望者の支援にも取り組んでおり、多様化する学生の興味やニーズに対応できる、きめ細かなサポートがなされている。少人数教育の伝統を生かし、学生数に適したサポート体制を重視してきた同大だからこそ、自ずと面倒見の良い状況が生まれ、就職率も96.5%(2022年3月現在)の高水準を維持している。
※印は国立、無印は公立、◎印は私立を表す。2022年10月26日現在のデータ。回答数は624校。
創立当初から少人数教育を徹底している武蔵大学。学園創立100周年を迎え、「異文化を理解し未来を創造する教養あるグローバル市民の育成」を掲げた。新たな100年に向けた取り組みは始まったばかりだが、多様性を尊重する姿勢や面倒見の良さ、少人数だからこそできる丁寧な教育など、これまでの100年の積み重ねがあってこそ挑戦できる同大ならではの取り組みと言えるだろう。小規模ながら着実な歩みを続け、多彩な人材を輩出し続ける武蔵大学に、これからも注目していきたい。