「自分で考えて自分で決める」がモットー。
生徒の「挑戦力」を育み、希望進路へ導く青稜中学校・高等学校
青稜中学校・高等学校は、東京都品川区にある共学の中高一貫校だ。JR大井町駅から徒歩7分、東急大井町線下神明駅から徒歩1分の交通至便な地にある。授業や課外活動において多くの選択肢を用意し、生徒が何でも自由に選べるような環境を整えている。生徒個人の意思を尊重する教育が特徴だ。
近年は大学合格実績が伸びており、保護者や教育関係者からの評価も高い。2020年の「学習塾が勧める中高一貫校ランキング」では、「オンライン授業で生徒や保護者から高評価を得た学校」2位、「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い学校」2位、「最近、合格実績が伸びていると思われる学校」4位、「生徒や保護者の満足度が高い学校」5位などにランクインし、各項目のポイントを合計した総合ランキングでも4位となった。
青稜の評価が高まっている理由について、青田泰明校長に話を聞いた。
何かあったときにどれだけ早く、柔軟に対応できるか
――「オンライン授業で生徒や保護者から高評価を得た学校」で2位に選ばれました。この結果について、どのようにお考えですか?
青田:このランキングは、単にオンライン授業のみへの評価ではなく、何かが起こったときに生徒や保護者のためにどれだけ早く動けるかということが重要なランキングだと考えています。コロナ禍でスピード感や柔軟性を持って動けたことが評価していただいたと思います。
本校は、コロナ禍まで生徒にタブレットを支給しておらず、また、オンラインで授業を行うことも想定していませんでした。そのような状況でしたが、新型コロナウイルスの影響が広がり事態が深刻化したとき、iPadなどのICT環境を整え、ZoomやSlack、Google Classroomなどのサービスを一気に導入しました。授業や自習、朝礼、ホームルーム、面談、チェックテストなど、オンラインでできることはすべてやろうと、2020年3月初めから教職員全員で取り組みました。早い時期から始められたので、その後の修正も早く反映させることができました。
学校説明会も4月からオンラインで実施しました。早期から開催したことで「青稜という学校は動きが早い」という印象を持っていただけたと思います。受験校を選ぶ際には、その学校を知っているかどうかが大きく影響します。オンラインを使って対外的に青稜をアピールできたという手ごたえがありました。21年度中学入試で志願者が増加した要因のひとつだと思います。
21年1月に再び1都3県に緊急事態宣言が発令され、1月から3月の間、対面授業とオンライン授業を併用する登校選択制を導入しました。「自分で考えて自分で決める」が本校のスローガンですので、登校選択制においても自分で考えて保護者と相談して決めるように生徒に伝えました。多くの生徒は登校して授業を受けていますが、基礎疾患を持っている生徒や高齢の祖父母と同居する生徒などはオンライン授業を選んでいました。昨年は7月から対面授業を始めましたが、一部の生徒には授業動画をオンラインで配信していました。そうして培ったノウハウにより、今回の取り組みでもスムーズに切り替えて実施できました。早期に開始して柔軟に取り組むと、何事にも対応できると実感した1年でした。
「希望進路」をキーワードに、大きな目標を叶えさせる
――「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い学校」2位、「最近、合格実績が伸びていると思われる学校」4位になるなど、進学実績が好調です。21年度大学合格実績はいかがでしたか?
