大学生の売り手市場は継続
工科系大と女子大の高実績と大規模大の実態
─規模別、地域別に見る実就職率ランキング

ユニヴプレス 文 梅田優介(大学通信)
大学生の売り手市場は継続 工科系大と女子大の高実績と大規模大の実態 ─規模別、地域別に見る実就職率ランキング

人材不足の中、大学生から選ばれるために初任給の引き上げなど待遇面の改善が進む。大学生の売り手市場は継続しており、2025年3月卒の大学生の就職状況も好調だった。求人倍率が上がる中、実就職率はどのように推移したのだろうか。規模やエリア別に各大学の実就職率を見ていこう。

大学生の就職市場は、コロナ禍の影響を脱し、活気を取り戻している。リクルートワークス研究所の調査による25年卒の求人倍率は1.75倍と前年より0.04ポイント上回っており、企業の求人意欲が高まっていることがわかる。また、人材の確保競争は待遇面にも波及している。25年4月入社の初任給については、全ての業種、従業員規模で半数以上の企業が賃上げを行っており、大学生の就職市場は引き続き売り手市場にあるといえる。こうした背景のもと、25年卒の大学生の平均実就職率は89.3%に達し、コロナ禍が本格化する直前の20年卒の88.7%を上回る結果となった。

卒業生の規模別に大学の実就職率を見ていこう。「卒業生数500人以上1000人未満」のカテゴリーでは、大和大が1位となった。就職に強い学部系統である理工学部や、医療系の資格取得ができる保健医療学部を有しているほか、クラス担任制による手厚い就職支援が要因となっている。以下ベスト10は、金沢星稜大、聖徳大、藤田医科大、和洋女子大、金沢学院大、四国大、福井工業大、愛知教育大、大阪成蹊大となり、医療系や教育系、女子大など幅広い系統の大学が見られるランキングとなった。

次に「卒業生数1000人以上3000人未満」のランキング全体に注目すると、工科系大学が数多くランクインしている。3年連続トップの愛知工業大を筆頭に、福岡工業大、大阪工業大、金沢工業大、千葉工業大、芝浦工業大と続き、ベスト10の半数以上を占めている。この結果は、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)技術の進展により情報技術が不可欠となったことが背景にある。工科系大学は専門知識や論理的思考力を身に付けた理系人材を数多く輩出しており、これが産業界全体の人材ニーズと合致している。安定した技術職への需要の高さが、実就職率として表れた。

近年、閉学や共学化などが相次いでいる女子大だが、その就職力は依然として高い水準を維持している。女子大の平均実就職率を集計してみると、92.2%となり、全体89.3%に対して高実績だ。女子大の強みは、早期からのキャリア教育や伝統的な就職支援体制、卒業生によるネットワークだろう。低学年時にキャリアデザイン関連の授業を必修として取り入れている女子大も珍しくはない。ランキングに注目すると東京家政大、昭和女子大、甲南女子大、実践女子大などが上位にランクインしている。

進路の選択が多様な大規模大学は実就職率が上がりにくい

「卒業生数3000人以上」の大学は、1位は5年連続でトップの名城大。理系学部の卒業生数が多いことが、高い実就職率の一因となっている。以下トップ10は、東京理科大、京都産業大、関西学院大、立教大、近畿大、龍谷大、青山学院大、名古屋大、関西大の順になった。ランキング全体を通して、知名度が高い総合大学が多く並んでいる。

このカテゴリーの大学の実就職率に注目してみると、難関大であっても他カテゴリーの実就職率より、全体的に低い傾向にあることがわかる。就職支援が行き届きやすい規模の小さな大学ほど有利という側面もあるが、それだけが理由ではない。大規模な総合大学では、学生が持つキャリアの選択肢が極めて多様であり、起業や留学、資格試験準備など、一般企業や公務員、大学院進学以外の進路を選択する学生が少なくないためである。実就職率ランキングでは、これらの多様な進路を選択する学生の実績が反映されにくくなっている。この規模の大学の就職力を、単に実就職率の数値上で測ることは難しいものの、有名企業への就職実績は他の追随を許さないものがある。実際に、「有名企業400社実就職率ランキング」には、このカテゴリーの大学が数多くランクインしている。

25年卒の就活では、多くの大学が実就職率を上げてきたが、26年卒の求人倍率は若干下がることが見込まれている。大学側には、引き続き戦略的な取り組みが求められる。このような状況下で、実就職率を上げるのはどの大学なのか注目したい。

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<表の見方>

表は各大学発表による2025年の就職状況(10月24日現在)。
アンケートに回答のあった568大学のデータをもとにランキングを作成した。
実就職率(%)は、就職者数÷〔卒業生(修了者)数−大学院進学者数〕×100で算出。
同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
エリア別の実就職率ランキングは、卒業生数300人未満の大学を除いた。

卒業生数 500人以上1000人未満

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卒業生数 1000人以上3000人未満

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卒業生数 3000人以上

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エリア別 北海道・東北

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エリア別 関東

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エリア別 東海・北陸・甲信越

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エリア別 近畿

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エリア別 中四国・九州・沖縄

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