情報技術の発展は目まぐるしい。
AI(人工知能)などを見ると分かる通り、数か月前にできなかったことが今は簡単にできるということが次々と起きている。
このような技術はあらゆる仕事において活用できる可能性を秘めているため、大学教育においても文系理系を問わずあらゆる系統の学部・学科で数理・データサイエンス・AI教育が充実してきている。
スマートフォン1つで誰でも生成AIが活用できる時代に
チャットGPTをはじめとする生成AIの登場で、世の中は大きく変わった。スマートフォン1つで誰もが気軽に生成AIを活用できるようになった。それらを活用して一般的な高校生が軽々と文章やイラスト、動画などを作成している姿も今や珍しくない。同時にデータサイエンスの活用も急速に普及している。これらの情報技術は、現代社会の“読み・書き・そろばん”にも例えられるほどに当たり前の技能となりつつある。
一方で、全員がAIやデータサイエンスの正しい使い方を身につけているかというと疑問符が付く。教育制度の整備があまり追い付いていないこともあり、自己流で使用しているケースも多い。これでは十分に有効活用できないばかりか、知らず知らずのうちに危険を冒してしまうこともあり得るだろう。
教育の遅れによる危機感は当然政府も抱いており、コロナ禍前の2019年には統合イノベーション戦略推進会議で「AI戦略2019」がまとめられた。その中で、数理・データサイエンス・AIの教育目標として、全ての大学生・高専生(年間約50万人)が初級レベルの知識・技能を習得することや、その半数(年間約25万人)が自らの専門分野への応用基礎力を習得することなどが明示されている。この指針に基づいて、22年度高校入学生からは「情報Ⅰ」が必修化された。大学でも情報系の学部だけでなく、文系・理系を問わずあらゆる系統の学部で一般教養課程として数理・データサイエンス・AIに関する教育プログラムを実施するようになってきている。
ただ、受験生が大学ごとの教育プログラムを見て善し悪しを判断するのは簡単なことではない。そのため、政府は大学等(短大・高専も含む)の正規課程として置かれた数理・データサイエンス・AI教育プログラムのうち、一定の要件を満たした優れたものについては認定するという「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を設けた。認定は導入・基礎・心得などで構成され全ての学生が身につけておくべき素養という位置づけの「リテラシーレベル」と、より発展的な内容を学ぶ「応用基礎レベル」の2段階に分かれている。今年度の認定を受けたもののうち、大学単位のものに限り表に掲載したので確認してみてほしい。
初年度からいち早く認定を受けた大学は
認定を受けた大学等の数は、現時点でリテラシーレベルが590校、応用基礎レベルは249校とそれぞれかなり増えてきた。公立千歳科学技術大のように、初年度となる21年度にリテラシーレベル、翌22年度には応用基礎レベルの認定を受けるなどいち早く教育プログラムを体系化した大学もある。同じ北海道内では、北海道医療大も初年度にリテラシーレベルの認定を受けている。認定プログラムの中で特に先導的で独自の工夫や特色の見られるものはプラスとしての選定を受けるが、この北海道医療大は全国に11校しかない、初年度にリテラシーレベルプラスの選定を受けた大学等のうちの1つだ。24年度には、医療技術学部のプログラムが応用基礎レベルの認定を受け、こちらもプラスに選定されている。さらに26年度には臨床データサイエンス学環を開設するなど、医療・福祉領域でのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進をリードする大学の1つとなっている。
大規模総合大学で全学的に推進している例としては、関西大が挙げられる。大学全体のプログラムでリテラシーレベルと応用基礎レベルの認定を受けているほか、商学部、総合情報学部、システム理工学部もそれぞれ学部独自のプログラムで応用基礎レベルの認定を受けている。また、25年度に開設したビジネスデータサイエンス学部は、関西大の学部が所在する5つ目のキャンパスとしてオープンした新設の吹田みらいキャンパス(大阪・吹田市)に置かれたことと相まって注目が集まっている。関西学院大でも「AI活用人材育成プログラム」を全学的に実施し、リテラシーレベルと応用基礎レベルの認定を受けている。
数理・データサイエンス・AI教育は大半の大学で実施しており、リテラシーレベルの認定があれば一定程度質の高い教育を期待できる。応用基礎レベルの認定やプラスの選定を受けている場合は、さらに高度な内容や独自性の高い教育を提供しているということが分かる。これらの認定・選定は、生徒に合った大学選びの1つの指針として活用することができそうだ。
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<表の見方>
◆表は文部科学省公表の資料をもとに、大学通信が作成したもの。
◆令和7年度の認定・選定のうち、大学単位のもののみを掲載した。
◆☆マークは、認定(既定を含む)された教育プログラムの中から、先導的で独自の工夫・特色を有するものとして「認定教育プログラム(リテラシーレベル)プラス」および「認定教育プログラム(応用基礎レベル)プラス」として選定されたものであることを示す。
◆所在地は大学本部のもの。
令和7年度(2025年度)数理・データサイエンス・AI教育プログラム【応用基礎レベル】認定大学一覧

令和7年度(2025年度)数理・データサイエンス・AI教育プログラム【リテラシーレベル】認定大学一覧



