キーワードはデジタルとグリーン
情報や環境を学べる大学が急増中

ユニヴプレス 文 雫純平(大学通信)
キーワードはデジタルとグリーン 情報や環境を学べる大学が急増中

デジタル技術を一切使わないという仕事はもはやほとんどない。また、温暖化に由来する夏の酷暑が続くことからも分かるように、環境問題への対応は避けては通れないものとなった。これら”デジタル”や”グリーン”等の分野を担う人材の育成が我が国の急務となっており、各大学で学部学科の再編が急速に行われている。

※本文中に記載した学部・学科名等は認可申請中のものや設置構想中のものを含んでおり、今後変更になる可能性がある。

理系の学部・学科で改組や新設ラッシュが続く

理系の人材育成は、国策の1つと呼んでもいいだろう。大学では理・工・農の理系各系統で、学部・学科の改組や新設ラッシュが続いている。この多くは、デジタル・グリーン等の特定成長分野をけん引する大学を対象とした「大学・高専機能強化支援事業(支援1)」の実施を受けてのものだ。この事業内で文部科学省は、学部再編等によりデジタル・グリーン等の分野へ転換する公立・私立の大学に対して必要な経費を20億円程度まで定率補助し、理系を強化する大学の取り組みを後押ししているのだ。

23年度実施の初回公募では67件、24年度実施の2回目の公募では59件がそれぞれ選定された。デジタル分野では、昭和女子大・総合情報学部の新設や、金沢工業大・情報デザイン学部、メディア情報学部、情報理工学部という情報系3学部の同時設置などの取り組みが選定を受けている。グリーン分野では立教大・環境学部や関西大・システム理工学部グリーンエレクトロニクス工学科の新設など、有名大の選定も目立つ。

女子受験生の志望動向に変化

では、今年度実施された第3回公募の選定結果はどうだったのだろうか。まずは、下記の表を見てほしい。選定を受けた27件の中で、注目したいのは東京理科大だ。大規模な理工系総合大学で、情報系では既に工学部に情報工学科を置いているが、今回の選定を受けて26年度からさらに創域情報学部を新設するのだ。同時に、理学部第一部には科学コミュニケーション学科を新設する。両者は情報学や科学を追究するのみならず専門外の他者に知識や技術を伝えることを主眼としており、情報系では新しいタイプの学部・学科と言えそうだ。

九州共立大や九州国際大など、九州の大学6校が名を連ねていることにも注目したい。九州出身で、地元で理系を学びたいという受験生にとっては確実にチャンスと選択肢が広がっている。

これまでの3回の公募全てで複数の女子大が選定されていることにも触れておきたい。今回は大阪樟蔭女子大、梅花女子大、福岡女学院大の3校が選定を受けた。理系を志す女子受験生はもはや珍しくないが、特に近年は理系の中でも医療系に偏らず、理学系や工学系など、幅広い分野に志望が広がっている。以前は教養系や資格系のイメージが強かった女子大も、理系人材を育成できる体制強化に乗り出し、政府もそれを後押ししているのだ。

デジタル・グリーンを学んだ人材は、今後の社会で活躍の場が数多く用意されている。受験生本人の希望や関心と合致するのであれば、魅力的な進路の選択肢の1つとなるのではないだろうか。

大学・高専機能強化支援事業 支援1
(学部再編等による特定成長分野への転換等に係る支援)
 第3回公募の選定大学

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