ランキングで長年第1位の評価を得る、圧倒的人気の中高一貫男子校 ~京華中学・高等学校
写真=京華中学・高等学校の町田英幸校長
京華中学・高等学校(東京都)は、明治30(1897)年にそのもととなる京華尋常中学校が創立された、120年以上の伝統を誇る中高一貫の私立男子校だ。安定した進学実績と、生徒や保護者の満足度から、塾などの教育関係者から高い評価を勝ち得ている。
具体的には、「面倒見が良い」「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」の3項目のランキングで1位を獲得。さらに、「面倒見が良い」と「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」の2項目では11年連続トップという快挙を成し遂げている。
「なぜこれほど多くの支持を集めるのか」。それぞれのランキング結果について、長年同校で教鞭をとり、学年主任、教頭などを歴任後、2016年から校長に就任した町田英幸先生に、お話をうかがった。
ランキングの結果は、率直に嬉しい。
――「面倒見が良い」「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」という3つのランキングで第1位という圧倒的な支持を集めたことについて、どうお考えですか?
町田: 率直に嬉しい、という気持ちです。日々の学校生活の中で、私たち教員が大事にしている生徒や保護者との信頼関係や学校全体としての取り組み、また大学合格実績など卒業生の活躍などを、しっかりと評価していただけたことに感謝したいですね。
とは言っても、本校では何か特別な教育システムを取り入れていたり、他にない指導方法を用いていたりするというわけではありません。生徒一人ひとりにきちんと向き合い、成長を見守り、必要があれば後押しをするといった姿勢は、多くの学校の教育者に共通のものだと思います。ただ、「すべての生徒にとことん付き合う」という意識は教員の間に徹底しています。勉強はもちろん、部活や部活以外の課外活動のバックアップにも力を注いでいます。また、保護者との信頼関係も大切にしており、学校内だけでなく家庭内での様子も知った上で、生徒の指導にあたるようにつとめています。
ひとつひとつは地道なものですが、そうしたきめ細かな取り組みを積み重ねていくことによって、よい評価につながっているのではないでしょうか。
生徒と教員、保護者と教員との厚い信頼関係が強み
――高評価の背景となる、具体的な取り組みがあれば、教えてください。
町田:ランキングのすべてに関わってくることだと思いますが、伝統的に教員と生徒の距離が近いことが、本校の大きな強みだと思います。男の子は、だいたい中学3年生から高校1年生くらいにかけて、自立を意識しはじめます。一方、小学校から入学したばかりの中学1年生や2年生くらいまでの間は、生徒たちは授業の質問から友達との喧嘩の相談に至るまで、「先生、先生」となんでも職員室まで気軽に話しにやってきます。本校では、必ず数名の教員が中学入学時から高校3年生まで、持ち上がりで学年を担当しています。この時期に教員との信頼関係をしっかりと築くことで、高校生になった時に保護者に相談しにくいことでも、親しい教員になら話せるようになります。
勉強面でも、高校生になった時に補習を頼みに来るのは、中学から上がってきた生徒がほとんどで、高校から入学した生徒は彼らに付いてくるという感じです。中学から入学した生徒は教員の力を借りることに躊躇がない、と言いましょうか、学校や教員というリソースをうまく活用できているということなのでしょう。
もちろん、教員と気軽に話すことに抵抗がある生徒もいますが、そういう生徒の場合は、教員の方が十分に目配りをするようにしています。困っていることや悩んでいることがないかを気をつけて見ておくことで、必要に応じて声をかけるなどの対応ができます。
校長である私の立場で言えば、学年ごとに異なる生徒たちのカラーと教員の相性を考え、よりその学年に合った教員に担任してもらうように心がけています。クラスごとの担任だけでなく、それぞれの教員が学年全体を把握できるようなシステムをつくっています。生徒と教員の信頼関係を築くための基礎として、教員同士の信頼関係は欠かせませんから。
――保護者の方との連携はどのようにとられていますか?
町田: 本校では、中学校の間は成績表を保護者に直接渡しています。本校の創立者が始めたことで珍しい取り組みだと思いますが、成績表を渡すために少なくとも年に5回は保護者と教員が直接会う機会があるわけです。
この時に、成績の話をするだけでなく、保護者の方に、生徒たちの学校での様子を伝えると同時に、家庭での様子をうかがっています。家庭でも学校でも変わらない生徒もいれば、切り替えている生徒もいます。家庭での様子を知ることで、生徒の指導に生かすことができますから、教員側にとっても貴重な機会です。
加えて、夏休みから冬休みにかけて、全員に対して三者面談も行なっています。
また、成績がふるわなかったり、ちょっとやんちゃな行動があったりした場合も随時三者面談を行ない、学年主任なども立ち会って、しっかりと話し合いをするようにしています。
本校は、実は保護者同士の交流がかなり盛んです。文化祭でのバザーや出店など、保護者会が学校行事に積極的に関わっているほか、保護者と学年主任が参加する1泊2日の懇親旅行なども実施しています。もちろん自由参加ですが、こうした催しを楽しみに参加される保護者の方も多くいらっしゃいますね。
生徒一人ひとりに向き合い、その能力を伸ばす
――生徒たちに学校生活を通して、最も学んでほしいことは何ですか?
