有名企業に就職することは決して容易ではないが、半数以上の学生が就職する大学もある。
有名企業の就職に強い大学はどのような大学だろうか。
その傾向について検証していこう。
高水準の給与、充実した福利厚生、そして高い安定性といったメリットから、有名企業に入社を希望する大学生は多い。そのため、中小企業との間で人気格差が拡大している。「実就職率ランキング」でも述べた通り、2025年卒の大学生の就職状況は好調であり、学生優位の売り手市場は継続している。しかし、人気が高い有名企業はその限りではない。リクルートワークス研究所の調査によると、すべての企業を対象とした25年卒の求人倍率が1.75倍であったのに対し、従業員規模5000人以上の企業に限定した求人倍率は昨年を0.07ポイント下回る0.34倍となり、より狭き門となった。
求人倍率から見ても有名企業就職のハードルが決して低くないことは明らか。しかし、数多くの卒業生を有名企業へと送り出している大学があることも事実。「有名企業400社実就職率ランキング」に注目すると難関大として知られる総合大学や、高度な専門分野の研究など独自の強みを持っている工科系大学などが目立つ。それぞれの大学について見ていこう。
有名企業の実就職率が目立つ難関国立・私立大
1位は3年連続トップの豊田工業大。国公立大並みの安い学費と高い就職力などを背景として人気が高く、入試難易度は難関私立総合大学の理工系学部に匹敵する。就職者が多い企業は、トヨタ自動車12人、豊田自動織機8人、アイシン5人、デンソー、トヨタ車体が各4人など。トヨタ自動車設立の大学のためトヨタグループへの就職が上位となってはいるが、その他の製造業やIT企業に就職する学生も少なくない。
一橋大の実就職率は前年を5.2ポイント上回っており、3位から2位に順位を上げた。主な就職先は、三菱UFJ銀行21人、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、ベイカレント・コンサルティングが各20人、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行が各17人など。金融やコンサルティングファームなど、文系学部生の人気が高い職種が上位を占める。
例年、上位にランクインしている名古屋工業大は、前年を6.5ポイント上回る50%超えとなり3位にランクアップ。主な就職先はトヨタ自動車64人、デンソー55人、豊田自動織機28人、アイシン25人、中部電力パワーグリッド20人など。地元の主要産業である自動車産業への就職に強く、トヨタ自動車の就職者数は昨年から40人増だ。その他、製造業やインフラ系企業の就職者も多い。
東京科学大は旧東京工業大にあたる理工学系のみの集計。例年並みの高い実就職率であるが、一橋大と名古屋工業大の伸びに押され、2位から4位とやや順位を落とした。主な就職先は日立製作所、三菱重工業が各25人、野村総合研究所23人、富士通、日産自動車が各22人など。専門分野を活かし、高度な専門知識を持った人材を輩出している工科系大学は有名企業に強く、東京理科大(6位)、芝浦工業大(7位)、九州工業大(8位)がベスト10に入っている。専門性の高さと、それに裏打ちされた即戦力としての期待が、これらの工科系大学が有名企業から高い評価を受ける要因となっている。
5位の慶應義塾大は卒業生数7706人と大規模な大学ながら、多くの学生が有名企業へ就職していることから、46.7%と高い実就職率となっている。慶應義塾大を上回る卒業生数1万1602人の早稲田大は39.3%で9位。実就職率では慶應義塾大に及ばないが、有名企業の就職者総数は3771人で全国トップとなっている。
早慶の就職者が多い企業は似た傾向が見られる。早稲田大はベイカレント103人、三菱UFJ銀行、アクセンチュアが各88人、NTTデータ83人、NTTドコモ80人など。慶應義塾大はアクセンチュア101人、三菱UFJ銀行95人、ベイカレント80人、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー78人など。2校共に金融とコンサルティングファームの就職者数が多い。
近年、難関大の学生に人気の業種は大きく変わりつつある。かつてはメガバンクや総合商社など大量採用を行う企業が各大学の就職者数上位を占めていたが、現在ではコンサルティングファームやIT企業など、専門性の高さや成長が見込まれる業界の人気が高まっている。中でもコンサルティングファームは、高い給与水準と自身が成長できる環境などの様々な面から、難関大の学生から人気が高い。入社のハードルの高さから、優秀な学生が集う業界であるという印象を持つ人も多いのではないか。
採用活動の早期化によって有名企業実就職率を伸ばした大学
25年卒の就活市場は、一部大手企業で買い手市場化する動きが見られた。そうした中でも、ランキング中には実就職率が上がっている大学が多い。その要因として、採用活動の早期化が挙げられる。3省合意(※)の改正により、企業はインターンシップのデータを採用に活用し選考を早期化。これにより採用活動に余裕が生まれ、これまで選考から漏れていた層へも接触可能となったことがある。また、配属の希望を聞く企業が増加したことも影響している。さらに、各支社単位で地元の学生を採用し始めたことで、有名企業に就職する大学の裾野が拡大し、実就職率を上げる大学が増えたことも要因として挙げられる。
※文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」
こうした学生優位の環境下でも、大手企業の採用枠は依然として狭いままだ。有名企業対象の実就職率を大きく伸ばす大学がある一方、就職者が頭打ちとなる大学との二極化が見られた。その一因として考えられるのはキャリア支援。就職先を重視して大学を選ぶなら、キャリア支援の充実度は注目すべきポイントだ。
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有名企業400社 実就職ランキング
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<表の見方>
◆表は各大学発表による2025年の就職状況(10月24日現在)。
◆アンケートに回答のあった568大学のデータをもとにランキングを作成した。東京大は「東京大学新聞」、京都大は「京都大学新聞」より判明分を集計。東京科学大は理工学系のみ。大阪公立大は、統合前の大阪市立大と大阪府立大、大阪公立大の大学院修了者の合計を掲載した。
◆400社実就職率(%)は、400社就職者数÷〔卒業生(修了者)数−大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。卒業生数100人未満の大学はランキングから除いた。
◆設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
◆有名企業400社は、日経平均株価指数の採用銘柄に加え、会社規模や知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定した。






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