青田:国公立大志望者が増えましたね。ここ数年は国公立大志向が強くなっていましたが、コロナ禍の影響もあり、大学を数多く受けるというより、受験校を絞って国公立大を第一志望とすることで、家計の負担を減らそうと考える高校3年生が多かったようです。合格実績は、国公立大に28名、早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大などの難関私立大に53名、GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)に251名という結果でした。早慶上理の人数は微減ですが、GMARCHは例年並み、国公立大は合格者が増加しました。
――進路指導について教えてください。
青田:「希望進路」を進路指導のキーワードにしています。無理に上位の大学を受験させるような指導は行っていません。目標となる進学先をまず生徒に自分で考えさせ、目標が定まったら今の自分に足りないものを教員と一緒に考えていくという方法をとっています。例えば東大に行きたいという目標を立てて、ゴールから逆算したときに、今のまま続けていても合格が難しいことがわかったとします。そこから具体的にどのような勉強をしていかなければならないかを一緒に考えるのが教員の役目です。
また、最近は大学入試改革などの影響で、安全志向が高まっています。本当はもっと実力が高いのに、実力より低い目標を設定してしまう生徒もいます。そうした生徒には、大学だけでなく、学部によっても難易度が異なることや、本人の学びたいことが本当にその大学で学べるかどうかなどを教えます。それらを踏まえて、保護者とも相談してもらい、再度自分で考えさせています。
――生徒本人のやりたいことを優先させる「希望進路」で、どのように合格実績を伸ばしていますか。
青田: 「希望進路」という形をとることで、生徒が上を目指さなくなり、合格実績が下がることを懸念する教員もいました。しかし、それは生徒が大学についてあまりよく知らないから起こることです。大学に対して漠然とした知識しか持たないまま受験に臨めば、平易な大学を受けようとするでしょう。そうではなくて、「この大学にはこんな学部があって、こんな勉強ができる」ということが具体的にわかれば、生徒たちの進路に対する考え方が変わります。本校では失敗を恐れずに挑戦することをモットーに指導しています。大学に対する知識と挑戦する気持ちがあれば、生徒は自然と上位の大学を目指すようになります。
保護者からは、「子どもがやる気を起こすようにもっと指導してください」といった声をよくいただきますが、大学受験は中学受験と違って、受験生本人のモチベーションが強くなければ目標に到達できません。生徒が本当に希望する進路へのモチベーションを高めるためには、自分で考えて自分で決めてもらうことが重要だと考えています。
――受験対策として具体的にどのようなことを行っていますか?
青田:多様な学習プログラムを用意しています。放課後講習や長期期間中の特訓講習、国公立大志望者のための最難関講習など、講習も多彩です。また、「Sラボ」と呼ばれる自学自習システムがあり、学校内で学びを完結させることができます。中学の3年間で学力の土台をしっかりと積み上げ、挑戦力を育ててあげれば、生徒はいくらでも伸ばせます。
講習も、何を選択するかは自分で考えて自分で決めるように指導しています。高校1年生から最難関講習でしっかり勉強するのもいいですし、部活動に打ち込むのもいいでしょう。どの学年でステップアップして、最終的にどんな大学に行きたいのかということまで考えながら、希望進路を形成してほしいと思います。
自分が生徒だったら通いたいと思うような学校に
――「生徒や保護者の満足度が高い学校」5位についてはどう思われますか?
青田:高い評価をいただけたのはとてもうれしいですね。本校はとにかく選択肢が多いのが特徴です。学校行事や合宿授業、海外研修制度がたくさんあり、多様な経験が可能です。部活動も多く、選ぶのが大変なくらいあります。それらが学校生活の楽しさにつながっていると思います。さらに、毎年さまざまな新しいチャレンジを行っています。満足度というのは、生徒の学力を上げることだけではなく、どんな選択肢を生徒や保護者に示せたかということで測るものだと思います。生徒たちに学校生活を十分に楽しんでもらいたいという気持ちでいっぱいです。
――今後、どのような学校作りを目指されますか?
青田:青稜を「挑戦のプラットフォーム」にしたいです。生徒や保護者、教職員だけでなく、学校外の方たちもさまざまなことをチャレンジできるような環境を整えていきたいと考えています。すでに、多様な企業とのコラボレーション企画を実施しています。
例えば江崎グリコさんとの企画では、校内に「セブンティーンアイス」の自販機を設置し、アイスクリームのスティックを再利用してオリジナルのエコ箸を作りました。アイスを食べれば食べるほどスティックが箸に生まれ変わり、リサイクルできます。また、コロナの衛生的な問題から校内の冷水機が使用禁止になり、生徒たちが水を欲しがるようになりました。そこで、サントリーさんに相談して天然水だけの自販機を作ってもらって設置し、生じるペットボトルのリサイクルもできるようにしました。生徒の要望に応えながら、SDGs(持続可能な開発目標)にもしっかり取り組めるようになっています。
校内で常に新しいチャレンジを行い、学校の変化を目の当たりにすることで、「本当に学校が変わっているんだ」と感じ、生徒の意識改革を行うことができます。
昨年から新たにゼミナール授業を開始しました。中学2・3年生を対象として、大学のゼミのような授業を開講しています。テーマはバラエティに富み、興味・関心に合わせて講座を選択できます。プレゼンテーションやディスカッションを行いながら、表現力や考える力、多様性の中で意見を合わせる力を鍛えていきます。教員も一人ひとりがチャレンジでゼミに取り組んでいます。生徒たちは楽しんで学びを深めているようです。
私が「挑戦、挑戦」と言い続けていますので、教職員や生徒たちが自発的にさまざまなことに取り組むようになりました。「自分が通いたいと思うような学校を作る」という思いが根底にあります。これからも楽しいと思えるような学校を目指していきます。