町田: 本校創立時からの教育理念は「天下の英才を得て之を教育す」と言います。いささか固い言い回しですが、「英才」とは生徒一人ひとりが持っている才能のことで、つまりは生徒の能力を引き出すことに力を入れています。
特に中学校3年間は、勉強に限らず、スポーツでも芸術でもボランティア活動でも、生徒それぞれが自分のやりたいことを見つけ、全力で打ち込める環境づくりを徹底しています。3年間ずっと取り組めることでもいいですし、自由研究のように一定の期間、全力で取り組むことでもいいのです。自分でやると決めたことをやり通す経験をしてほしいと思っています。スポーツの大会やコンテストのように結果が出せればベストですが、全力でやり切ったという達成感を得ることが一番大事です。
「やればできる」という経験をした生徒は強いです。本校では高校でのクラブ活動や課外活動で成果を出しながら、大学受験でも上位校に合格してきた生徒がたくさんいますが、その原動力は、目標を達成する経験です。
生徒の才能を発見したり、その成長を促したりするためには、保護者だと近すぎて見えない部分もありますし、思い入れが強い分ついつい自分の価値観を押し付けてしまう心配もあります。教員は、ある程度、客観的な視点と長年の経験をもとに、生徒それぞれにさまざまな可能性を示すことができる絶好の立場にいますから、積極的に働きかけ、生徒たちの成長を後押ししていくことが我々のやるべき使命だと考えています。
好奇心旺盛で創造力にあふれた生徒を育てたい
――国際先進クラスなど新たな取り組みもスタートしていますが、今後の目標はどのようなものがありますか?
町田: 男の子が苦手とするコミュニケーション能力を伸ばすことと、これからの社会で必要な英語の能力を身につけることを考えて、オールイングリッシュの授業やイングリッシュキャンプなど、聞くことや話すことといった英語でのコミュニケーションに力を入れた取り組みを、全コースで始めています。国際先進クラスは、そうした取り組みのひとつです。生徒たちに、社会に出た時に必要とされる力を身につけさせることが、中学高校の役割だと思います。
本校は、「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」という点でも評価をいただいていますが、偏差値の高い大学に入ることだけを目標とするのではなく、生徒が学びたいことを学べる大学や入りたい大学に入れる学力を養うことを目標としています。極端な例で言えば、野球に熱心に取り組んでいる生徒が今年、「自分が六大学野球で活躍するには、東大しかない」と決めて見事合格を果たしたように、生徒が望む大学へのサポートをすることが重要だと考えています。「偏差値でなく、大学ごとの個性で大学を選ぶ」という潮流は、今後より強くなっていくでしょうから、本校もそれに合わせた改革を進めていきたいと考えています。
同時に、やや抽象的な目標となりますが、AIなどの情報科学技術の進歩やさらなるグローバル化の広がりを鑑みれば、これからの社会で活躍するには、何よりも「好奇心」と「創造力」にあふれた人材が必要になります。そのために必要な学校づくりに、我々も現在進行形で取り組んでいるところです。
学校選びは、子どもの視点を大事にする
――こちらの学校は、塾の先生の勧めで学校説明会に参加される保護者の方も多いと聞きます。多くの生徒さんや保護者を見てきた町田先生の立場から、学校選びのポイントを教えてください。
町田: 学校説明会では、まず学校長の話をしっかり聞いてください。特に私学では学校長の方針が学校の進む方向を決定します。考え方や今後のビジョンなどを知っておくとよいでしょう。壇上での説明だけでなく、受付などでの教員の応対がきちんとしているかなどもチェックするべきポイントだと思います。また、学校紹介などに生徒を前面に出す学校は、生徒に自信を持っている学校だと思います。手前味噌で恐縮ですが、本校では、テストや学校行事など生徒のスケジュールに配慮した上で、できる限り、生徒に参加してもらっています。司会や学校生活の紹介、校内の案内などいろいろな役割を担当してもらい、保護者や受験する子どもさんからの質疑応答にもどんどん応じています。先生だけでなく生徒から話を聞くことで、特に子どもさんは安心できるのではないでしょうか。
説明会は、開催規模などによって、外部の会場で開催されることも多くあります。ただ、学校の雰囲気は実際に足を運んでみないとわかりません。「説明会では良いことばかり言っているけれど、本当のところはどうなんだろう?」くらいの気持ちで、確認をしに来てください。学校見学の際には、保護者の方だけでなく、受験する子どもさんもぜひ一緒に。小学6年生になると、受験準備で忙しくなりますから、5年生くらいから、たとえば親子で文化祭を見に行くなどしていただくと良いのではないでしょうか。
本校は男子校なので男の子の場合の話をすると、小学生くらいの男の子は、保護者が勧める学校に対して、「どこでもいいよ」というような反応をしがちだと思います。これは許容範囲が広いからで、全く興味がないわけではありません。ただ、もし「ここは合わない」「あまり気が進まない」というような嫌がるそぶりがあれば、保護者の方から見てどんなに魅力的でも、無理強いはしないでください。
逆に、もし保護者の方があまり乗り気でない場合でも、子どもさんが「ぜひこの学校に行きたい」ということがあれば、可能な限り応援してあげてください。
中学校から高校にかけて、男の子は大きく成長します。かけがえのない6年間を、充実して過ごせるように、偏差値や合格実績などだけでなく、ぜひ実際に目で見て、子どもさんに合った学校を選んでいただければと思います。