大学進学には多額の費用がかかるため、学費に不安を感じている受験生や保護者も多いだろう。それでも、返済義務のない給付型奨学金を活用すれば安心して進学できる。国が設ける制度から、大学が独自に行う制度まで、その種類はさまざま。将来の可能性を広げてくれる、給付型奨学金制度について見ていこう。
大学で学ぶには多額の学納金が必要になる。特に近年は、予期せぬ経済状況の変化もあり、家計への負担はますます大きくなっている。JASSO(日本学生支援機構)の22年の学生生活調査によると、奨学金を受給している学部生は55.0%に及ぶ。その多くは返済義務のある貸与型であり、大学卒業後に返済に苦労する人は多い。貸与型奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金が存在するが、利用者が多いのは後者だ。
返済不要「修学支援新制度」とは
こうした状況下で、将来の返済という重荷を負わない給付型奨学金が、学生の新たな選択肢として重要性を増している。そうした中、20年度から文部科学省による修学支援新制度がはじまった。これは単に奨学金による学費の補助だけでなく、授業料の減免もセットで行われる点が大きな特徴だ。
この制度には、世帯収入に応じて支援額が変わる「第Ⅰ区分」「第Ⅱ区分」「第Ⅲ区分」があり、住民税非課税世帯が対象の第Ⅰ区分の場合、給付額は最も手厚くなる。第Ⅱ区分、第Ⅲ区分と世帯年収の基準が緩和される分、給付額は減額していく。
24年度には中間所得層への支援拡大を目的に「第Ⅳ区分」が新設された。この区分は、扶養する子どもが3人以上の多子世帯、または私立の理工農系に進学する世帯が対象となる。特に、多子世帯については世帯年収の制限がないことがポイントだ。26年度入学者向けの予約採用はすでに締め切られているが、大学入学後に申し込む在学採用も可能だ。この制度を利用すれば、学生は経済的制約から解放され、学業や課外活動に集中できる環境を得られるだろう。
注目したい大学独自の給付型奨学金
公的な給付型奨学金の受給者は増えているが、まだ対象者は少ない。そこで視野に入れたいのが、各大学が独自に設けている給付型奨学金だ。大学独自の給付型奨学金は、大きく二つのタイプに分けられる。
一つは、入試成績による選抜型だ。これは、入試で一定以上の成績を収めることで特待生として採用される。入学前から給付が決まるため、進路選択の大きな判断材料となる。たとえば、神奈川大の給費生制度は、給費生試験の合格者に入学金と4年間の授業料の合計額を上回る奨学金が給付され、自宅外の学生には、生活援助金として年間最大で70万円が給付される。専修大はスカラシップ入試の合格者に対し、4年間の授業料と施設設備費を免除する。東京工科大は奨学生入試の合格者に130万円の奨学金を最長4年間給付。対象者は103人と多い。白鷗大は学業特待入試で、定員の3分の1程度を国公立並みの学費で学べる特待生として募集する。
もう一つの給付型奨学金としては、特別な試験または一般選抜において高得点で合格しなくても、一般選抜に合格すれば採用となる事前予約型の給付型奨学金制度がある。入試の成績に関係なく合格すれば奨学金がもらえることが確約されるため、経済的な不安を抱える受験生にとって心強い制度だ。特に、首都圏や近畿圏の大学で導入が進んでいる。これらの地域では、大学所在地から離れた地方の学生を積極的に呼び込みたいという狙いがあるからだ。首都圏では1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)、近畿圏では2府4県(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)以外の出身者を対象とするケースが多い。もし、対象地域に住んでいるなら、志望校のホームページで予約型奨学金がないか探してみる価値は十分にあるだろう。
早稲田大の「めざせ!都の西北奨学金」は、家計などの条件を満たせば、評定平均値は問わず、学部により45万円から70万円を給付。慶應義塾大の「学問のすゝめ奨学金」も評定平均値は問わず、学部により60万円から90万円が給付される。
MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は、全大学に事前予約型奨学金制度がある。1都3県以外の学校出身者を対象とする大学が大半の中、明治大は世帯所得額のハードルを引き上げた上で1都3県の学校出身者も対象とする。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)では、立命館大が2府4県以外の学校出身者を対象とし、関西大は明治大と同様に2府4県の世帯所得額のハードルを上げながら全国の学校を対象としている。関西学院大は一律の基準で全国の学校が対象。
給付型奨学金は、返済の心配なく学業に専念できる制度だが、全ての学生が受給できるわけではない。奨学金制度は自治体や企業も用意している。自分に合った奨学金を早めに探し、積極的に応募することが重要だ。経済的な不安を乗り越えて、大学に進学するために、まずは情報収集を始めてみてほしい。
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<表の見方>調査・大学通信
◆各大学へのアンケートをもとに、一般選抜と連動した、大学独自の給付・免除による返還不要の奨学金制度(留学関連のみを除く)と予約型奨学金制度の内容を掲載。学部名横の〈 〉内は学科名など。2部・夜間部は除く。表中の1都3県は東京、埼玉、千葉、神奈川(1都6県はさらに茨城、栃木、群馬)、東海4県は愛知、岐阜、三重、静岡、2府4県は京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山。
◆入試の成績だけでなく、高校在学時の成績や面接が必要な場合もある。受給に特定の資格取得や大会・競技成績が必要なもの、他機関への申請や卒業後の勤務指定があるものは除いた。地域要件は出身者・居住者など大学により異なり、家庭・収入要件のある場合もあるが、家計急変や被災、疾病を要件とするものは除いた。
◆支給額は原則として給付額で、減免・免除の場合はその旨を記載。金額は初年度の年額で、継続審査等により2年次以降も継続されるものもある。大学によっては参考として2025年度の内容を掲載。詳細は各大学の要項で確認を。
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